FILE:14『復讐(リベンジ)』
大分更新してませんでしたがこれからも細々と続けていきますのでよろしくお願いしますm(__)m
「おあぁああーーーーーっ!!」
発動する黒いオーラを両手で振り払い、ハジメが腰にぶら下げていた二丁拳銃の標準をクロウに合わせる。
憎悪に満ちたその鋭い視線に先程の弱々しい少年の姿は無い。
眼は血でも流したかの様に真っ赤に染まり、気迫はまるで歴戦の戦士の様に力強い。
そして注目すべきは少年の両手。その部分だけがさっき放たれた黒いオーラの残り火の様に黒く発光する光に包まれていた
「お前えぇーーーーーーーっ!!」
『少年!待て!!』
ーーズキュン!ズキュン!ズキュン!!
あまりにも変わってしまったハジメの気迫に気圧されながらもヴァーカードが慌てて止める。
だが、ハジメの放った銃弾は止まらず一直線にクロウに向かうとその前に黒く大きな陰が立ち塞がった。
エンゴウだ。
今まで相手をしていた焔を叩きのめし、主人を狙うハジメに襲い掛かって来たのである。
ーーガキュン!ガキュン!
《ラハァアアーーーーッ!!》
クロウの前にエンゴウが立ちはだかった事に因りハジメの放った弾丸はエンゴウの(見えない壁)に弾かれてしまう。
エンゴウもそれを予想していたのか巨大な口の中にある眼球がまたニタリと笑う。そして飛び掛かったクロウの前で着地した狂犬がそのままハジメを踏み潰そうと飛び掛かった時だったーーー。
・・ピシッ。・・・ピシピシピシ!!
《ラァッ??》
突然の出来事にエンゴウが素っ頓狂な声を出す。否、エンゴウだけで無くその場にいたヴァーカードや焔も驚きで眼を見開いている。
なんと今までどんな攻撃をも通用しなかったエンゴウの《見えない壁》がハジメの弾丸の当たった部分からヒビが入り、それが瞬く間に全体へと広がって行ったのだ!
それまで何も無かった筈のエンゴウの周りに、亀裂で巨大な円が現れる。恐らくそれがバーカード達を散々苦しめた《見えない壁》の形なのだろう
姿を現した《見えない壁》にたった一人まったく動じないハジメがゆっくりと拳銃を構える。そしてなんの感情も無く引き金を引いた。
「ーーお前。兄ちゃん虐めてたよな?」
ドン!・・・ドンドンドンドンドン!!
《ゴラアァァァーーーッ!!》
一発の銃声の後、まるでガラスの様に《見えない壁》が砕け散る。そしてその先に待っていたのは銃弾の嵐だった。
まったく表情を変えず、ハジメが相棒の二丁拳銃でエンゴウに容赦の無い連撃を加えたのである。
エンゴウの口から吐き出されるのは雄叫びでは無く初めての苦痛に寄る叫び。襲い掛かろうとした狂犬の巨体をハジメの猛攻が持ち上げ、逆に弾き飛ばす。
それは誰もが初めて見る光景。そして有り得ない光景だった。
地面に叩き付けられ、ゴロゴロと転がるエンゴウを見て焔もヴァーカードも全く言葉が出ない。
だが、エンゴウが倒されるのは当然だと言わんばかりに、悠然とハジメが銃口を向けたまま口を開いた。
「許さないよ。・・お前」
《グルァアアアーーーーーーーッ!!》
それはこっちのセリフだと言っている様にエンゴウが直ぐさま立ち上がり、空気が震えそうな雄叫びを上げる。
自分の体に初めて傷を付けられた狂犬は真っ赤な全身の体毛が燃え上がらんばかりの怒りに駆られていた。
だが、ハジメはまったく気圧される事も無く、持っていた二丁拳銃をダガーへと変形させるとゆっくりと構えを変える。
そして体勢を低くすると力強い一歩を踏み出し、弾丸の様に飛び出した。
《ラアァアーーーーーッ!!》
ーードカン!ドカン!ドカン!!
少年が飛び出したと同時に今までハジメがいた場所が炎に包まれる。
エンゴウの火炎弾が直撃したのだ。
その後も間髪入れずエンゴウの口から巨大な火炎弾が吐き出される。
だが当たらない。
ハジメは(ガン・ダガー)特有の素早い動作でジグザグに動き、瞬時に火炎弾をかわして行く。
それは先程まで怯えていた少年の動きでは無い。
一瞬の判断でエンゴウの攻撃を全て回避し、ついにはエンゴウの足元へと滑り込んだ。
体格や攻撃力ならハジメを遥かに勝るエンゴウだったがこうして足元へ潜り込まれると、その大きさ故にハジメが何処にいるか分からない。
ハジメは踏み潰されない様に周囲を注意しつつ、目の前の巨大な左足を持っていたダガーの双刃で切り裂いた。
「そらぁ!!」
ーーザシュッ!!
左足を切り裂いた途端、
真上でエンゴウが悲鳴を上げた。だがハジメはそこで休まず、(ガン&ダガー)の弱点である攻撃力の弱さを連撃と言う手段でカバーする。
エンゴウの左足を切り落とさんばかりの勢いで何度も同じ箇所を攻撃していくと痛みと怒りに我を忘れたエンゴウがハジメを踏み潰そうと両前足を高々と上げた。
だが、両足が地面を踏み締める直前タイミングを合わせてハジメもジャンプする。
一瞬の間に少年はエンゴウの顔前まで到達し、持っていたダブルダガーを十文字に振り落とす。
エンゴウの巨大な顔が切り裂かれるかと思った時突然、口を開いた。
その瞬間、少年の表情が変わる。
なんと口の中にあったのはあの気色悪い一つ眼では無く口いっぱいに燃え盛る炎だった。
『いかん!!』
《ラァアアーーーー!!》
危険を察知したヴァーカードが叫ぶ前にエンゴウの口から焔炎の火炎弾が吐き出される。
エンゴウは、ハジメが足元に転がり込んでからずっとこれを狙っていたのだ。
いくら俊敏な(ガン・ダガー)でも身動きの取れない空中では避けようが無い。
ハジメの体の倍は有りそうな火炎弾が眼の前に迫る。
すると少年は持っていたダブルダガーをまた十字に構え、不機嫌そうに言い放った。
「うっとおしい!!」
ーーザシュ!!ザシュッ!!
ハジメの言葉と共に空気を切り裂く様な鋭い音が響き渡る。すると迫っていた火炎弾が十字に切り割られ、方々の場所で爆発したのだ。
『なっ!?』
これにはさすがのヴァーカードも驚きの声を上げるだが、驚いたのはエンゴウの方だ。
まさかスピード重視の小拳銃士にそんなパワーがあるとは思わず口を開いたまま絶句する。 その一瞬の隙を突いてダガーをまた二丁拳銃に変えたハジメが銃口を大きく見開いているエンゴウの一つ眼に向ける。
それにエンゴウが気付いた時にはもう手遅れだった。
「何、眼突けてんだよ」
ーードゥンドゥンドゥンドゥンドゥン!!
待っていたのは銃弾の嵐。悲鳴を上げたエンゴウがまた転がりながら2・3メートル吹っ飛ばされた。
「おいおい、なんなんだよ?あのガキ!?」
後ろでハジメとエンゴウの戦いを見ていた焔は我が眼を疑った。
圧倒的。あまりにも圧倒的な展開にである。
自分達がどんな攻撃をしても全て跳ね返したあのエンゴウがLV.1のハジメに一方的やられているのだ。
彼で無くても信じられなくて当然だろう
『似ていると思わないか?焔』
「えっ?」
と、それまでハジメの闘いをただジッと見ていたヴァーカードがおもむろに口を開く。だから焔は最初、彼が何を言っているのか理解出来ず怪訝な顔で聞き返してしまった。
「似てるって何がです?」
『少年の戦闘スタイルだ。似ていないか?・・・黒の勇者だった頃の私に』
改めて言われて焔はハッとする。確かに(戦士)と(小剣銃士)では武器の違いや体格差などで闘い方が違うのだが、確かに似ているのだ。
相手を射抜きそうな鋭い眼光や無駄の無い完璧な動き、そして相手を徹底的に痛め付ける冷徹さがウィルスで体を失う前のヴァーカードにそっくりなのだ。
「た、確かに言われてみれば・・・!だけど、そりゃ一体どう言う事なんです?」
『今はなんとも言えんが一つだけ確かな事がある』
焔には眼を合わさずヴァーカードがつぶやく。その視線の先にはハジメの姿があった。
『やはり彼の存在は我々に残された最後の希望なのだ』
《ウルアァアーーーーーー!!》
全身を炎へと変えたエンゴウが体を駒の様に回転させハジメに突っ込んで来る。
先程シュウの魔法を破った技だ。
接近戦を得意とするエンゴウにとってこの技は最強の技に違いない。
「ちっ!」
舌打ちをしながらハジメが二丁拳銃を撃ち鳴らすが、強烈な回転と炎のせいで弾丸が弾かれてしまいエンゴウまで届かないその間にも迫り来るエンゴウに、ハジメはもう一度舌打ちしてその巨体を飛び越えた。
「ルララァーーー!!」
一度は回避されたエンゴウだが、またすぐにUターンしてハジメに襲い掛かる。何がなんでもまずハジメを始末するつもりらしい。
エンゴウがまたも接近する中、攻撃を回避してから何やら思案していたハジメがもう一度二つの拳銃を連射する。
だが、弾丸はやはり届かない。巻き上がる炎に全て弾かれてしまうのだ。
「危ねぇ!早く逃げろ!!」
エンゴウが少年の間近まで接近して来たのを見て焔が叫ぶ。それとほぼ同時にハジメもまたジャンプする。すると少年は何を思ったか炎の渦を飛び越えながら二つの銃口の標準を真下にいるエンゴウに向けた。
ーードゥン!ドゥン!ドゥン!!
《グラァアアーーーーー!!》
空中でゆっくりと円を描きながらハジメが引き金を引く。すると何故かエンゴウは今日何度目かの悲鳴を上げ、回転を止めてしまった。
一瞬、何が起きたか理解出来なかった焔だったがその時になって初めて気がついた。
少年はただ闇雲に攻撃していた訳ではない。探していたのだ。炎の壁が薄い場所をーー。
回転で巻き起こした炎なら自分の周りに厚く作る事が出来るが、回転の中心であるエンゴウの真上には炎を作る事が出来ない。ハジメは先の二回の攻撃でそれに気がついたのだ。
《ル、ルロロロロ〜〜〜・・・》
回転を止めたエンゴウが苦痛にのたうち廻っていると着地したハジメが振り返り、さらに2撃・3撃と追撃を加える。哀れエンゴウはまた悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。
だが、すぐにハジメを襲おうと立ち上がったのだがまた力無く倒れてしまう。ハジメの攻撃が着実にエンゴウを追い詰めている証拠だ。
少年はボロボロになった番犬を見て再度、二丁拳銃を構える。そして冷酷に言い放った。
「トドメ刺すよ・・・ごめんね」
キュイーーーン!キュイーーーン!!キュイーーーン!!
独特の音を発しながら二つの銃口にエネルギーが集中する。エネルギーは二つの塊となり起き上がれないエンゴウへと向けられる。そして今まさに拳銃の引き金に少年の指が掛かろうとした時だったーー。
《ルウゥラアァーーーー!!》
突然エンゴウが立ち上がり、今までで1番の雄叫びを上げる。すると三本あるエンゴウの尻尾が触手の様に伸び始め、ハジメに襲い掛かって来たのである。
「ちっ!」
これにはさすがにハジメも面食らったが、拳銃を構えたままジャンプして尻尾の攻撃をかわした。しかし止まらない。一本が避けられてもすぐに二本の尻尾が追撃し、残された一本もまた猛追する。尻尾のスピードは意外に早く攻撃のバリエーションも豊富で回避するのにも限界がある。
尻尾の追撃を回避する状況の中でこのままチャージを維持するかハジメは決断を迫られていた。
《ラアァーーーー!!》
ドスドスドスッーー!
そう考えている内にも尻尾の攻撃は続く。ハジメが気付き、ジャンプした途端に少年がいた場所に二本の尻尾の刃が突き刺さり、残った尻尾が追いかけて来た。
これ以上技を維持したまま逃げるにも、限界がある。このままではどっち道餌食になるだけだ。
飛び移った建物の天井から、目の前に迫り来る尻尾の攻撃をまたジャンプしてなんとかかわす。するとそこで先程の二本が自分の背後に周り込んでいた事に少年は初めて気が付いた。
(しまっ――!!)
慌てて身を捻り、なんとか二本の攻撃をかわす。だが目の前まで迫っていた残り一本の攻撃は回避出来ず、鞭の様にしなる尻尾にハジメは地面に吹き飛ばされた。
「ぐあっ!!」
石畳の地面にしたたか体を打ち付けながら、それでも上手く体を回転させ拳銃のチャージを維持しながら着地する。ハジメの視線の先にいるのは三本の尻尾を漂わせている地獄の番犬。ちょうど対峙する形だ。
キュイーーン・・キュイー・・ン!!
二丁拳銃を包む光弾と独特のチャージ音が徐々に小さくなる。チャージが維持出来なくなって来ているのだ。
(これ以上保つのは難しいか・・・なら仕方が無い!!)
危険な状況に変わりは無いのに極めて冷静な判断を考える頭に疑問も持たず、ハジメは拳銃を構える。
チャージ技で尻尾を出来る限り撃破し、残った尻尾の攻撃を回避してエンゴウを倒す。一か八かの手段だが、それが今出来る最善の方法だった。
《ラアァァーーーー!!》
先に動いたのはエンゴウだった。三本の尻尾が一斉にハジメに襲い掛かる。一瞬遅く反応し少年が左右の尻尾に狙いをつける。そして引き金に指をかけた途端ーーー。
「オラァ!!」
ゴォオオーーーーッ!!
少年の眼に二つの影が飛び込んで来た。一つは炎の様な真っ赤な髪をなびかせながら尻尾の2つを切り落とし、もう一つの影は白銀の羽を羽ばたかせながら小さな口から地獄の業火を吐き出し、残り一つの尻尾を焼き尽くす。
二つの影が少年の方を向く。焔とヴァーカードだった。
『少年、何をしている!』
「さっさと決めちまえ!!」
二人の言葉にハッとしたハジメが正面にいるエンゴウに二丁拳銃を構え直す。尻尾を失い悲鳴を上げているエンゴウの一つ眼がカッと見開かれる。
その瞬間、少年は引き金を引いた。
「ツインチャージ・ショットオォ―――ッ!!」
キューーン・・・ズギャン!!!
二つの拳銃から放たれたエネルギー弾は一つの巨大な球体へと合体し、一直線に飛んでいく。そしてエネルギー弾は標的であるエンゴウを包む込んだ。
《ラァ・・・ラァアアアア―――ッ!!!》
雄叫びも虚しく『ツインチャージ・ショット』を食らったエンゴウは2・3回転がると大爆発を起こし炎に包まれる。
爆発の炎が続く中、中から『※*』と言う赤い文字が現れそれが燃え尽きる様に消えた。
それがエンゴウの最後だったーー。
「いよっしゃ――!!やったぜ!!」
『はしゃぐな、焔!闘いはまだ終わっていない』
エンゴウを倒した事を知った焔が空中でガッツポーズをするが、ヴァーカードがそれを制する。
確かにエンゴウはいなくなったのにヴァーカード達を閉じ込めている赤いバリアーが消えていない。
そしてハジメもまた決して構えを崩さず、鋭い視線で一点を睨み付けていた。
――バサッ!バサッ!
その視線の先にいたのは漆黒の烏モンスター。
真っ黒な三つの窪みから淡い光を点しながら、こちらをジッと見つめている。
先程の闘いを見て一体、クロウは今何を考えているのか?それはハジメにも分からなかった。
『・・・・』
ピシピシピシ――ッ!
と、突然だった。ハジメ達を閉じ込めていた赤いバリアーが砕け始め、クロウもまた黒い球体へと姿を変える。逃げる気なのだ。
「待て!!」
――ドゥン、ドゥン!!
それを見たハジメは瞬時に拳銃の引き金を引くが一瞬遅くクロウは消えてしまう。
赤いバリアーも次々と壊れ、離散していく。そして完全に消滅すると残ったのはいつものクロスピアの風景だけだった。
(あい、焔さん生きてますかぁ〜〜?)
そこで焔の通信機から緩い声が聞こえて来た。ラビィだった。ノイズ現象が解除された事で通信が可能になったのだろう。
「おい、ラビィか?安心しろ、生きてるよ!」
(あい安心しました〜!所でクロスピアの港エリアだけ入れないと、ユーザー達からの苦情がサポートセンターに殺到してます。速やかに帰って来て下さ〜〜い)
ラビィの報告が驚異は去った事を教えていた。ハジメは無言のまま拳銃をホルスターに納めると、静かに眼を閉じる。
すると、光っていた左手の黒い光が消え、少年から感じていた殺伐とした雰囲気も消えてしまった。どうやら元に戻ったらしい。
『少年、君に聞きたい事がある』
焔とラビィに指示を与えたヴァーカードがハジメの肩に止まる。聞きたいのはもちろんエンゴウを倒したあの力の事だ。その正体さえ掴めればノイズに対抗出来るだけで無く、ウィルスの被害者達も救えるかもしれないのだ。なんとしてでも情報を得なければならない。
彼はハジメを自分達のホームに戻し、少年のキャラを調べようと説得するつもりでハジメの顔を覗き込んだ。
『少年、君は・・・』
だが、その先の言葉は白銀の竜からは出てこなかった。
いや、言えなかったのだ ハジメの顔は真っ青で自分の両手を見ながら体を震わせていたのである。まるで何かに怯えている様でそ態度は明らかに尋常な物では無い。
『少年!!』
「ヴァーカードさん・・・ボクは・・ボクは!!」
すると突然弾かれた様にハジメは走り出した。
驚いたヴァーカードは思わず肩から飛び立ってしまう。方向から行くとマルコロ大聖堂に向かっているのは明白だが、ヴァーカードは少年を引き止める事が出来なかった。
彼の気持ちが痛い程理解出来たからである。
こんな時、無性に煙草が吸いたくなるのだがそれが出来ない事にため息をつきつつ、バーカードはラビィに連絡を入れた。
『ラビィ、解析してもらいたい映像がある。すぐ(黒衣の魔女)に連絡してくれ』
「了解です〜。ですが居場所捜し当てるのに少し時間が掛かりますが〜?」
『構わん。ひょっとしたらクロウの狙いが分かるかもしれん』
『エデン』からログアウトした始はバイザーを放り投げるとすぐに足元にあった携帯を手にした。
携帯の便利機能を使い目当ての電話番号にすぐにかける。視界が涙のせいで見づらいが、そんな事を気にしている場合では無い。
今大事なのは始の従兄弟終一の安否だ。
トゥルルル・・・トゥルルル・・・トゥルルル・・・。
(お願い・・出て!終一兄ちゃん!!)
始の願いも虚しくコール音は延々と鳴り続け、留守番電話に切り替わってしまった。
だが少年はもう一度電話をかけた。
あんなゲームで起こった事が現実に影響する訳無いと安心出来るまで――従兄弟が無事だと確認出来るまで――。
2度目のコール音もまた延々と鳴り続けていた。
(続く)