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天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
第二章「もう一人の幽霊?」

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『フライデーランチタイムのシアターレディオー!』



 その後に女性が歌う曲が流れる。このスタートの合図は相川さんかな……?



 エコーなのか、音声が加工されている。



『乃戯高学園の皆様こんには……』



 こっちは保坂さんの声だろう。他所様よそさま用ボイスみたいなものか。

 或いはアイドルのラジオを彷彿とさせる。



 今日から始まった週一回、金曜日にやる演劇部の校内放送。二人とも元気よくやってくれているけど、今日の活動内容はやってやろうぜと気合いを注入したものの決して明るいものではない。



 そんな暗雲がたちこめる中で、他の生徒にはそれが勘付かれないどころか好感が持てるように演じてみせている。



 本心では笑っていないけど、笑ってみせる——



 演技をする、芝居をするって嘘をつく、騙すって意味もあるけどこういうことか。



「この構成、考えたの保坂さんだよね。すごいね。本物のラジオ番組っぽい」


「しかも生放送だからな」



 なにこの二人、可愛い、癒される——

 クラス内からはそんなコメントもチラホラと。



「やって正解だね。これで部員が少しでも増えてくれるといいけど」



「だね。……そのためにもあの問題を早く片付けないと」



 これから入部を希望してくる人がいても、あの怪談を聞いてしまったら逃げてしまうかもしれない。



 安西未佐さんは……成仏できていなくても、僕達に危害を加えるような幽霊なんかじゃないさ、と胸を張れるようにしておかないと。



 ……これだけ科学が発達した現代でも、これまで幽霊はフィクションの中だけの存在だと結論を幾度となく出しても……人間はまだ幽霊をどこかで信じてしまうものなんだな。



 人間は非科学的なことを、虚構を飽きもせず何度も信じ込んでしまう依存者だな。演技、芝居だってやれてしまえるよそれは。



『演劇部の校内放送ということで演劇についても話させてください。演劇作品……映画や舞台、アニメもそう。他には漫画や小説だって……これらになぜ人々は熱中してしまうのか?

 それは人間には嘘を本当に起きている事だと、架空の登場人物を実在するかのように信じることができる能力があるからなんです。

 だってどれも作り話、フィクションだって承知の上なのにその作品を観たり、読んだりしている間だけは作品の世界にのめり込んでいますよね。こんな娯楽が成立するには人間にそのような能力がないといけないんです……』



 ……そうだよな。だから僕はアニメを、画面の中にいる架空のキャラクターを愛してやまない。これができてしまえるのが人間という生き物なんだ。




 放課後、職員室にて。



「過去に文化祭で行われた演劇公演の記録映像かー。あるのかなぁ。その時代の話になるともう知っているのは校長先生とか理事の人とか年配で偉い立場になった人くらいしか知らないと思うから、俺には分からないなー」


「あるとすればどの部屋だと思いますか?」



 保坂さんが担任の神田先生に聞く。



「そういうのがあるとしたら一階の資料室になるのかな。多目的ホールの向かい側、展示スペースの手前、左隅に出入り口がある。行ってみれば分かると思う。そこに授業で使える映像やそういった学校の活動を記録した写真や映像が保管されてあるんだよ」


「では私達がそこへ行って探してみますので、鍵を貸してもらえないでしょうか?」



 ということでその映像がありそうな資料室の鍵を借りることはできた。



「あっそれと、お前たち喜べ。ご希望通り文化祭で一学年全員で作る演劇公演をやらせてもらえそうだぞ。それこそ、その時代を知っている校長先生や理事長にそれを報告したら好感触で……」



 良いしらせだ。あとはこの詰まり物を取り除くだけだ。



「カーテンが閉まっていて薄暗いな。電気のスイッチどこ?」



 蛍光灯に照らされると資料室と言っても本棚がズラーと立ち並んでおり、膨大な資料が収められているわけではなかった。



 広さも縦長でここで授業はできないだろう。物置きと言った方が正しいんじゃないか。



「おっ、なんか白黒の写真が飾ってある。……創立二十周年に空から校庭を撮った写真みたいだな」



 その空から撮った校庭写真には大きな横断幕と全校生徒も米粒サイズだが写っている。これを機に十年刻みで記念写真を撮っているのかと思いきや五十周年で止まっている……。



 そこまでの写真が一列になって壁に四枚飾られており、三枚目からカラー写真になっていたり生徒の数もどんどん増加していてこれぞ学校の資料らしい物。



「棚は奥と左側にあるここだけみたいね。映像ソフトらしきものはあんまり無さそう」



 保坂さんと僕は見上げながら点検するように目視する。



「俺達が探しているのってあの分厚いいにしえの映像再生ソフト、ビデオテーブでしょ。無くね? ブルーレイかCDが入るケースならあるけど」


「ブルーレイじゃなくてDVDかもよ」


「そうか。ビデオテープからDVDには移行できてもブルーレイには達していないことはありそうだな。学費の高い私立だからそこまで遅れていないと思いたいが」


「あっ、下の引き出しにビデオテープあった!」



 川村と相川さんがブラブラしている中で陸だけは黙々としゃがみ込んで探していてくれた。


「でかした陸。文化祭の映像はありそうか?」


「えーっと……映像の世紀・第二次世界大戦、第四回目から六回目、スマトラ沖地震・津波特集、農林省制作教育アニメ、町内夏祭り三年生の和太鼓演奏、平成二年から七年……無さそうだね」


「映像の世紀ってあのNHKの? 観たいんだけど」


「保坂、今はそれどころじゃないだろう」

「ごめん。でもこれ歴史番組では音楽も美してくて、人気あるんだよ」



 安西未佐さんの稽古映像どころか文化祭で行われた演劇公演の映像らしきビデオテープも見つからなかった。



 これは文化祭関連の映像自体が皆無と思った方がいいのかもしれない。なぜ稽古映像は撮ろうとなったのに本番の映像はないのか……。



 ネットでは有名らしいが、怪談そのものが創作なんじゃないかという線も浮上してきたんじゃないか。それならそれでもいいんだけど。



「なんで町内夏祭りの和太鼓演奏は五年分録画して、一大イベントの文化祭、演劇公演がないんだよー演劇好きの創設者さんならそれこそアーカイブスに残すべきだろうよ」


「あの学校の記念写真もそうだけど学校の活動を記録、録画するかしないかなんて気まぐれだからね。中学生の時も三年生の年だけ先生が張り切っていて写真、映像を撮りまくって、それを編集して卒業式に配ってくれたし」


「ブルーレイで?」


「いや、データで。欲しい人はUSBを持ってくるように言われた」


「門出の日にそんな面倒なことしたの?」


「そう。その方法は要領が悪かったねー。USBの容量がけっこうくうデータ量で二分くらいかかったし」


「要領と容量ってダジャレかよ」


「ははっ」



 徒労に終わりそうで川村と無駄話をしてしまった時だった。扉が開く。



「君達かな? 文化祭の演劇公演の映像を探しているっていう生徒は」



 眼鏡をかけた高齢そうな男性がやって来た。こんな先生いたかな?



 ……ぷっ、この前、観ておいたバック・トゥ・ザ・フューチャーに出てくる博士みたいな髪型だ……と笑ってしまったが、このおじいさんはなんと言った!



「はい、そうです!」



 保坂さんの大きな声で停滞していた空気を変える風が吹き込まれた。




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