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天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
第三章「Re: 乃戯高学園の怪談」

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 全科目の中間テストが終了した金曜日の正午。



 気合いのある部活は今日から活動を再開させている。



 演劇部はというとこの日は軽く会合だけすることになった。何やら重大な告知があるらしい。



「はい、皆さん中間テストお疲れさまでした! 今日はとっても大事なお話があります」



 保坂さんのキャラが崩壊してしまっている……。僕を除く演劇部員は唖然としてしまいやしないか。



「……斉田君、眼鏡かけているんだね。いつから」



 相川さん、そんな間違い探しみたいな差異はどうでもよくないか。



「中間テスト前、部活が休止してから。入学時には買ってあったんだけど、中学卒業するまでかけてこなかったから……かける習慣なくて。席が後ろだから試しにかけてみたら黒板の字がすっごい鮮明に見えて。そこからはもう眼鏡無しではいなれなくなったね」


「はい、私語はしない。えー秋なのでまだまだ先の話だと思っている方も多いと思いますが、もう文化祭の演劇発表に向けた準備に取り掛かかることになると演劇部にはお伝えします」


「あっそうなんだ。もう演目が決定しているとか?」


「うっふふ。それは、どうかなー? その前に……これから各クラス担任の先生達がどの部門をやりたいか生徒にアンケートを取るそうです。

 キャスト部門、小道具部門、大道具部門、照明・音響部門と……その希望を踏まえて期末テストが終わって、夏休み前に誰がどの部門で関わることになるのか決めてしまい夏休み後、九月からいよいよ本格始動する流れになります。私達、演劇部はもちろんキャストで固定になりまーす」



 僕は安西さんが説明しているように見えるから問題ないけど、この言葉遣いで保坂さんが喋っているのかと思うと……。



 あぁ、やはりどうしちゃったの……? って固まってしまっている三人。



「安西さん、神戸出身だから関西弁が平常運転だったんだけどね。そうじゃない彼女も新鮮だけど、僕からしてみれば何かの役を演じているように思えてしまう……」



 そういうもんなんですね。



 関西弁の安西さん……尊いものを失ってしまった。



「はい、さらにさらに……先程、誠君のご指摘がありましたが……」


「ま、誠君!?」


「上演する演目を演劇部には先行して発表しちゃいます! ……今年の演目は……成井豊さん脚本でお馴染みのミス・ダンデライオンでーす」


「ミス・ダンデライオン……動物園の物語?」


「そう思わせておいて、これはライオンの物語ではありません。ダンデライオンとは日本語でたんぽぽって意味なの。黄色い花びらがライオンのたてがみみたいでしょ」


「へぇーたんぽぽなのにあの百獣の王ライオンなんだ。豪勢だな……」


「キャラメルボックスって劇団の台本なのかな。原作が……クロノス・ジョウンターの伝説……」



 相川さんの素早いリサーチだ。



「クロノス・ジョウンターの伝説って……」



 どうしましたか、藤井さん?



「僕達の代が上演しようとした台本も……それが原作だったような」



 もしかして! 安西さんが亡くなって中止になった台本と同じってことですか!



「いや、ミス・ダンデライオンなんてタイトルではなかった……確かたんぽぽ娘ってタイトルで……うん? ミス・ダンデライオンとたんぽぽ娘って……ほぼ同じ意味じゃないか!」



 それは……同一の原作を舞台用台本に書いた人がもう一人いたってことですかね?



「そうなのかな……」


「そう、この台本は成井豊さんオリジナルではなく原作があります。

 そこで私は考えました。この台本、演劇台本の中ではそこまで昔に書かれた台本じゃないんだけど、どうしても読んでみると……こちらの都合を鑑みてこの台詞、展開を手直しをしたいなとかの箇所が出てくるもので……けどそれは劇作家さんには無礼、失礼にあたります。

 命を削って書かれた他者様の台本なので、本来なら改訂せずに上演するのが台本を貸していただいている側の務め……」


「ならそのまま上演すればいいじゃないか。それで解決だろう」


「いいえ。舞台とは作る者達の特色に特化したものにしなければいけないの。だから、私が改めて台本を書くことにしました。原作、クロノス・ジョウンターの伝説。原案、ミスダンデライオン。それで脚本と再構成を保坂咲が担います」


「咲ちゃん、台本まで書くってなんでそこまでするの? それだと咲ちゃんの負担があまりにも大きいよ」


「夏休みもあるし、そんなことないよ。夏休み中に脱稿させるから。それに斉田君もいるからね」


「僕?」


「斉田君には演技指導と、美術とか照明とか舞台的な演出をやってもらおうと思っているんだけど、いいよね? 先生の中には専門的な演技指導できる人もいなくて……ただ活動を見守るだけのお飾りみたいになりそうだから」



 ……藤井さん、安西さんが演出と演技指導をやってほしいと仰っていますが?



「安西さんはそこまで指導者として適正があるわけではない。

 やろう。これは……()()()()()()になりそうだ。

 いいや、未完のまま筆が折れた物語にピリオドを打つ時が来たか。あの年も僕が演出と演技指導を任されていたんだよ。一応、学生時代に演劇経験のある先生がいたけど、途中からあまりにも知識に差があったから僕にその権利を明け渡してくれた」



 それはそれは……。



「いいですよ。保坂さんばかりでは大変ですからね。僕も夏休み中に勉強しておきます」


「ありがとう!」



 あの年の再現、未完だった物語を完結させる……か。



 これは演劇部がこの二人に買収されたみたいだな。



 保坂さん……これで良かったの?




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