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七話

「あー、えーっとタオルある?」

 ライチは蛇口から流れている水を止めると、教室からタオルを持ってくる。

「向こう持って行ってないのかよ。ありがと」

 ライチのいつもの感じに調子が狂う。タオルで頭を覆うと、ふわりとライチの匂いが広がる。余計なことを考えないようにガシャガシャと髪の毛を拭く手が荒くなる。

 ただ俺のことを待っているだけのライチが少し不気味に感じて、訪ねてしまう。

「さっきのこと、何も聞かないのかよ」

 いつもは聴き手が不快感を覚えないように、できるだけ優しい声を意識して喋っていたけど、今回だけはそんなことはできなかった。投げやりになってしまった俺の問いに、ライチはきょとんとした様子で答える。

「何で?誰にでも深堀されたくないことってあるだろ?」

 ライチは俺との関係が変わることのないものだと、信じて疑わない様子で続ける。

 「それに、何が起きても今までと変わらないでしょ?」

 ライチはいつだってこうだった。俺に対して、いや他人に対して関心が無いというか、他人との線引きがうまいというか...。だからこそ、人とのコミュニケーションにおいて、外れを引かない。

 俺が中学に上がったばかりの頃もそうだった。


 物心つく頃には俺の隣にはライチがいた。親に入れられたサッカークラブで、同年代の中では頭一つ抜けて上手かったライチは上の年代のチームに入れられてサッカーをしていた。

 ライチが活躍しているところを初めて見た俺は、心躍るような、筆舌に尽くしがたい躍動感に襲われ気がつくと試合中はボールではなくライチを目で追っていたし、試合が終わってもしばらくライチのことを見つめていた。これが恋心だと気づいたのは中学に上がる前だった。

 人懐っこいライチと仲良くなるのには大した時間はかからなかった。むしろ俺がクラブチームに入って一番最初に仲良くなったのがライチだった。

 お調子者でいつも何かしらのミスをするライチと、それをカバーする俺という形で、サッカーでも学校でもセットとして扱われるようになった。だから俺たちはいつも一緒にいた。幼かった俺たちはよく手をつながされたりしながら、ほぼゼロ距離でいることもおかしくなかった。

 小学校高学年に上がっても同じような距離感で過ごしてきた。そのころ俺の周りではライチを筆頭に、どの女子が可愛いなどと言うよくある話題で盛り上がっていた。俺もライチと一緒にその輪に入ってこそいたが、どの話の内容も一切の共感ができないまま適当な相槌を打っているだけのことが多かった。

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