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放置ゲー世界で二度目の転生をした俺が、忘れてた前世の力を取りに行ったら一億年分溜まってて今ヤバい  作者: コータ


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2/3

魔族と裏切り、一億年の輝き

 話はゼインが騎士達を助けた直後に遡る。イタメヤトゴシ村は大変な混乱に陥っていた。


 村の広場に全員が集まり、騎士達と村長が話を続けている。誰もが恐怖を抱えていた。


 村をとんでもない魔獣の群れと、それを従える強大な魔族が襲いかかろうとしている。その事実は彼らにとって重すぎたのだ。


 しかしここで女騎士団長であるミュウが、ひたすらに村人を鼓舞することで、どうにかまとまることには成功していた。


 彼女とて必死であった。辺境警備の騎士団は、半数以上が倒されている。


 救援を送ったが、いつ助けが来るかは分からなかった。その間にまた襲われたら、全滅する可能性が高い。


 仕方なく彼女は、村人達の協力を仰ぐ道を選んだ。


 元々ある村の壁を補強し、村門を閉める。守りを固めて籠城する作戦を選んだ。


 誇り高い騎士の中には、この選択を非難する者達もいた。


 ミュウと同期でありながら、団長に選抜されなかった男、ハーンズはその代表である。


「なんという意気地のない作戦であろう。伝統あるデイナコ騎士団が、村人に助けをこうなどと!」

「現実を見なさい。私達は先ほどの襲撃で、全滅していたかもしれません。敵はいくら戦力があるか分からず、私達は満身創痍。今は守りに入るべきです」

「ふん! お勉強ばかりしているから、このような真似を恥とも思わぬ人になるのでしょうな」


 ハーンズは以前より、自分より力で劣るミュウが団長に選ばれたことが許せなかった。感情の赴くままに言葉をぶつけようとしている。


 二人のやりとりを、村人達は唖然として眺めていた。騎士達はミュウに従う者達と、ハーンズのように非難する者に分かれている。


 村長は自分たちを守ってくれるはずの騎士が、決別寸前であることを察した。


 だが彼らよりも焦燥に駆られ、今にも身が張り裂けそうな者がいた。ゼインの幼馴染であるレーゼである。


「僕……やっぱり山に行ってきます」

「ダメだ! 今は危ない。村から出るんじゃない!」


 ふらりと広場から出ようとしたところで、両親や大人達が止めにかかる。


「でも……でも! ゼインが」

「あいつなら大丈夫だ。今まで何度も危ない目に遭ったって、平気な顔で帰ってきたじゃないか。もしかしたら山で隠れてて、ほとぼりが冷めたら戻ってくるつもりかもしれん」


 父の推測は確実ではない。だが、それでもレーゼは信じたかった。


 ゼインが魔獣に喰われていたら、ということを考えるだけで、頭がどうにかなりそうだった。


「もう結構だ。貴様のような腑抜けを、俺は騎士団長とは認めぬ。お前達、俺はこれより魔獣どもを一掃しに行く。ついてくる者はいないか」


 レーゼの心が張り裂けそうな間にも、騎士達のいさかいは続いていた。


 やがてハーンズは怒りを露わに、とうとう命令に背くことを決めた。


「私は王より、騎士団の指揮権を与えられています。逆らうつもりか!」

「今回ばかりは、王にも分かろうさ。臆病者を団長にしてしまった失敗をな。さあ、俺についてくる者はいないか。俺はこの侵略を叩き潰し、大いなる出世をする。共に成り上がりたいなら、この背中に続け!」


 この時、二人の騎士が率先して手を挙げ、ハーンズの後ろに続いた。釣られるようにそこに五人が続く。


「待て!」


 彼女の必死の声を、先頭を進む男は聞かなかった。


 魔獣を一掃すると宣言した騎士は、一瞬着いてきた騎士達を見て足を止めたが、彼女に従う意思がないことは明白だ。


 狼狽した団長を嘲笑うかのように、顔を歪ませてそのまま去っていく。


 村に残された騎士は八人。魔獣の数が明確に分からないなか、村人の不安は一気に高まる。


 ミュウも内心は同じだった。しかし、ここで少しでも弱気な顔を見せるわけにはいかない。


「村長、大至壁の準備を急いでください。我らは四方を固め、夜通し警備にあたります。絶対にあと数日、ここを守ってみせます」

「は、はい! みんな、準備するぞ」


 村人達は、今やミュウに従う他なかった。しかし、彼女が思うよりも村人は勇気がある。


 彼らもまた村にあるクワや棍棒といった武器を手に取り、何かあれば一緒に戦うとまで言ってくれたのだ。


 新人であり辺境警備を任された騎士団長は、その申し出が嬉しかった。仲間が二分される事態となってしまったが、今はできることをするしかない。


(なぜこんなに平和だった地区に、あれほどの魔獣の群れが)


 彼女の頭の中は疑問で溢れていた。その中で、一つだけ希望が見つかる。


「村長! 長老は何処にいるのです?」

「え? ちょ、長老でしたら、ご自宅に戻られたかと」


 彼女はそれを聞くなり、急いで彼の家に向かった。そして家に招かれるなり、先ほど自分たちを助けてくれたことについて、重ねて丁寧な礼を述べた。


 しかし、長老の反応はいささか奇妙であった。


「ん? 弓矢で? ワシが?」

「はい。差し出がましい願いではございますが、今一度ご協力を賜りたく」

「はあ。でもワシ、弓なんて持ってたかなー」


 首を傾げる姿を目にして、ミュウは戸惑っていた。


 そして、この裏声のような地声と、先程聞いた声が別であることにも気づいている。


「弓矢なんて、五十年くらい使ってないはずだけどなー」

「そ、そうでしたか。申し訳ございません。人違いのようです」


 彼女はこの時、自分達を救ったのが長老ではないことを知った。しかし村中どこを探しても、弓の名手など見つからなかったのである。


(あの声の主は一体……)


 深まる謎を胸に抱えつつ、ミュウは右に左に疾走し、元々村を包囲していた壁を強化することを急いでいた。


 この間にも、実は魔獣を目撃した村人がいる。しかも発見者は数名おり、どうやら周りを囲んでいるらしかった。


 しかし、まだ仕掛けてはこない。奴らもまた警戒しているのか、それとも作戦でもあるというのか。


 嵐の前のような静けさに、誰もが怯えを隠せなかった。


 ◆


 既に日が暮れ、夜の景色に変わり始めていた。


 村を出たハーンズ一行は西へと向かっている。より森の奥へ奥へと、悠然と歩を進めていた。


 ハーンズの機嫌を伺う者、魔獣の襲来に備え目を光らせる者、村から出たことを後悔している者など、騎士達の様子はそれぞれだ。


 先頭を歩くリーダーは、いつ襲撃されるか分からない恐怖など微塵も感じていないようであった。


 それどころか、声高らかに自らの武勇伝を語って聞かせ、いかに自身が優れているかを誇示したがっている。


 彼は名門伯爵家、グラナダ家の長男であり、やがては王族に取り入り国を手に入れようと企んでいる。


 野心家であり、かつ自尊心にあふれた男。学生時代には優秀な反面、弱い者への攻撃性の高さから、親や学園が扱いに困っていたという過去がある。


 彼にとって、いじめや暴力など日常であり、いつも自分は振るう側にいた。そして負け知らずの青春を過ごした。


 だから、わずかな出世の道で劣ったという事実に、怒りを抑えることができない。


「俺に言わせれば、あんなガキを団長にすることが間違いだったのだ。学園で飛び級していたというのも、親の力に違いない」


 もしミュウがこの発言を耳にしたら、騎士の中では温厚な彼女といえど剣を抜いたかもしれない。


 それだけの侮辱を口から撒き散らしながら、彼は迷わず進んでいる。


「あいつらの血の匂いくらい、俺には分かるのよ。ほら見ろ、鹿が食い散らかされた痕があるぞ」


 彼が指差した先に、鹿の死体が転がっていた。一頭や二頭ではなく、十頭以上は骨に近い姿で転がっている。


 驚くことに、草食動物だけではなく熊の死骸すらあった。転々と続く殺戮の後を、ハーンズは追いかけている。


 そして、森の中でやや開けた場所にやってきたところで、ふと足を止めた。


「どうやらお出ましらしいぞ」


 ハーンズは不敵に笑う。彼に続く騎士達は、慌てたように背中に預けていた銀の刃を引き抜いた。


 赤い血で作られたような、禍々しい存在が薄闇の中から一匹、また一匹と姿を現す。


 その後、ミュウ達は村の外からいくつもの悲鳴を聞いた。


 さらにはちらちらと姿を晒していた魔獣達が、一斉にこちらへと向かってきたことも知ったのである。


 ブラッドウルフが数十匹、村の南側に押し寄せている。


 その報告を受けたミュウは、残った騎士のうち二名を引き連れその場へと駆けつけた。


「状況は!?」

「い、今のところ大丈夫です。壁のおかげで」


 村をぐるりと囲むように作られた壁が、獰猛な獣の侵入を防いでいる。


 いくつか壊れかかっていた箇所もあったが、村人達が必死に応急処置をしたおかげで、簡単には崩壊しない。


 狼達は、壁を乗り越えては来れない。しかし、もしかしたらということもある。


「ここの見張りは重点的に行う。何かあったらすぐに報告しなさい」

「御意」


 ミュウに忠実な騎士の一人が敬礼を持って応える。彼女はこの一点だけを見ているわけにはいかなかった。


(これは囮かもしれない。魔族はずっと狡猾だし、きっと他から攻めてくるかも)


 救援が来るまで、まだ時間を要するだろう。王都との距離を考えれば、どんなに早くても三日、しかし普通に考えれば四日以上はかかるはず。


 村人達には伝えていないが、最悪一週間は持ち堪える必要があるかもしれない。


 それは気の重くなる思考であった。ミュウは不安を抱えながらも、必死に自分を鼓舞している。


 幸いにして、壁の補強と正面にある村門を閉めることには成功していた。時間が経つほど、こちらが有利になるはずである。


 わずかな希望がミュウの脳裏に浮かんでいたが、ここでまたひとつ騒ぎが起こる。狼の荒々しい咆哮と、遠方からの悲鳴が聞こえたのはこの時だった。


 誰の悲鳴かは分からない。しかし、自分のもとを離れた騎士の誰かであることは、すぐに理解できた。


 だが、理解しながらもミュウは愕然とした。もしかしたら倒してくれるかもしれない、という淡い期待が心の底にあったことも、また事実だった。


 村人達の恐怖もいっそう膨らんでゆく。


 しかし、それから獣達の動きは静まっていった。南側に押し寄せていたのが嘘のように、気配すら無くなっていったのだ。


 それから一夜が明けた。昼を過ぎてもなお、獣達の鳴き声も地を駆ける音も聞こえない。


 村人達の心に、わずかばかりの安堵が浮かぶ。騎士達もまた、仲間がやられたことは察しつつ、それでも生き延びる希望を見出していた。


 ミュウもまた希望を強くしたが、警戒を緩めず常に村の中を見回っていた。


 そんな折、彼女は不安げに公園のベンチに座っている者を見かけた。青く長い髪をした少女、レーゼである。


「どうしたのです? 家の中に入っているようお伝えしたはずですが」

「……すみません。ゼインのことが、気になってて」


 壁で守られているとはいえ、何が起こるか分からない。ミュウは女子供はしばらく家に隠れるよう指示を出していた。


 普段であれば、このように命令を破る者には、厳しい態度をもって望む彼女だったが、この時は違っている。


 ミュウは彼女の隣に腰掛け、話を聞くことにしたのだ。


「その名は、昨日も聞きましたね。友人ですか」

「はい。小さい頃からずっと一緒で、いつも僕の側にいてくれて。その、この前……大人になったばかりだったんです。村のしきたりで、大人になるための試練を受けに、山に行ったっきりで……」


 その後も、レーゼは辿々しくゼインについて話し続けた。ミュウはただ黙って聞いていたが、少女の瞳から溢れ出した透明の光に心を痛める。


 少年がどれだけ少女に慕われていたか、実は少ししか歳が違わない騎士にはすぐに分かった。


 恐らく、ゼインという少年は殺されている可能性が高い。その見解を伝える気にはなれず、ただ優しく肩に手を置いた。


「保証はできません。でも信じましょう。あなたの友人はきっと生きていると。私もそうします。この騒ぎが終わったら、一緒に探すのをお手伝いさせてください」

「ほ、本当ですか。本当に」

「はい。案外、平気な顔で帰ってくるかもしれませんよ」

「きっと、きっとそうです!」


 レーゼは少しだけ元気を取り戻していた。気がつけば立ち上がり、青空に希望を見出しているようだった。


「ゼインはとっても運が良いんですから。それに、すごく強いんです。村で一番狩りが得意で、弓矢が魔法みたいに当たるんです」


 ミュウはしばらく、穏やかな顔になっていた。しかし、弓矢のくだりを耳にした時、ふと心当たりを思い出した。


「……弓矢? そんなに上手なのですか」

「はい! まるで、動物がどこに動いているか分かるみたいに、一回も外さないんですっ」

「……それは凄い」


 まさか、と騎士団長は思わずにはいられない。先日魔獣に襲われた時、助けてくれたのは弓の名手だった。


 もしやあれが、ゼインという少年だったのではないか。そう頭の中で考えを巡らせていた。


 だとしたら、生き延びている可能性はある。彼女には自分達を助けてくれた弓使いが、ただ者とは思えなかった。


「レーゼ。実は私は、この前——」


 ミュウはゼインのことを伝えようとした。しかしその時、只事ではない叫び声が、村中に鳴り響いたのである。


「何かあったようですね」

「あ、あの」

「私は向かいます。あなたは家にいなさい」


 体を震わせて固まったレーゼを残し、ミュウは叫びが聞こえた方向へと駆けて行った。


 現地に向かった彼女が目にしたのは、決して起こってはならない事態そのものだった。


 なんと村門が開かれ、ブラッドウルフの群れが押し寄せている。


「なんだと!?」


 ミュウは突然の状況に面食らいながらも兜をつけ、槍を取って応戦に出る。反射的に体が動いていた。


 騎士である彼女にとっては、いつであろうとも戦場の心構えがある。しかし村人たちはそうではない。


 逃げ惑う者と、混乱に陥りながらも武器を取り戦う者に別れていた。だが応戦する者は、意外にも勇気に溢れている。


 すぐに他の警備に当たっていた騎士達もやってきて、村はあっという間に戦場と化した。


 最も堅牢なはずの村門から、なぜ狼達は攻め入ることができたのか。その謎が分からぬまま、ミュウは必死に槍を使い、獰猛な怪物を一匹ずつ倒していった。


 ギリギリの死闘の最中、彼女はふと思う。森の中で戦った時よりも、狼達は弱く隙があるように感じられた。


(この村の中なら、私達のほうが地の利があるということか。奴らがこの場に慣れる前に決めなくては)


 長引くほどに被害は増える。女騎士の槍は冴えていた。目前に迫りくる一匹に向けて、渾身の一撃を見舞う……その瞬間。


「がっ!?」


 不意に後頭部に衝撃が走り、声を漏らしながら転倒してしまう。想像もしていない事態に、つい槍を手放してしまった。


 そのまま後ろにいる何かが、猛烈な殴打を繰り返してきた。兜が粉砕され、長い金髪が舞い上がった。


 ミュウは呻きながらも、攻撃してくる相手が獣ではなく人間であることに気づいて戦慄した。


 この魔獣に侵略されている危険すぎる状況で、裏切りなどを企てる者がいるなどと、考えもしなかったからだ。


 やがて相手は自分の前に回り込んだらしい。頭を踏みつけられ、彼女はまたも呻くしかない。


「無様な姿よ。やはりお前は騎士団長の器ではない」

「あ、あなたは。まさか」


 踏みつけられながらも、顔を捩らせて見上げた先に、よく見知った顔があった。森に消えて行ったはずのハーンズである。


 しかも不思議なことに、この男は狼達に襲われない。


 ミュウがブラッドウルフに足を噛まれそうになると、ハーンズは「まだやめろ!」といいながら足蹴にする。すると魔獣はおとなしく別の獲物へと走って行った。


「どういうことだ! これは何の真似だ」

「お前はどの道死ぬ。最後にいい話をしてやろう。俺はなぁ、ある男と友達になったのさ。そいつは俺のために、自分が手に入れた魔獣を犠牲にしてもいいんだってよ。俺が村の危機を救った英雄となり、出世した時に褒美が欲しいんだとさ」


 ふと、ハーンズの顔がどこか遠くに向けられている。足音が聞こえた。うつ伏せのまま視線をやれば、ボロを纏った見覚えのない大男がいる。


 赤いフードに包まれた顔は、ここからでは見えない。二メートルを楽に超える巨体と、青黒い皮膚が印象的であった。


 男は右手に何かを抱えているようだが、この時はよく分からなかった。


「魔族か……! ハーンズ、貴様! 魔族に魂を売ったな」


 言うなり、自らの頭にかかる靴の圧力が増した。声が出せない。スラリと鞘から剣が抜かれる音がした。


 この異常な状況で、初めて魔獣使いが口を開く。


「こいつ、喰っていいか」

「ダメだ。このエセ騎士団長の死体は、俺がバラバラにするんだ」

「違う、こっち」

「ん?」


 何の話をしているのか分からない。しかし、今は隙が生まれているはず。ミュウは腰に納めていたナイフを、静かに引き抜いた。


「ああ、その青い髪の子供か」


 不意に放たれた言葉に、反撃を試みる手が止まる。


「や、やだ! やだ!」


 この声はレーゼだ。今や青髪の少女は、魔獣使いに首根っこを掴まれて持ち上げられている。


 首筋の近くに、青黒い男の犬のような歯があった。


「お前は人肉が好きなんだったな。好きにしろ」

「では……いただく」

「や、やめろ!」


 この時、ミュウは叫ぶことが精一杯だった。ナイフで足を突き立てるよりも、どうレーゼを救うべきかで頭がいっぱいになる。


 しかし、この窮地を救うことができる者はいない。


 いないはずだった。


「ぜ、ゼイン……ゼインっ!」


 レーゼの叫びが響く。それは死に際の悲鳴か。もはや止められないはずの悲惨な戦場で、ミュウの思考は止まった。


 なぜか少女の体が青白く光り、ハーンズと魔獣使いが体をよろめかせた。


 青白い光の中には、何かの文字が浮かび上がっている。


 ミュウはその輝きを目にして、この数日で一番の驚愕を覚えた。それはハーンズや魔獣使い、他の面々も同様であった。


「まさか! 光の印……」


 ハーンズの動揺が目に見えて伝わってくる。


「こいつ! 殺す! 殺す!」


 魔獣使いは、先ほどとは違い、殺気に塗れた瞳で少女の首筋に噛みつこうとした。


「く! やめろぉお!」


 ミュウはどうにかして、レーゼを救いたいと思いながらも、新たな何かにまたしても動きを止めてしまう。


 彼女だけではない。今まさに白い首に噛みつこうとしていた魔獣使いも、ハーンズも、騎士達も、村人達も……ブラッドウルフの群れでさえ、皆が一様に空を見上げたのだ。


「あ、あああ……」


 ハーンズが怯え、後ろによろける。空を覆うような光が、こちらに迫っていた。


 魔獣使いはフードの奥の目を丸くして、それに恐れをなした。


「悪魔……! 悪魔ぁ!」


 やがて光は衝撃を持って大地に降り立つ。


 どのような落雷も、どのような地震も、これほどの衝撃を人々に与えたことはない。


 それは白き光と稲妻に包まれ、人智を超えた力の降臨を意味していた。

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