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天才女優の亡霊〜ある学園で起きた怪異  作者: 浅川
第二章「もう一人の幽霊?」

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11/26

「えっ、そんな許可を貰ったの?」



 月曜日の放課後。視聴覚室に集合した演劇部員。その部長である保坂さんがびっくりしているところだ。



「そう。だからこれが隣にある放送室の鍵。機材の操作とか予習して金曜日のお昼に備えてくれ」



 先週、金曜日の部活終わり。視聴覚室の隣に校内放送ができる放送室があることに気がついた川村はこれは演劇部でも活用できるんじゃないかと思いついた。



 ではどんな活用方法がある? となったらそれはもうお昼休みに音楽を流したりとラジオのような放送をするしかないだろう。



 幸いこの学校は放送室を使用する部活はないので、縄張り争いといった揉め事はなかった。



 そのアナウンサー? DJ? みたいな役を保坂さんに務めてもらおうというわけだ。



 舞台上で演技をするとはまた畑が違うのかもしれないけど、ないよりはマシだと僕も思った。せめてこういう場で保坂さんにはリフレッシュしてもらいたい。



「えーいいな。私もやってみたい!」



 相川さんも食いつく。



「俺達、男子はここでは表に出ることはしないのでお二方でお好きにやちゃってください。こういうことしていけば演劇部の良い宣伝にもなるでしょ。部員を増やすという目的も持って活動してくれたらこちらとしても嬉しい限りでございます」


「ありがとう! 私だとこのアイディアは思いつかなかったよ」


「あともう一点。これはおまけみたいなもので本題はこっち。斉田氏、先週のあなたが考案したものを話してあげなさい」



 きたか。よし……斉田氏ってなんだよ。口調といいここで笑わせるなよ、もう。



「あの、保坂さん……このままだとこの演劇部が公演できるようになるかどうかは来年の新一年生がどれだけ演劇部に入部してくれるかにかかっていると思うんだ。

 夏休みに入るともう今年度は部員が急激に増えるなんてこともないと思う。

 それまでに僕達が基盤を作っておくだけじゃなくて……今年の文化祭で、一年生総出で演劇公演を上演するっていうのはどうかな?

 かつてはこの学校で各学年がやっていたことだし、前例がある以上はそこまで非現実的な話ではないと思う」



 これが一年生の間に保坂さんをこの学校で最速でステージに立たせる方法だ。



「ついでに、当時はどんなやり方で演劇公演をやっていたのですか? って聞いたみたのよ。

 そしたら小道具班、大道具班、音響・照明班、そして出演者、主にこの四つの部門に分かれて製作をしていたらしい。

 もちろんこの中で一番、希望者が少なかったのはプレッシャーが半端ない出演者。元々そんな大人数はいらない部門だけど、どの学年も十人以下、多くても十五人くらいしか希望する人はいなかったそうで、

 定員オーバーで誰かが外れるなんてことはなかった。年によっては集会を開いて出演者やってくださいと先生の方から生徒にお願いしたくらいだ。

 ……演劇部は五人いる。あと五人くらいなんとかなるだろう」


「そんなことまで考えていたの……」


「ただ、これに関しては保坂がどれだけ本気で取り組んでくれるかにかかっているから、まだ先生に話はしていないし説得できるのは保坂しかいないと思っている。

 どうだ、どのくらいやってみたいと思っている? 保坂が全力出してくれるなら俺達も全力でサポートする所存だ」


「そんなの……やりたいに決まっているじゃない! なんだ、まさかそこまでやる気になってくれるなんて思いもよらなかった。私だけ熱くなって、周りはそれについていけないことになるもんだとばかり……」


「影ながらでも、保坂さんのためなら協力したいっていう一年生はそれなりに潜んでいる思うよ。だって僕達だってなんとかしてあげられないかなってこうして動いたのが何よりの証」



 あの保坂咲がステージに立って、本気の演技をする……観たくない人なんていないはずだ!



「男子達、なんかかっこいいね! 私も咲ちゃんがやる気なら大歓迎だよ」


「……今年の一年生は何人いる? その人達が全員、舞台作りに協力してくれるならもう万々歳な体制だよ! 分かった。私から先生に話してみる」


「いや、今回はバックに俺達もいるよ。そういう所で本気かどうかが判断されるからな」



 今日の川村はめちゃくちゃかっこいいぞ。



 今年の文化祭で一年生総出で演劇公演を企画するのはどうか? というアイディアは僕が出したのだが、川村の援護がなかったら押しの弱いものになっていたことだろう。



 川村の喋りはここぞという時にナイフのように鋭く、光る。保坂さんが川村を誘ったのはこの資質を嗅ぎ取ったからか。



「嬉しい。この学校に来て本当に良かった……」



 保坂さんが涙ぐんでいる。



 この学校に来て良かった——その言葉がまだ早いよ、保坂さん。



 秋の文化祭の後にその言葉をもう一度、聞かせてほしい。



 勝負はこれからだ。




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