九話
「ただいまー。今どんな感じ?」
席に戻るなりライチは何事もなかったかのように、いなかった間にどこまで状況が進んだのかクラスメイトにでかい声で聴き始める。そんなライチの横で俺は湿ったタオルを頭に被りできる限り存在感を消すように努めていた。
「あれ?お前らどこ行ってたの?」
二人三脚が終わって席に戻ってきていた清信と山村が至極当然の疑問を投げかける。
「トイレ行った後、水遊びしちゃった。まぁきひろしか濡れてないけど」
俺が口を開くよりも早くライチが答える。その答えに二人は、何をやってんだと俺たちを笑う。
「待って?お前ら俺らの活躍見たよな」
少ししてから山村が思い出したかのように口を開く。どうやらなかなかに活躍したらしいがもちろん見ていない。
「みてない。なんかあったの?」
ライチが、てへっとでも言わんばかりのテンションで答える。山村たちはお怒りのようだったが、武勇伝を語るように事細かに説明してくれた。
まぁ、要約すると二人がアンカーで、逆転勝利をしたらしい。正直どうでもよかったが二人のおかげで俺に対しての視線は自然となくなっていった。
午前の部が終わる頃には俺も、俺を取り巻く空気もいつも通りのものになっていた。
お昼休憩に入る前に一度、各組の得点と順位が発表される。俺たちのクラスの順位は二位だったが、一位との得点差は五点でクラスの人達は「え⁉絶対勝てるよこれ」「勝つしかなくね?」などとさらにやる気を燃やしていた。
お昼休憩はある程度の自由が与えられていて、外の応援席で食べる者や、教室で食べる者などがいた。かくいう俺たちは、体育館で四人で輪になって食べていた。
「きひろちょっとちょーだい」
案の定ある程度食べ進んだタイミングでライチが俺の弁当に箸を伸ばし、卵焼きや唐揚げなどを口に運ぶ。
「うーん、やっぱきひろのつくる卵焼き俺大好き!」
と、卵焼きを頬張りながら声をあげる。その言葉とライチの表情に緩みそうになる頬を抑えて、誉め言葉を丁寧に受け取る。
「今日は多めに作ったから、好きなだけ食べな。」
その言葉にライチは目を輝かせ、さらに箸を伸ばす。
「え、俺にも一個ちょーだい」
俺の言葉を聞いていつもは見ているだけの山村たちも俺の弁当に箸を伸ばす。それを見たライチが、「あ、おい俺の分だぞ」なんて横槍を入れる。
そんなこんなであっという間にお昼の時間は終わった。




