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天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
第二章「もう一人の幽霊?」

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 このおじいさんは水本功みずもとこうさん。



 学年の授業を受け持っている先生ではなく用務員としてこの学校で長らく働いているらしい。



 そして……乃戯高学園の創設者、水本敏子みずもととしこさんの次男でもある。



 僕達は水本さんに先導されて渡り廊下から第二校舎へ行き一階にある図書室へ。中へ入ると本の貸し借りをするカウンターの裏にある部屋まで連れて来られた。



 図書室は第一校舎の一階にもあるが、この第二校舎の図書室を訪れるのは僕はこれが初めてだった。



 鉄製の書架がズラリと並んでいる。通路の横幅は人が二人通れる分くらいしか確保されておらずここの方が資料室っぽいな。



「手こずらせてすまなかったね。過去に文化祭で行われた演劇公演の映像はここにあるんだよ。

 半ば母の趣味みたいなものでやらせていたことだからね、こうして芝居用の戯曲もたくさんあるこの部屋の方がしっくりくると思ってここの棚に保管してある……しかし、また今年の一年生が文化祭で演劇をやってくれるなんて……母も喜ぶよ。ありがとう」


「お礼を言いたいのはこっちです。小さな演劇部のために一学年全員が協力してくれるんですから」



 保坂さんにはニコッと笑顔で返すと水本さんは奥の隅っこにある棚まで行く。



坪内逍遥つぼうちしょうよう訳のシェイクスピア全集だ」


「咲ちゃん、これも台本ってことでしょう? 広辞苑みたいな厚さだね……」



 それぞれが書架の本を物色している。大人しい性格とされるBクラスの僕と陸は道を譲るように端の棚へ移動してしまっていたが……。



「祐矢君、あれ覚えている? 俺、思ったんだけど安西未佐さんって父さんが出会った天才高校生のような気がしてならないんだ。若くして亡くなったって点は共通しているし年代的にも合わなくはない」



 内緒話をするように陸が小声で僕に話しかけるので僕もそれに合わせることにした。



「そういえば。そうなると安西さんは高校生から既に仕事として演劇をやっていた天才女優だった?」


「かもね。どんな現場で出会ったのかまでは詳細に聞いてないんだけど」


「安西さんって演劇界では当時から有名だったりしたのかな……」



 その話の途中で水本さんが保坂さん達、Cクラスの居る方へ来ていた。僕と陸も合流する。



「君、坪内逍遥を知っているなんて日本演劇の歴史にも詳しいんだね。その年齢で大したものだ」



 日本演劇の歴史か。日本はどんな歴史を辿ってきたというのだろう。



 第二校舎にある図書室の裏がこんな演劇好きにはたまらない部屋になっていて、これだけ書籍を揃えているなら演劇史みたいな授業があってもいいのではと思ったりしたが、演劇部にとってはお宝部屋のような所へ案内されても、いつまでも浸っているわけにはいかないのが残念だ。



「あの、それで演劇公演の記録映像はどのくらい残っているのですか? 第一回目からあったりすのでしょうか」



 と水本さんの真横から僕が切り出してみる。



「……ははっ。第一回目からか。若い者はもう生まれた時から携帯電話、スマートフォンで映像を高画質で録画できるからピンとこないかもしれないけど、一般家庭にビデオカメラが普及して、片手にカメラ持って運動会とか撮影できるようになったのなんてここ最近だからね。

 平成に入ってからかな? それでも君達は生まれていないから、最近ではないのかもしれないけど私からしたら……」



 一般家庭にビデオカメラが普及したのは平成に入ってから……安西未佐さんが亡くなったのは約三十年前……あれ、もしかして。



「映像はあんまり残っていないってことですか?」



 保坂さんも察したらしい。



「そう、二本しかないよ。どの年代が良いとか選べるほど残ってはいないってこと」



 うっ、一段の棚なら一杯になるくらいあるものだと思っていた……そうか、映像に残すことが一人の学生でもできる現代ってその頃と比べると驚異の進歩なんだな。



「では、その……二本のビデオテープにはどの年の公演が収録されているのでしょうか?」


「ビデオテープ……あぁ、そうか。きっとお嬢さんが思っているビデオテープとは家庭用、VHSで録画しているもんだと思っているね。これは参った、参った」



 水本さんは笑いをこらえるようにニヤニヤしている。



「えっ、確か昔はビデオテープで録画してたんですよね?」



 ビデオテープを古の映像再生ソフトと称した川村が追求する。



「そうなんだけど、ビデオカメラだとまた違う規格で、八ミリテープというビデオテープで録画してたんだよ。つまりは、どこの家庭にもあったVHSの再生機では再生できないの。

 両方、再生できる機器も生産されていたんだろうけどね。ともかく、それをテレビ画面で再生するにはビデオカメラをテレビで繋いで再生するしかなかった……疲れるね、こういうのを改めて説明するの」


「すみません……」



 保坂さんがとりあえず謝る。まだ完全に整理はできていないが、どうやら僕達はやや思い違いをしていたことだけは分かった。



「あの、まさかその記録映像はビデオカメラがもう壊れたので、テレビ画面に映して観るすべはないってことは……」



 僕は水元さんの話をまとめると、そんな懸念も思いつき口にする。



「それならご心配ご無用。ほら、これ。そんなビデオテープに録画されてある思い出の映像をデジタル化、DVDにこうしてダビングすることが今やできるみたいだからね。

 私がそれができる機械を買ってやっておいた。おかげでDVDが再生できる機械があれば観れるよ。DVDなら君達の家にも再生機があるんじゃないのかな。あの、最新のブルーレイプレイヤーからでも再生できるんだろう?」



 その心遣いは大変、有り難いのだが……本来、欲しいのはそれじゃない。その二枚の他に映像はないのか……?



「あのっ。安西未佐さんという生徒はご存知でしょうか? その二枚のDVDに映っていたりしますか?」



 保坂さんが……安西さんの名前を。ここはもう打ち明けるしかないとみたか。




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