表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

八話

 そんな俺が恋というものを体験したのはそのころだった。

 学校も終わり予定のない俺とライチはサッカーボールを持って、いつものように公園で遊んでいた。いつもなら他の友達もいて、サッカーをしたり鬼ごっこをしたりと、泥だらけになるのも気にせず遊んでいたのだが、その日は俺とライチの二人だけで遊んでいた。

 日も落ちかけ、あたりがオレンジ色に染まりだした頃、そろそろ帰るかとボールを取りに行ったライチに言おうと思い口を開きかけた時、背中から「わっ!」という声ともに、温かい何かが抱き着いてきた。

 ライチからしたら気の抜けてる俺をちょっと驚かしてやろう位の軽い気持ちだったんだろう。でも俺にとっては一生忘れられない体験となった。

 ライチに抱き着かれるなんて特段珍しいことでもなくいつもならきっと、「びっくりしたぁ」なんてありきたりな反応をしていたんだと思う、けどその日は違った。ドクンと大きく跳ね上げた心臓に、感じたことのない高揚感にも似た何か。背中から伝わってくるライチの少し高い体温や、テンポよく跳ねる脈拍、耳元で聞こえる少し荒い息遣い、いつもなら気にならない、いや気づかないような些細なものまでが俺の五感を支配していた。

「きひろ?」

 動かなくなった俺に違和感を覚えたのか、心配したような声色で顔を覗き込んでくる。ライチの呼びかけに我に返った俺は、何とか取り繕わなければと思い咄嗟に口を開く。

「あ、ごめん。めっちゃびっくりした」

「だいじょぶか?きひろ」

「え?何が?それよりそろそろ帰ろうぜ」

 今思うとだいぶ無理があるように思えるが、ライチはそこに踏み込んでくることはなかった。

 家に戻ってからもさっきの出来事が頭から離れることはなかった。背中にはいつまでもライチの体温が残っていて、耳元ではあの荒い息が聞こえてきた。ご飯中も上の空で母さんには心配をかけた。その夜は体が火照ってなかなか寝付けなかった。

 その日俺はライチが恋愛対象として好きだということに気づき、これは普通ではないんだなと言うことにも気づいた。隠さなければいけないという思いから、その日以来俺は少しだけライチと距離を置くようになったし、ライチも察したのか、今までのような距離感で接してくることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ