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天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
第二章「もう一人の幽霊?」

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 ここは二階、職員室の出入り口付近だ。演劇部の四人が僕の前にいる。



 ここで僕は——



「ねぇ、()()ビデオテープ……もしかしたら放送室の棚にあるってことない? 先に行ってみる価値はあると思うよ」



 四人は僕の意外な提言に戸惑っている……わけではなく、



 これから神田先生に文化祭でやった演劇公演の記録映像はありませんか? と聞こうとして職員室に向かっているのにそれを一旦、中断させてまで僕が放送室に行ってみようと促していることによる戸惑いだろう。



「そういえば、あそこにもテープ類はあった……ね」


「そう。できれば内密に発見できるならそれにこしたことはないでしょ? だから先生に聞く前に行ってみよう」



 ……あのビデオテープに関することを水本さんに質問したら駄目なんだおそらく。なぜか水本さんは()()()()()()()()()()()らしいから。



 それはなぜなのか?


 その謎を解くためにも水本さんを経由せずにあのビデオテープを僕達は発見しなければならないんだろう。



「……そうだね。それも一理ある。じゃあ放送室の鍵はまだ返していないから、行ってみようか」



 保坂さんも僕にはもっと深い思惑があることをなんとなくでも読み取ってくれたみたいだ。その能力に優れており、その意見を採用してくれるからリーダーとして慕われる。



 演技の才能がある人って仕事ができる人間でもあるんだろう。



「保坂と相川、よくあんな怪文書がある部屋で女子会みたいなトークできるよな。もう俺は一人であそこには入れないぞ」


「えーそうなの。それだけいつも喋れるなら川村にも二学期から担当してもらおうかなって考えていたのに」


「なに、それって俺には一人でやらせる気ってこと?」



 保坂さんと川村のコンビでいつか……と僕はからかおうとしたが、なぜお膳立てみたいなことをしないといけないのかと黒い自分が待ったをかけた。



 再びの放送室へ。



 あの男性は……まだここで働き始めて年数が浅い若い頃の水本さんなんだろう。その水本さんがあのビデオテープをここへしまう。



 その水本さんにあのビデオテープについて尋ねたら……水本さんがおかしくなった。



「これ……かな。ほら、カバーを外せば真ん中のラベルに書いてある。文化祭リハーサル映像! ってビックリマークまで付けて」


「……なに。斉田君、ここにあるってもう把握していたの?」



 そうだよ、とかっこつけてもいいかな。……自重しておこう。



「うーん、あのメモがあったからかな。あと、このビデオは隣の視聴覚室で観られていたけど、あの怪異が起きてしまったことにより適当な一時保管場所としてこの放送室が手っ取り早かったが、そのままここにあるのを忘れ去られてしまった……こんな推理もできる」


「それで的中かよ。これからは名探偵、斉田と呼ばせてもらおうか」


「あっこの字……女性の字ぽっいけど生徒が書いたんじゃないのかな」



 ラベルの字をパッチリとした目で鑑定でもしているような相川さん。



「女子生徒の字……」



 ……これは安西未佐さんの字か? 自宅に持って帰り書いたのかもしれない。



 うっ、また胸が締め付けられる。あの安西さんはもうこの世にいない……。



 もう三十年も前のことなのに、僕の人生では無関係の人のはずだったのに。



 ……自宅に、ビデオテープを持って帰る……演劇公演の記憶映像はDVDにダビングしておいた……。



 そういうことか!



 どこかにあるか?



 棚の……あっ屋根に! 灰色の小型ボストンバッグのような鞄が。



「陸! あの上の鞄を取ってくれない?」



 僕は指差す。



「上の……あの鞄? めっちゃ埃かぶってそうだけど……」


「お願い、そこは我慢して取ってくれ」



 棚の屋根なんて埃が溜まるスポットだ。鞄を陸が両手で持ち上げるとそれだけで埃がゆらゆらと落下してくる……。



「斉田氏、今日はどうした。大人しいBクラスらしくない……」


「これも名探偵の勘ってやつ」


「おぉ……そうか」



 鞄のチャックを開ける。なんだこの臭い……だが、ビンゴ。中には白いビデオカメラがあった。



「ビデオカメラ!……これでリハーサル映像を撮っていたってこと、斉田君?」


「そうだと思う。で、カメラの中には……またビデオテープが。サイズ的にもこれが八ミリテープってことかな。こっちが原本で、こっちはダビングしたビデオテープ。家庭用の再生機でも観られるようにダビングしたんだろうね」


「八ミリテープって、この小さいのか。こんなサイズのビデオテープもあるんだ」


「川村、水本さんの話を聞いていなかっ……」



 って、危ない。()()()()()川村は水本さんを知らない。



「みずもとさんの話って……みずもとさんって誰よ?」



 ビデオテープが巻き戻った。やり直せと命じられたように。



 なんで僕だけにこんな超常現象に見舞われるんだ。



「ごめん、川村は知るわけないよね。推理したせいでのぼせていた。僕に三十年前のビデオカメラ事情を教えてくれたおじさん。この時代のビデオカメラは八ミリテープってやつで録画されていたの」



 水本さんは親戚のおじさんということになってしまった。家に遊びに来た際にこの知識をたまたま教えてくれたことにしたが、バレませんように。



「じゃあ、どっちで観ようか? 原本の方だったらこのビデオカメラが再生機代わりになって、付属しているケーブルでテレビに接続すれば観れそうだけど、こっちだとビデオテープの再生機が視聴覚室にはなさそうだから……」


「原本なら直ぐに観れるってことでしょ。それでいいじゃん」


「ちょっと待て保坂。その原本で観てしまうと呪われるが、ダイビングしたテープで観れば呪われないってパターンはないか?」


「呪われるって……観ると呪われるって怪談じゃないでしょこれ」



 安西さんは呪ったりなんかしない。



「貞子が出る映画だとそういう設定じゃなかったけ?」


「それってリングか。相川、ホラー映画観るの?」


「いや、観ないけど貞子ってキャラクターはなんかパチンコにもなっているじゃん。その呪いのビデオを観ると呪われるけど、ダビングしたテープであれば呪われないって話じゃなかった?」


「違う違う。あれは呪いのビデオをダビングして他人に見せればその人は呪いから逃れられるって設定だったはずだから、原本じゃなければ呪われないってわけではないね」


「陸はリング観たのか」


「うん、父さんがホラー映画けっこう好きで。小学生の頃に観せられて大泣きしたことあるんだけど、この年齢で観るとそこまで怖くなかったね。ビデオテープが絡む怪談ってことで、一昨日また観ちゃった」



 だから、貞子だかそんな呪いたくてしょうがない怨霊と同一視するなって。



「そんなに呪われる、呪われない? って気にするなら僕が一人で観て実験台になろうか」



 それでも構いやしない。



「今日の斉田氏、やっぱ変だって」



 皆んながどうしたの? という視線を浴びせてくる。



 僕は……何が変わったというのだろうか。自分でもはっきりしていない。




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