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天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
エピローグ

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オーディションを開催いたします

 この画質で令和に撮影された映像とはね。これは騙される。よくできているよ。



 そこには保坂さんが映っているのだろう。



 ()()()()()()()()



 こちらは現代らしい高画質な映像。



 保坂さんはこのビデオを初めて観た日にもしかしたら気がついてしまった可能性がある。



 ここに映っているのって……私……? と。



 あれはその衝撃の沈黙であったか。



 そしてまた家へ持ちへ帰って確認してみようと今度はダビングされたビデオテープを再生してしまったら……。



 そうだとしたら保坂さんはこの怪談の真偽を確かめたくて乃戯高学園へ入学したのではないかもしれないな。



 ともあれ彼女はこのビデオテープの舞台に幽閉されている。カーテンコールを終えても巻き戻されて、その舞台を繰り返す。



 藤井さんはずっとこの舞台上で生きていたかったらしいが、果たしてそれは俳優にとって極上の幸せなのであろうか?



 そして——テレビの頭上には()()がいる。



 奴らこそ真に舞台上でしか生きることのできない種族だ。



 この映像がその奴らの世界への出入り口になってしまっていた。



 彼女をそちらにまた『降臨』させたいなら新たな生け贄を捧げよ——か。



 そうおちょくるように吊るされた無数の仮面がテレビゲームのボスのように定位置でブラブラと揺れている。



 この穴は埋めたところで、また別に穴が空くだけだ。その穴も埋めたければ……。



 これも延々と繰り返すだけ。埋めても埋めても全ての穴を埋めることは不可能。



 犠牲には犠牲を。それを繰り返していくしかない。



 僕はスマホで撮ったあの写真を画面に表示させる。



 ……あと一回だけ。あと一回だけだ。あと一回だけ犠牲になってもらおう。



 誰が?



 ……そうだ。乃戯髙学園を俳優志望者が集う高校にしてみようか。



 それには演劇学科を設けないといけないな。



 今年の文化祭の演劇発表に感激した父さんがここを俳優の登竜門となる学校にしたいと持ちかければいいか。



 高校の卒業資格を得らながら、本格的な演劇教育も受けられるのが特徴みたいにすれば……。



 それだけじゃない。その卒業生の中から優秀者はエンタメ作品の製作会社に雇用されて、プラス俳優としての活動ができるのはどうだ。



 その会社が製作するコンテンツには優先的にキャスティングされるのを売りにするんだ。



 給料制にもしよう。俳優業の他にも業務を担ってもらえればそれは可能だ。



 芸能事務所に所属していたってそれだけじゃあ一銭も入ってこないんだから、これは魅力的な待遇のはず。



 殆どの俳優はアルバイトや別業種で働く傍ら俳優活動をしている。



 どうせそうなるなら演劇作品の裏方スタッフとして近しい所で働けて、給料を貰えた方が良いに決まってるだろう。



 ……よし、大枠の事業計画はこれで父さんには演劇分野に投資してもらうように提案しよう。



 息子が初めてビジネスの提案をするんだ。採算が取れなそうだったとしても、試しにしてくれるだろう。



 いや、絶対に成功させる!



 ()だってあの父親の息子だ。



 幸いにも今はモキュメンタリーホラー作品とか人気でちょっとしたホラーブームみたいだし、手始めにその製作会社が名刺代わりのホラー映画を作って実績をあげよう。



 ネタならある。



 この学校で起きた怪異こそが絶好のネタじゃないか。



 乃戯高学園で起きた怪異をベースに……。



 そういえば、岩田さんの旦那さんがホラー作品を手掛ける映像作家だって言っていたな。まだ大きな実績もなく貧乏らしいけど。



 仕事に飢えているなら、資金は出すからこのアイディアを元にホラー映画を製作してくれって頼めば大した報酬を提示しなくても大はしゃぎをして作ってくれそうだな。



 売り上げの一部は還元するにしてもそれはヒットすればの話だ。



 藤井さんの監修があれば監督の腕がクソでも修正してそれなりのものは出来上がりそうではある。



 最悪、映画製作のノウハウだけ借りられたら良いわけだな。



 自己満足の映画となるか、傑作が生まれるのか……。



 百パーセント儲けられるビジネスなどはない。それが投資というもの。若い諸君はそれは覚えておくように。



 そして大きな利益を独占するためには、率先して行きたくないような未開の地を開拓しなければならない。



 この事業はどうなるのか、出世するチャンスが巡ってきた無名監督の底力に賭けてみよう。



 このスリルはたまんないな。これに快感を覚えるようでは似たようなギャンブル依存症なんて病気も無くなりはしない。



 ビジネスはスピードも命だ。



 早速、藤井さんに原案となる企画書を書いてもらおうか。うちで養ってあげるんだからこのくらいの労働はしてもらわないとね。



 物書きの才能も一流である上に逆らうこともない最高のゴーストライターだ。



 ……その映画のオーディションもやってみるか……そこに良さそうながいたらどうしよう。それならそれで……。



 誰を犠牲にするか、それが問題だな。



 まっ、焦りは禁物。じっくりと吟味していきますか。じっくりと言っても出会ってから猶予は二年くらい、年齢には気をつかないといけないが。



 さぁ、運命のルーレットが回るよ。

 クルクルクルー。



 針は誰に止まるっのかっなー。



 このオーディションに選ばれしたった一人の者は光栄に思ってほしい。



 叶うはずのない夢が叶ってしまうのだから。



 中身を保坂咲という才能と入れ替えることによって……。



 夢を諦めて路頭に迷い、就きたくもなかった仕事をするよりかは全然いいだろう?


 ()()()()()()()()()()()()()()——



 これは犠牲ではない。



 選ばれし一人の人間を救う慈善活動なんだ。

 


(了)






参考文献



『ミス・ダンデライオン』成井豊 脚本 原作・梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』 徳間文庫



『ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く』リサ・ランドール 著 向山信治 監訳 塩原通緒 訳 NHK出版




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