FILE:35『女神(サラ)』
ーーコツ・・コツ・・コツ・・・。
「今戻ったよ」
(彼)のいる白の世界にマントの男が入って来た。(彼)は相変わらずシュウの端末から現実世界の情報を得ている。
今一番のお気に入りはどうやら現実世界の事を知る事の様だ。
ーーおかえり。(道標)は捕まえた?
「・・いや、残念ながら逃げられた。また余計な邪魔が入ってね?しかし、それを補う収穫もあった。ケルビムが監視者の居所を発見したらしい」
白いマントの男が説明するが(彼)は喜びも振り返りもしない。男は違和感を感じながら尚も説明を続けた
「どうやらバルハラ・ルミナの様だ。女神サラが我々のターゲットだったのだよあの男の情報だけに眉唾だが、今から行ってすぐに確認を・・」
ーーもう良いよ。
と、突然(彼)の声と共に白の世界が歪んだ。
白一色だった世界が赤く染まり、灼熱の熱さに包まれる。
ここは(彼)が支配する世界。その意思によりどんな事でも可能だ。
男は体がバラバラになりそうな苦痛と熱さに耐えながら驚きの表情を浮かべた。
「どうしたんだ?私が何か気に障る事をしてしまったか?」
ーーボクが何も知らないと思っているの?岩窟王がやられたんでしょ?僕はまた大事なペットを失ってしまった!
またもや世界が大きく歪む今度は赤では無く青だ。
それは(彼)の感情が怒りから悲しみに変わった事を意味する。男は灼熱の熱さから全身が凍てつく寒さに変わるのを感じた。
「・・すまなかった。君のペットを無断で借りてしまって。だが次こそは必ず君の邪魔をする者を始末して・・」
ーーもう良いよ!!
弁解する男の言葉を遮り、(彼)がもう一度叫ぶ。その衝撃で男は白の世界の入口まで吹っ飛ばされてしまった。
ーー次の監視者は君じゃなくクロウにやらせる。・・・それで良いね?
男が倒れ込むと(彼)は決して振り返らずにそう告げる。
すると青一色だった世界が白へと戻って行き、凍てつきそうな寒さがやがて消えて行く。
口調は厳しいがどうやら機嫌を直してくれた様だ。
「・・ああ。私は君の道具だ。君のやりたい様にやれば良い」
フラフラになりながらも男が立ち上がり、忠誠の証として跪く。
それを見て(彼)がほんの少し笑った様な気がしたーー。
ーー適応Lv38 封印されし聖地ーー
「わぁ・・・!」
(トロイ)にあるゲートを潜り、目的地に着いたハジメは思わず歓声を上げた。降り立った場所が険しい岩山であり、辺り一面同じ様な山が聳え立っていたからである。
山の中央には金色に輝く大聖堂がある。
あれこそが少年達の目的地、バルハラ・ルミナだ。
「す、凄い所にあるんですね?」
「普通はユーザーが決戦前に来る所だからな。そう簡単に来れる場所じゃないのさ」
言いながら焔が翼を出し少年を抱えて山を下り始めるアカネは持っていたロッドを空中に浮かせまるでスノーボードの様に乗り、ヴァーカードはそのまま飛んで行く。
それぞれが別の方法で地上に降り立ち、大聖堂の前に立つとその豪華絢爛さが改めて分かった。
「はぁ〜〜!」
黄金の神殿を目の当たりにして少年はため息をついた
細かいグラフィックで作られた外見はまるで中世の城の様だ。
クロスピアにあるマルコロ大聖堂も綺麗だったが、さすが女神様が住む神殿である。
(ようこそいらっしゃいました。勇者達)
「えっ!?」
と、ハジメが神殿の扉に手を掛けようとした時、何処からともなく女性の声が聞こえて来た。
しかし辺りにその姿は無く、少年は一人うろたえてまう。
「落ち着け!始めて来る奴のためにイベントが発生してるだけだ」
慌てるハジメを見て焔が冷静に説明する。
良く聞くと確かに女性の声は事務的で、ハジメ達に話しかけている訳では無い様だ。
(貴方達が来るのをずっと待っていました。
貴方達に魔神カースと戦う力を与えましょう。さぁ、その扉を開け、私の前に姿を見せなさい)
ゴゴゴゴ・・・!
女神の言葉が終わると、神殿の扉が勝手に開いて行く
扉の奥は目眩いばかりの光で何も見えない。
思わず唾を飲み込み、ハジメが一歩踏み出すと、そこには壮大な光景が広がっていた。
「うわぁ・・!」
神殿に入った途端、ハジメがまたしても驚きの声を上げた。
それもその筈、そこには黄金の世界が待っていたからである。
広い神殿の中央にはそこだけ赤いカーペットが引かれ、入口から王座まで続いていた。
天井まで続きそうな長い背もたれの王座の傍らには、金の兜を被り三つ又の槍を持った天使達が立っている
そして巨大な王座には美しい女性が一人、座っていた
「ようこそいらっしゃいました。魔神を倒す者よ」
王座から立ち上がり、その女性ーー女神サラがハジメ達を歓迎して来た。始めて見る女神様は正に絶世の美女である。
綺麗に揃えた短めの茶髪に民族衣装の様な青いロングスカート。
白の巫女装束に頭に太陽を摸した金色の杖。そして少しあどけなさを感じる優しい笑顔。
全てマルコロ大聖堂にあった石像とうり二つだ。
『エデン』を管理する監視者とは分かっていても伝説の女神との対面にハジメは興奮してしまった。
「我が名はサラ。千年前、魔神カースを地底に封印した者・・・。さぁ、貴方達に伝説の武器を残しておきました。
これを使い、世界に再び光を与えて下さい」
そう言うとサラは持っていた杖で地面を叩く。するとカーペットから光が溢れ、地面から二つの武器が出て来た。
「あ、あれ?」
幻想的な光景に思わず感動するハジメだったが、神からの贈り物に我が眼を疑った。
何故なら武器は二つだけで自分の武器が無かったからである。
しかもその二つの武器も、見た事のある赤い杖と斧の形を思わせるギター・・・つまりアカネのロッドと焔のアックスギターだったのだ。
「悪いな、女神様。俺達はもうあんたからその武器を貰ってんだ」
言いながら焔がアックスギターを取り出して女神に見せる。アカネもそれに習うが、しかし女神は大して驚いた素振りもせず笑みを浮かべていた。
「それでは何の御用でしょう?失礼ですがこちらの坊やはまだ魔神と戦えるとは思えませんが?」
『我々はゲームを攻略しに来たのでは無いのだよ。女神サラ』
と、それまで少年の肩に乗っていたヴァーカードが女神に話し掛ける。これにはさすがにサラも驚いた様でほんの少し表情が変わった。
『私達は貴女を保護しに来たのだ。女神では無く監視者としての貴女を』
(監視者)と言う言葉を聞き、天使達の表情が変わるどうやら彼らもWB社の人間らしい。
思わず詰め寄ろうとする天使達だったが、それを制し冷静に女神が応えた。
「そうですか。貴方達が・・・。
噂には聞いた事があります。あるパーティが有りもしない事件を人々に吹き込んでいると・・・。そのパーティは元ハッカーやアウトローばかりの野蛮な一団らしいですね」
「なっ!俺達が野蛮だと!!」
サラの言葉を聞き焔が思わず突っ掛かる。
だが女神の前に天使達が立ち塞がり、飛び掛かろうとする鬼人を抑えた。
「そうです、野蛮です。所詮アウトローやハッカーなど私達PCを使う者からすれば憎むべき存在。
そんな方達に保護される理由はありません」
ヴァーカードの方を見ながら女神が冷たく言い放つ。
天使達が守ってくれていると言う余裕か、それともこれが地なのかサラの口調は先程の穏やかな物から一変し、冷徹そのものだった。
ひょっとすると実際はキャラクターより年上なのかもしれない。
「お帰り下さい。用件がゲームを進める事で無いのなら貴方達に付き合っている暇はありません」
と、取り繕う暇も無くハジメ達を追い返そうする女神サラ。
だが彼女が監視者ならどうしても聞きたい事があった少年は慌てて口を開いた。
「ま、待って下さい!あなたは監視者なんですよね?それならシュウは・・・シュウ兄ちゃんはどうなったんですか!?」
シュウの名前が出た途端、一瞬天使達の動きが止まる
やはり彼の事を知っているのだ。女神サラも澄ましてはいるが、ハジメに向ける視線が厳しくなった気がした。
「シュウですって?どうしてただのユーザーである貴方がその名を知っているのです?」
女神が疑問を口にすると天使達が姿勢を正し、直立する。
どうやら少しはハジメ達に興味を持った様だ。
「ボクはシュウ兄ちゃん・・・監視者シュウの従兄弟です。このキャラも誕生日のプレゼントでもらいました」
ハジメの言葉を聞くと、サラは少年に向かって手を突き出し、静かに眼を閉じる
暫くその体制をとっていた女神だったがやがて手を下げると、やれやれと大きくため息をついた。
「なるほど。見た事の無いデザインだとは思っていましたがそれで納得が行きました。
で、その彼がどうしたのです?確か病で欠勤していると聞いていますが?」
『彼は病に臥しているのでは無い。『エデン』をプレイしている最中失踪したのだ』
少年の代わりにヴァーカードが応えるとサラは始めて怪訝な表情を浮かべる。
それは何かを隠している訳では無く本当に驚いている様だった。
「どう言う意味です?」
『《悠久の監視者》は私達の目の前で消えたのだ。正体不明のモンスターに襲われてな。
彼だけではない。もう何人ものユーザーが謎のウィルス・ノイズによって失踪している』
今まで自らが手に入れた情報を真剣にヴァーカードが話すと、何故か周りにいた天使達が笑い出した。
見るとそれを制する女神サラも肩をすくめ、クスクスと笑っている。
そのいかにも人を馬鹿にした笑い方に思わずハジメも腹が立った。
「な、何がおかしいんです!?ヴァーカードさんが言っている事は本当なんですよ!!」
「これは失礼・・・。では貴方達はコンピュータウィルスがゲームをプレイしているユーザー達を消していると?そんな証拠が一体何処にあると言うのです?」
笑いながら問い返して来るサラにハジメは思わず言葉を詰まらせた。
証拠を見せろと言われるとそんな物ある訳が無い。
自分の左手を見て、この分からず屋の監視者が信じてくれるかどうか分からなかった。
『証拠ならある。そのモンスターに襲われた際に記録した映像のデータがな。それに今こうして私が貴女と話している事自体が既に異常な事ではないかね?』
だがそこはヴァーカード。監視者がして来る質問など既には想定済みである。
まさか本当に証拠があるとは思っていなかったのか、今度は監視者側が全員黙ってしまう。
暫く憮然とした表情でヴァーカードを睨んでいたサラだったが、やがてまた大きくため息をついた。
「分かりました・・・。扉を開きます。私について来て下さい」
それだけ言うと何を思ったか女神は少年達に背中を向け、王座の方へ歩き出した
そして持っていた杖の先を向けると、何と王座が光り出し光の扉に変わったのである。
一般ユーザーには知られない様カムフラージュされていたらしい。
「サラ様!ま、まさか彼らをホームへ?それは規定違反です!!」
「構いません。会社への口実など後でいくらでも作れます。
それにどうやら彼らには言葉より事実をハッキリ見せた方が良さそうです」
慌てて止める天使を無視し女神は光の扉に入っていくそれに続いてハジメ達も扉の中に入って行った。
ーーパアアァ・・・。
光の扉を潜るとそこは何も無い小さな部屋だった。ただ青一色の壁と床に黄金のリングに絡み付いた双頭の蛇が描かれている。
ハジメ達が部屋に入ると扉が閉まり、小さな部屋はほぼ一杯となってまった。
『運命の輪ウロボロスか・・・良い趣味をしているな』
「コードアクセス。ーー世界の全てが見える場所へ」
皮肉を込めたヴァーカードの言葉を聞き流し、サラが天井に向かって喋ると周りの壁が光り出す。
景色が変わったかと思うとそれまで青一色だった小さな部屋が神殿より開けた場所に一変したのだ。
「んだぁ!ここは?」
「ここは私達、監視者のホーム『世界の全てが見える場所』です」
周りを見回しながら焔が怒鳴ると、女神が歩きながら説明する。サラの前には巨大な黄金の輪が回転しながら宙に浮いていた。
床にあった紋章と同じ、運命の輪ウロボロスである。
神殿と違い、薄暗くただ広いだけの部屋ではその黄金の蛇が嫌でも目立ち、不気味さを醸し出している。
ウロボロスの前には小さな階段があり、その上に端末機らしい黄金の球体が浮いていた。
「と言ってもこの部屋にちゃんと来るのは私ぐらいなものですが」
『それはどう言う意味だ?』
女神の言葉に疑問を感じたヴァーカードが質問をすると、サラが端末に触れながら鼻で笑う。
さっきから気になっていたが、いちいち人を馬鹿にした態度を取る人だ。
「言葉の通りです。私は他の監視者がどんな姿をしているのか?どうやって『エデン』の監視を行っているのか?全く知らないし会った事もありません。
仕事中は互いに干渉しないのが私達のルールですから」
「何故・・・そんな事を?」
ここへ来てアカネが始めて口を開く。しかしそれは話を聞いている者からすれば当然の疑問だった。
「万が一の事を考えた安全策です。例え誰か一人がアウトローなどに捕まり、大切な情報を開くパスワードを奪われても、他の監視者の居所が分からなければパスワードは決して完成しませんから」
端末を操作しながら女神が自慢げに話す。確かにそれなら情報の漏洩を塞げるだろう。だがそれはハジメ達が守ろうとしていた他の監視者やシュウの情報がここには全く無いと言う事を意味していた。
「さてと・・・見て下さい」
落胆する少年の気持ちなど知らず、女神が端末機を操作するとウロボロスがいくつもの画面に切り替わり、外の様々な景色を映し出す。
規模は違うがハジメはそれに見覚えがあった。
以前、ウィングが見せてくれた『エデン』の風景だ。
『これは?』
「『エデン』の全てのステージです。ここが(世界の全てが見える場所)と言われる由縁です」
女神の言う通り切り替わった画面には、ウィングに見せてもらった時とは比べ物にならない程の数の風景が映し出されていた。
ある画面には街を歩くユーザー達が、ある画面には洞窟でモンスターと戦うパーティ達が映し出れている。
しかも画面一つ一つが引っ切りなしに切り替わり絶えず他の風景を映し出して行く。
こんな物にずっと監視されていたのかと思うと、ハジメは何だか悪寒を感じずにはいられなかった。
「ここでは『エデン』の60%を絶えず24時間監視しています。
残り40%はAIであるウィングが監視していますが、何かあれば直ぐに私達監視者に報告する様になっています」
言いながら女神サラが少年達の方を向く。その表情にはどうだと言わんばかりの自信が浮かび上がっていた
「これで分かりましたか?私達はつねに『エデン』を監視し、状況を把握しているのです。ですから、もしそんなバグやウィルスが存在するなら即刻発見し、対処している筈です」
『だが万が一と言う事は無いのか?ウィングが報告を怠る可能性は?』
自信満々の女神に間髪入れずヴァーカードが質問をする
彼女は有り得ないと言うがハジメ達は実際にノイズと戦って来たのだ。引き下がる訳にはいかない
「それは有り得ません。人工知能とは言えウィングは私達がプログラムした物です。
会社の命令を忠実に熟す様作られていますから監視者には逆らえないのです」
サラの言葉には有無を言わせない強さと冷たさがあった。
確かに、かつてハジメがウィングに相談した時彼は『エデン』やユーザーを守る事が最大の喜びだと言っていた。
あれに嘘があったとは到底思えない。だからこそハジメは勇気を貰ったのである
「・・どうやらようやく分かって頂けた様ですね?『エデン』は完璧なゲームです。貴方達の言う妙なバグなど存在しません」
少年達が皆黙ってしまい、勝ち誇った様に女神サラが微笑を浮かべる。
その笑顔に先程感じた慈愛は一片も残っていなかった
「ご理解頂いた所でお帰りを。それとこの場所や私の正体については他言無用でお願いします。
もっとも、言っても誰も信じないと思いますが・・・」
笑いながらサラがまた入口の方へと歩き出す。その背中はもはや話す事は無いと言わんばかりだ。
少年が慌てて肩に乗るヴァーカードを見ると、彼は瞳を閉じてジッと思案している
焔やアカネも歩き出し、仕方なくハジメも入口に向かって歩き始めた時だった。
ーードガン!!
「うわぁ!!」
突然『世界の全てが見える場所』が大きく揺れた。次の瞬間、部屋全体に警告音が鳴り始める。それまで薄暗いだけだった部屋も一転して警告ランプの赤色に包まれてしまった。
ビーーッ!!ビーーッ!!ビーーッ!!
『何事だ!』
「これは・・敵襲?」
一人ワタワタするハジメを横目にバーカード達は素早く身構える。
サラもすぐに端末機の方へ引き返し、操作するとたくさんあった画面が一つの大画面に切り替わり神殿にいた天使達を映し出した。
「何事ですか?」
「周りの山々から攻撃を受けています!数はおよそ50!!恐らくアウトローユーザーかと・・・ぐわぁ!!」
ーーズズーーン!!
天使が状況を報告していると爆音と共にまた部屋が大きく揺れた。それと同時に天使の姿も大画面から消える。
この揺れの正体が敵からの攻撃である事は間違いない様だ。
「くっ・・・しっかりしなさい!!アウトローチームの正体は!?」
「も、申し訳ありません!チームの名は《ドラゴンレイン》!!『エデン』最大のパーティを持つ連中です!!」
アウトローと聞いた瞬間、ハジメとアカネの頭にあの三人組の顔が浮かび上がる
そして焔も《ドラゴンレイン》と言う名前を聞き、表情が変わる。
アックスギターを持つ手が人知れず怒りに震えていたーー。
「撃て!撃てぇ!!もっと撃てぇーー!!」
ドンドンドン!!
蘭丸の号令と共に武器を持ったたくさんのユーザーが神殿目掛けて攻撃する。
それは銃弾だったり砲丸だったり、或いは魔法だったりするのだが、どれも攻撃をしているユーザー達は凶悪な目つきをしている。
彼らは皆、蘭丸が所属するチーム、《ドラゴンレイン》一番隊のメンバーだった
「よーし!!撃ち方止めぇ!!」
蘭丸がまた叫ぶと神殿への攻撃がピタッと止まった。しかしたった一人攻撃を止めるのが遅れたユーザーがいる。
蘭丸はそのユーザーを睨むと、持っていた大斧で容赦無く叩き伏せた。
「ぐぎゃあ!!」
「止めろっつただろーが!!・・まぁ、良い」
相手をぶっ飛ばしておいてから機嫌を直す仮面アウトロー。その姿に凶悪な面構えのアウトロー達もゴクリと唾を飲み込む。
一番隊の中では隊長である蘭丸に逆らった者は即ゲームオーバーにされてしまうのだ。
「良いか!!標的はクソ生意気なガキとルーキー、それにただのチンピラだ!
だが、あの神殿の中には俺達の宿敵であるチェイサー達がわんさかといる。
まともに戦おうなんて思うな?外から攻撃して出て来た所を一人ずつ潰すんだ!!」
(オォーーーーーーッ!!)
蘭丸の言葉と共にアウトロー達が各々の武器を振り上げ、雄叫びを上げる。
神殿を挟み、向かい側の山にも阿国と才蔵と共にたくさんのアウトローユーザー達がいるがあちらでも同様の雄叫びが起こっていた。
「へへへ・・・覚悟しやがれ。俺をナメた事を後悔させてやる!!」
利用されている事にも気づかず、己のプライドのためだけに暴走する蘭丸が邪悪な笑みを浮かべる。
仮面に隠された瞳には既に血に飢えた獣の様な光しか秘めていなかった。
もはや彼には復讐しか頭に無い。
「最高のハンターゲーム・・・チェイサー狩りの始まりだぁ!!」
開戦の合図を告げる様に蘭丸が狂気の叫び声を上げる
様々な思惑を孕み、聖地バルハラ・ルミナが今、戦場へと変わりつつあったーー
(続く)