表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
第二章「もう一人の幽霊?」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/39

16

 僕と陸と相川さんの三人で帰るとなったものの駅に着くとそれぞれ乗る電車が別だったのでここでお別れとなった。相川さんは地下鉄で、陸は僕とは反対方面へ向かう電車。



 川村は僕と同じ方面の路線だがたったの一駅で降りてしまう。



 もしも演劇部全員で帰宅することになれば僕と保坂さんはそこから電車内で二人になれるのか。



 そんな日がきたら何を話そう。今から備えておいた方がいいのか、なんてね。



 事前にネタを用意しておかないと会話が弾まないならそれは果たして友達でもないんじゃないか。



 相川さんとは連絡先を交換できた。数少ない女子の連絡先……。



「部長の保坂さんは俳優として能力があるのはもちろんだけど、演出家や監督にもなれそうだね。あれだけ中心になってまとめることができるんだし。そういう人が一人でもいると部活動は引き締まるよ。演劇って俳優ばかりいてもできないからね」



 藤井さんが背後から語りかける。



 帰りの電車は座れはしないものの朝よりかは遥にガラガラであった。しかし社会人も退勤の頃合い、ここまでスペースにゆとりがあるものだったけ……。



 ……それって舞台やカメラの前では演じない、裏方ってことですよね。演技をしたくて演劇の世界に入ったのにやりたいと思いますかね。



「彼女、けっこう演劇に対して自分のやりたいこと、信念があると思う。そういう人ほど演出家や監督の思想が濃い作品は合わないとなって自らプロジェクトを立案する……演劇界では俳優からそちらへ転向する人はよくいるんだ。そう決意するのは成人してからだろうけど」



 藤井さんは保坂さんはどれくらい才能あると思いますか? それこそ安西さんと比べて……。



「うーん、演劇や芸術全般における個人の評価ほど当てにならないものはないよ。ある人にとっては高評価だけど、またある人にとっては低評価、こんな事はザラにある。音楽や美術なんてそれが顕著だろう。斉田君は教科書で紹介されてある絵や楽曲にどれだけ感銘を受けた?」



 そうですけど、僕にとって保坂さんは演劇では絶対的な人だったんです。それが僕の方が才能あるかもしれないってなったらあんなに動揺するなんて……それで気になってしまいました。



「……保坂さんは万能型だ。演じられるし演出家や監督、プロデュースする側にだってなれるし、その気になれば台本だって執筆できるだろうね。

 転じてマイナスに評価するなら俳優としては彼女の代わりならいくらでもいる。恵まれた容姿、スタイルのおかげで若いうちは有利になれるけど、ある年齢を過ぎると……二十代後半になってしまったら……どうだろうねってところかな。その年齢あたりで演出家や映画監督としての道も視野に入れるかもしれないね」



 そんな……そこまで演劇界って競争が熾烈なんですか。



「プロスポーツの世界と何ら変わりがないよ。野球だっていくら高校生まではナンバーワンでもプロチームに入団したらそんな化け物ばかりで挫折する人は山ほどいる。評価軸が打率とか勝利数など数値化できない分、演劇の方が厄介かもね」



 すみません。もうこの話題はやめましょう。



「演劇もスポーツも気分転換、遊びでやるものだったはず。それでお金儲けしたいってなったらそこは茨の道だってことだよ。僕はそれでプロになる気は元からなかった。遊びを仕事にしてしまったらそれを嫌いになってしまうかもしれないから」



 遊び……そうだよな、演劇もスポーツも遊びだ。それで誰でも生活費を稼げるなんて、そんな甘いものなわけがない。



 夕方六時から夕飯どきの七時になろうとしているのに空は明るかった。季節としては夏至だし去年もこうだったんだろうけど毎年、この光景を見るまで忘れてしまっている気がする。



 席が空いたので座る。



 ……藤井さんと同じ位置に来てしまい、重なってしまう人がさっきから一人もいないのはなぜなんだろう。



 生きていたはずの藤井さんのことを心配したり、気にかける人がこの地球上からいなくなり幽霊みたいになる超常現象が起きるなら、安西さんだって……()()()()()()()()()()()



 なんとかならないのかとは?



 それは……。



 天才女優、安西未佐……何気なくスマホを手にしてそのキーワードで検索してみた。



 あの怪談がまとめられているであろうサイトがズラーっとトップに表示される。



 この中に実名で安西さんの名前が記載されているサイトもあるのか。学校名まで晒されたりしているのかな。



 これじゃあ、安西さんは恐怖の象徴になってしまっている。あんなに無垢な女性なのに。




『演劇界、唯一の魔法アイテム? 亡き天才女優が映るビデオテープ』




 なんだこのタイトルの記事? スクロールして下の方にあった記事。僕は反射的にタップしてしまう。




『演劇界とはお客さんから見ればとても華やかな業界ですので憧れる人は非常に多いです。

 しかし、その輝かしいステージに立つことができるのは極一部の選ばれた俳優だけです。そのために俳優志望者達は歯を食いしばって厳しい稽古に励むわけですが……そんな人達をよそ目にトントン拍子でスターへの階段を登ってしまう人もいます。それが天才というやつですね。

 この演劇界にも十年ほど前に業界を震撼させた天才女優がいました。これで暫くは彼女が主要な仕事を独占するだろうと思われていたほどです。が、そんな彼女に悲劇が襲います。

 彼女は女優として本腰で活動する前の高校三年生に交通事故で亡くなってしまったのです。これには将来、彼女を起用したいと企画していた演出家、映画監督達も悲しみます。

 そんな不運な彼女ですが通っていた高校では毎年、文化祭で演劇公演を行うのが恒例でした。もちろん天才女優がこれに出演者として参加しないはずがありません。

 その数少ない生前の演じる姿をどうやらこの学校はビデオカメラで録画していたらしく、そのビデオテープは今もその学校にあるだろうとのことです。

 亡くなった天才女優の演技が映っている貴重なビデオテープ……この魅惑的なキャッチフレーズから演劇界ではこのビデオテープを鑑賞すればその天才女優の魂が乗り移ったみたいに演技が上手くなるのではないかと噂されています。

 誰がこんな噂を流したかは知りませんが……』




 何だ、これは。



 観た者は天才女優の魂が乗り移ったみたいに演技が上手くなるビデオテープだと……。



 このサイトは……テキストと質素な背景のデザインからして大昔のサイトだろう。



 最終更新日は2004年とある。演劇制作スタッフが管理人で、趣味で演劇関連の情報を発信していたサイトだった。



 この噂は安西未佐さんのことを指しているとみていいだろう。



 あの怪談の裏で、演劇界ではこんな噂が流れていたのか。よくこんないかにも創作しましたみたいな噂を肉付けするよな。



 が、偶然の産物。この噂は半分は当たっている。



 現れたのは安西未佐さんではなく、藤井一輝さんという男性。藤井さんの指導もあって僕はメキメキと演技が上達しています。



 観ると演技が上手くなるビデオテープねーこんな噂を信用して乃戯高学園に入学してくる俳優志望者なんているのかな……。


 

 ……ま、まさかね。




「そんな……天才だなんて。あっ、天才だったら安西未佐さんじゃないですか。あーまさかあのビデオを観たからその()西()()()()()()()()()()()()()()()()ーなんて」




 ……安西さんの魂が僕に乗り移った……保坂さんのあの眼……。



 まさかね!



 僕は藤井さんに演劇界ではこんな噂があったみたいですと教える。



 ……そういえば僕と藤井さんが会話している時は周りからどう見えているのだろうか?



 謎は尽きない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ