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THE・ログインvo1  作者: 秋葉時雨
27/40

FILE:27『作戦(ミッション)』


遅れながらハジメも焔達と合流する。それをノイズ・フィールドの外から白いマントの男も見ていた。


「ようやく主役の登場か。これで余計な手間を掛けなくて済む」


口調は穏やかだが、男の言葉には明らかな敵意が含まれていた。

焔達がハジメをノイズの抵抗手段と考えて守ろうとしている様に、男もまた先のエンゴウ戦で少年を危険視しているのである。カウボーイハットに隠された男の眼が鋭く光った。


「今度こそ倒す。そのために岩窟王を召喚したのだ」


マントの男が勢い良く手を前に出すと、岩窟王の顔がまた淡い光に包まれる。

だが少年の方を向いている焔達はその変化に気がつかなかった。


「アカネ、大丈夫?」


ハジメが声を掛けると少女は頬を赤くしながらコクンと頷く。アカネにとってハジメの気遣い程元気になる回復呪文は無いだろう。


「このバカ野郎!俺が何のために・・!

あ〜もう良い!出て来ちまったもんはしょうがねぇ!三人であの岩野郎をぶっ飛ばすぞ!!」


勝手な行動をした少年を怒鳴りつけようした焔だったが、前を見て構え直す。

それもその筈、再生した岩窟王は土の腕をさらに二本増やし、迎撃体制を取っていたのだ。

言いたい事は山程あるが今はハジメがいる事で出来た勝機を掴むしかない

昔から考えるより先に行動が出るタイプだった鬼人は、そう結論付けて自分を納得させた。


「相手も待つ気はねーみてぇだから手短に言う。いいか?俺が邪魔な岩野郎の腕や顔をぶっ壊したらガキ、お前は本体にありったけの銃弾ぶつけて奴のバリアーを壊せ!

「は、はい!!」


少年の方を見ず、焔が一度捨てた作戦を告げる。自分が作戦に折り込まれている事を知って、ハジメも表情を引き締めた。


「バリアーさえ壊しちまえばあんなもん、ただの石コロだからな。

アカネはガキの護衛だ。そいつがやられちまったら俺達に勝ち目は無い」

「・・・了解」


いきなりの呼び捨てを気にする様子も無くアカネが無表情で頷く。相変わらず、少女の判断の早さに焔もニヤリと笑った。


《オ・・オオ・・オ》

「よし。ーー行くぞ!!」


号砲一発、焔の掛け声と共に三人は弾かれた様に駆け出した。先頭を焔、ハジメと続いて最後にアカネのフォーメーションである。

突っ込んで来る三人を邪魔するかの様に空中から岩の破片が降り注いで来た。

岩窟王の顔の破片だ。

だが、焔がアックスギターを左右に降り、後ろに続く二人の道を作りながら、止まる事無く破片群を撃破して行く。


「オラオラァ!邪魔すんじゃねぇ!!」


難無く破片群を突破すると、眼の前に土の腕が迫って来たが、これもまた思いっきりジャンプして空中に留まると、焔炎弾で一気に4本とも撃破する

「オラァ!!」

ーードカン!ドカン!ドカ!ドガァァァーーン!!

「凄い!凄いです!!焔さん」


派手な焔の戦いっぷりに興奮した面持ちのハジメだったが、視線を前に戻すと自分の頭よりずっと大きな岩窟王の腕の破片が転がって来る。

少年が驚いて叫ぼうとした途端、アカネが割り込んで来てロッドで破片を真っ二つにしてしまった


ーーズバッ!!

「大丈夫?・・よそ見してちゃダメ」

「ゴ、ゴメン」


アカネに注意されハジメが謝ると、その背後で着地した焔がまた先頭に飛び出して来る。

残るは岩窟王本体だけだが、静かなる岩石モンスターは砕けた土の腕をすぐに再生させ、二つの手とし向かって来る三人に襲い掛かって来た。


「この・・うぜぇーーんだよおぉ!!」


巨大な拳を作って向かって来る二つの手を見て突然焔は深呼吸をした。すると胸が真っ赤になる程熱く輝き始める。

極限までエネルギーを溜めているのだ。

胸に留まり切れなくなったエネルギーは口へと溢れ出し、焔はそれを岩窟王目掛けて一気に吐き出した。


「はあああっ!!焔炎熱波ぁ!!(ぐえんねっぱ)」

チュドーーーン!・・ドガガガガァーーン!!


吐き出された炎は熱線へと姿を変え、二つの手を一瞬で破壊する。貫通した焔炎熱波はそれだけでは留まらず、何とそのまま岩窟王の顔を砕いてしまった。


「俺が使えるのは炎だけじゃねーんだよ!

今だ!クソガキ!!やっちまえーーー!!」

「はいっ!!」


岩の顔を破壊され、剥き出しになった《コア》を確認して焔がGOサインを出す。あらゆる障害を廃除し、万全の状態へと持ち込んでもらった少年は高々とジャンプし銃口を岩の眼球へと向けた。


「くらえぇぇーー!!」

ーードキュン!ドキュン!ドキュン!!


《コア》の再生が始まる前にハジメが持っていた二丁拳銃からありったけの銃弾を発射する。

三人の想いを込め、結一ノイズを倒せる鉛の弾は一直線に《コア》へと飛んで行った。


ーーガキ!!ガキーーン!!

「なっ!!」

「・・え?」


しかし聞こえて来たのは無情なる金属音。

攻撃をしたハジメはもちろん、その場にいた焔やアカネも硬直する。

少年の攻撃は空しく《コア》を守る《見えない壁》に弾かれてしまったのだ。


「そんな・・・なんで?」

「ど、どう言う事だ!?ガキの攻撃も効かねぇじゃねーか!!」

折角のチャンスが無駄に終わった所か、あると信じていた勝機まで失いショックを受けるハジメ。だが敵は待ってくれなかった。

《コア》の腹にあった名前を記す文字が光ったかと思うと、突然少年の背後が巨大な影に覆われる

見ると、土では無く岩で出来た手がハジメを捕らえようと大きく掌を広げていたのだ。


「うわぁ!!ーーあ・・ぐぅ!」

「クソガキぃ!!うおっ!?」


空中にいるため逃げる間も無く、少年は捕らえられてしまった。

右手だけは何とか自由だが、肺から空気を絞り出されそうな力の強さに、ハジメの表情が苦悶に変わる。

すぐに救出に向かおうとする焔だったが突然の地響きにその足が止まる。何と、地面から二人を取り囲む様に岩の腕が4本生えて来たのだ。


「クソッ!邪魔する気か!!」

「ハジメ・・・守る」


苛立ちを見せる焔の背後でアカネが走り出したかと思うと、彼の肩を踏み台にして軽々とジャンプした。

無表情ながらハジメを捕縛した岩の手に怒りの篭った視線を向け、ロッドを握る手にも力を込める

だが、そんな彼女の前を無数の影が立ち塞がった岩窟王の顔の破片である

少女とハジメの間をビッシリと埋めた破片群は、今までに無い数でアカネの方に飛んで来た。


「MUY・・・マジ、ウザい奴」


一瞬、眉間に皺を寄せたアカネだったが、持っていたロッドをフルスイングさせ破片群を一気に砕く。

だがそこから予想外な事が起こった

一度粉々になった破片が一点に集中し、岩の手になって再生したのである

これにはさすがのアカネも面食らい、強靭さを増した岩窟王の手に叩き落とされてしまった。


「ーーーくっ!!」

「アカネ!!」


強烈なカウンターパンチを辛うじてロッドで防御した魔法少女は、何とか体制を立て直し地面に着地する。

しかし、初めて見せるアカネの苦悶の表情が、岩窟王の手のパワーを物語っていた。


「おい、大丈夫か?」

「ーー土から岩になった事でパワー、硬度共に50%アップ・・・。一撃で破壊するのは困難な模様」


返事の変わりに敵の情報を報告されて安堵する焔だったが、その間も状況は悪化して行った。

ハジメの攻撃を防いだ《コア》は再度再生を果たし、空中に散らばっていた破片群も次々と岩の手に変化して行く。

何が何でもハジメの救出をさせないつもりなのだ


「ちっ!面倒くせー展開になってきやがったぜ!!」


悪態を突き、構えたままどうするか智恵を絞っていた焔だったが、そこでふと疑問が浮かぶ。

それは、何故岩窟王は今まで岩の手や腕を使わなかったのだろうと言う事だ。

ここまで強靭な守りの力があるなら、さっきの作戦は失敗に終わっていた筈である。

まるでワザと自分の懐に飛び込ませた様な・・・

と、そこまで考えた時彼の脳裏に嫌な考えが浮かんだ。


「まさか、コイツ!!」

「最初からハジメが狙いだった・・・」


同じ考えに到達したのか背中合わせになったアカネも口を開く。

そう、全てはハジメをおびき寄せための罠。

岩窟王は最初から全力など出して無かったのである。

アカネとの戦いで適度に付け入る隙がある様に見せれば、ノイズの脅威を知る焔は必ずハジメの力を当てにした作戦を展開する。

相手はそこまで考えて最初から戦っていたのだ。文字通り、掌で躍らされていた事に気がついた焔は自身のあまりの不甲斐無さに、ブルブルと体を震わせた。


「くっ・・!このっ!!このっ!!」


一方、捕らえられたハジメもただ無抵抗と言う訳では無かった。

自由な右手でダガーを振り下ろし、何とかこの状況を打開しようとする。

だが頑強たる岩の手は少年の攻撃などではビクともしない。

ならばと必死にもがいて拘束から脱しようとするのだが、岩窟王の力は強力で全く動けそうに無かった。


《オオ・・・オオオ》


と、その時うるさい少年を黙らせる様に岩窟王が小さく呻くとハジメを握っていた手に変化が起こった。

形を変え始めたのであるぐにゃぐにゃとスライムの様に軟体化したかと思うと自由だったハジメの右手まで拘束してしまう岩窟王の手。

柔らかくなっても変わらない力の強さにハジメは苦しげに呻く事しか出来なかった。


「う・・・こ、これは!?」


一瞬で終わった苦痛の後少年は驚きの声を上げていた。

自身を拘束する物、それが手から十字架に変わっていたからである。

ご大層に手足を岩で出来た枷で捕まえてある。

空中で張り付けにされたハジメは、正にゴルゴタの丘で処刑されたキリストと一緒だった。


「かつて、キリストは反逆の徒としてローマ帝国に処刑された。それは当時の神を否定したからだと言う」


張り付けになったハジメを見て白いマントの男が口元を歪めた。それはまんまと罠に嵌まった少年達を嘲笑っている様である。

だがすぐに笑みを消すとまた手を前に差し出す。そしてハジメに向かって冷たく言い放った。


「この世界の神に仇成す反逆者よ。その罪、命で償うが良い」

《オオ・・オ・・》


男が指をパチンと鳴らすと岩窟王の周りにあった破片がまた集まり、いくつもの岩の杭に姿を変えた。

それを見てさすがのハジメも何をする気か察する

無駄な抵抗だと分かっていて体を動かしてみるが両手、両足を封じられてしまってはやはり逃げようが無い。

下にいた焔達も、岩窟王の腕の攻撃をかい潜りながら少年の危機に気がついた


「やべぇ・・クソガキぃ!!」


居ても立ってもいられずついに焔が翼を広げ、飛び立つがその前にいくつもの岩窟王の手が立ち塞がる。


「どけぇーーー!!」


焔炎弾を吐き出し、撃破しようとするが、爆煙が晴れると破壊されていた破片がすぐに再生して元に戻ってしまう。

そして逆に岩窟王の手が焔に覆い被さって来た。


「チク・・ショオーーーー!!」


アックスギターで攻撃を防ぐがパワーで圧倒されそのまま地面に叩き潰されてしまう。

焔の叫び声にハジメが下を向いた瞬間、岩の杭が少年に向かって発射された。


「うわぁ!!」

ーードクン!ドクン!


うるさい程大きい心臓の鼓動を聞きながら、ゆっくりと迫る岩の杭をハジメは見ていた。

何度同じ光景を見ただろう・・・

何度同じ目に遭っただろう・・・

そして何度後悔し、反省しただろう・・・?

また自分は皆の足を引っ張り、命の危機に晒されている。

そして次にどうなるか?ハジメには予想出来た。何故なら自分はノイズと戦える結一の手段だったから・・・。

だから少年はそうはさせたくなくって、腹の底から思いっきり叫んでいた


「来ないで焔さぁーーーーん!!」

「うおおおおーーーーっ!!」

ドカアァァァン!!


地面に押し付けていた岩の手が粉々に砕け、中から黒い翼が飛び出した。それは真っ赤な炎を全身に纏った鬼ーー。

鬼は空中に群がる岩窟王の手を次々と破壊すると少年と杭の間に立ち塞がる。

そして体を反転させ杭に向かって背中を向けると少年を見てニヤリと笑った。


「ーーな?だから出て来んなって言ったろ?」

ーードカドカッ!!


嫌な音の共に焔の表情が苦痛に歪んだ。それと同時に彼の体がぐらつく。

焔の背中や翼には岩の杭がいくつも刺さっていた

自分の身を亭してハジメを守ったのである。

見たく無かった最悪の光景に少年の表情は凍り付いた。


「焔さん!!」

「ぐ・・おぉおおおーーーーっ!!」


一瞬、地面に墜落するかと思われた焔だったが気合いで何とか持ち直し、アックスギターでハジメの手枷、足枷を破壊する

そして少年を抱き留めたかと思うと、何と体当たりで岩の十字架を破壊してしまった。


「アカネぇ!!今だぁ!!」

「・・・了解」


焔の掛け声と共に、下にいた少女はロッドの先端を天空へと掲げた。

ハート型の先端にあるのは放電した雷。

それが一直線に空に放たれると、綺麗だった月夜はまた真っ黒な曇天に包まれる。


「ーーライトニングレイン」

ピシャーーン!ゴロゴロゴロゴロ〜〜〜!!


アカネが魔法の名を口にした途端、空から無数の雷が降り注ぎ、岩窟王の顔や腕に直撃した。

雷に当たった物は全て破壊され、一時期アカネの周りは爆煙に包まれてしまう。

そんな中、背中に怪我を負い、フラフラになりながらも焔が、そして後を追う様にアカネが煙の中から猛スピードで飛び出して来た。


ーーズササササ〜〜!!

「ぐっ!痛ってぇ!!」


力尽き、顔や体を激しく擦りむきながら墜落する焔。

それでもハジメを無傷で守った所はさすがである


「焔さん、大丈夫ですか!?アカネすぐに回復魔法を・・・」

「バカ、俺の事はどうだって良い!それより早く今の内に《噂屋》に逃げろ!!」


自分の羽や背中に刺さった岩の破片を抜きながら焔が言う。

さっきの攻撃で岩窟王が倒れたとは思えない。確かに逃げるなら今しかチャンスは無さそうに見えた。

だが、その言葉を聞いてハジメの顔が暗くなる。


「それが・・駄目なんです!ボクが外へ出た時、回線が切断されるからもうドアは開かないって噂屋のお婆さんが!」

「んだと!?・・やれやれ、まいったぜ」


勝算も無く逃げる事も出来ず、正に八方塞がりの状態に追い込まれしまったハジメ達をさらに追い詰める様に、突然爆煙が晴れた。

見ると、既に再生を終えた岩窟王が岩の手や腕を無数に従え、佇んでいるのである。

空中に浮く破片群も、先程破壊された物を取り込んで倍以上に増えていた


《オオオォ・・・!》

「ああ・・そ、そんなぁ」

「ちっ、しょうがねーな」


絶体絶命な状況に顔を青くするハジメだったが、その横でスクッと焔が立ち上がったのを見て思わず驚いた。

笑っているのである。

絶望した時の、力の無い諦めの笑みでは無い。

彼がよく見せる自信満々の笑みである。

それは言うならば強者と戦える事を喜んでいる者の笑いだろうか?

こんな絶望的な状況で何故彼がそんな笑みを浮かべられるのか?

ハジメには理解出来なかった。


「アカネ、防御魔法だ。死んでもガキを守れ」

「・・了解」


焔の笑みを見て何かを感じ取ったのかアカネはただ頷くと、地面にロッドを刺し、ドーム型のバリアを作り上げる。

無表情を装ってはいるが魔法の多用のせいか軽く呼吸が乱れていて、少女が疲労しているのがハジメにも分かった。


「よし、後は俺が奴の注意を引き付けて時間を稼ぐ。ババァもこの状況を見て何か対策を練っている筈だ。

《噂屋》の入口が開いたらお前ら二人は直ぐに逃げろ!」

「そんなぁ!?焔さんを置いて逃げるなんて出来ませんよ!」

「るせぇ!!最後の最後ぐらい人の言う事聞きやがれ!」


焔の口から出た

「最後」と言う言葉にハジメはショックを受けた。

やはり彼は自分を犠牲にする気なのである。

少年の表情を見て、気まずそうに頭を掻いた焔はゆっくりと前に歩き出す

背中に残された岩窟王の攻撃の痕が、何とも痛々しかった。


「怪我してようが足折れてようがそんなもん関係ねぇんだよ。

俺はただ目の前の敵ぶっ飛ばすだけだ。その楽しみを取るんじゃねぇ!」


言いながらアックスギターを空中の光から取り出し、焔が肩に乗せる。

こうしてる間も岩窟王はどんどんパワーアップしていた。破片群を次々と岩の手に変化させ守りを強化させているのである誰かが立ち向かわなければ、パーティは全滅だろう。

だが、だからこそハジメは納得いかなかった。

焔は分かっていない!彼の言い分は犠牲になる者の意見だ。

残された者がどんな気持ちか・・・目の前で大切な人が消えていく悲しみや無力感を彼は知らないのである。

遠ざかる焔の背中を見てハジメは消えて行ったシュウや自分の体を失ったヴァーカードと重なった。

だからこそ彼を止めるために叫ぶ。


「どうして!!どうして嫌われ者のフリしてまで守ろうとするんですか!?

ボクは足手まといなんでしょ!?なのになんで!!」


少年の悲痛な叫びに焔が足を止める。

眼が熱くてしょうがなかった。恐らくリアルではまた自分は泣いているに違いない。

『エデン』では出ていない涙や鼻を手で拭い、ハジメがしゃくり上げると振り返らず焔がぽつりとつぶやいた。


「・・ヴァーカードさんがお前らを連れて帰れと言ったからだ」

「命令?任務のためなら命を捨てても良いって言うんですか!?

ゲームオーバーになったら消えちゃうんですよ!!そんなに任務が大事なんですか!?」

「うるせぇな。お前に何が分かる?あの人は・・バーカードさんはな・・」


不思議な光景だった。気の弱いハジメが大声を出し、いつもは怒鳴り散らしている焔が静かな口調で話しているのである。だが、だからこそ彼が本心で話しているのが伝わって来る。

そしてーー。


「ヴァーカードさんはな?俺を救ってくれた人なんだよ」

「・・・えっ?」


焔の言葉を聞いてハジメの勢いが止める。だがそれと同時に焔が片膝をついてしまった。

見ると彼の背中にある傷痕が黒く変色し、蠢いている。

HPが0に近づいたためウィルスの侵食が始まりつつあるのだ。

このまま攻撃を受け続けゲームオーバーになれば・・・待っているのはシュウと同じ消滅である。


「くっ、どうやら俺もここまでの様だな。ちょうど良いから話してやる。俺が《ゴーストハッカーズ》に入るきっかけになった話を・・」


それでも笑みを浮かべながら焔が静かに語り始める。

今まで決して過去を語る事の無かった焔が話すバーカードとの出会いの話だった。


(続く)

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