二十八話
結局来てしまった。
あの後、自室に戻ろうとしたがライチに引き留められてついてきてしまった。まぁ。可愛かったからいいか。
物思いにふけっている俺を現実に引き戻すかのように山根が口を開く。
「そういえばらいち君はどうして潮田君に会いに来たの?」
とたんにライチの眼が泳ぐ。
二人とも同じような要件で俺のとこまで来たのだろうが、お互いがお互いに気づかれまいとしていたから話し出せないのだろう。
「エーット、アー。アソボウカナッテ。」
無理があるんじゃないのか、と思わず突っ込みかけたが山根はそれを嘘だと理解した上で納得したようだ。
そんなやり取りがまだ新鮮なうちにテーブルに料理が運ばれてくる。
もうすでに運動をしなくなり一日の消費カロリーが少なくなった俺たちと違い、部活、自主練で毎日のように体を動かしているライチの前には二人前くらいの料理が運ばれてきた。
山根の隣で料理を頬張るライチは、俺の横で卵焼きを頬張っていた時と何一つ変わっていなかった。それが何だか悲しくてでもどこか嬉しかった。
結局あのままふんわりとした雰囲気のまま食事を終わらせ、あいつらが話したかったであろう内容については触れることなく終わった。
全く迷惑な奴らだ。ひとりだったら十分もかからない昼食に二時間近く時間が取られてしまった。二時間もあれば少なくとも一教科は丸付けができている。
「受験生から大切な時間を奪いやがって」
そうこぼす反面、表情はほのかに緩んでいた。
受験勉強にいじめ騒動、大きな失恋。半年もしない間にこんだけの出来事があったんだ。何一つ片付いていないし、受験に関してはこれからが本番だ。でも急激な変化に俺も切羽詰まっていたのだろう。久しぶりに何も気にせず笑い合うことができた。
『今日はいい息抜きになったろ?』帰り際のライチの言葉を思い出す。
「全くその通りだったな。」
そうこぼし俺は説きかけの問題集に向き合う。
もう俺のものでなくなったあの笑顔を忘れるように。涙があふれぬように。ひた隠してきた思いを忘れるように。
こうして俺の儚い青春は幕を閉じた。
数年後俺のもとに一通の手紙が届いた。内容は結婚式の招待状。
もちろん俺は【参加】に丸を付けた。なんたって俺の一番の親友のハレの日だから。
————誓います。」」
白いタキシードに身を包んだライチとウエディング姿の山根の誓いのキスを見ていると胸の奥がじんわりと熱くなる。
桜の散る空の下、気づくとライチと二人きりになっていた。二次会で離席した俺を追ってきたのだろうか。
「今日は来てくれてありがとな」
久しぶりに聞くライチの声はあの時のやんちゃな感じとは違い、落ち着きのある”男性”らしい声だった。きっといろんなことを経験したのだろう。
「改めておめでとう。」
久しぶりの会話はなんだか気恥しくそれしか返すことのできない俺にライチは続ける。
「こうして二人で話すなんて久しぶりだな」
きっと高校の時以来だ。
少しの静寂が包み込んだ後に思わず口を開いてしまう。きっと少し酔っていたからだろう。
「俺、ライチのことが好きだったんだぜ」
ライチは少しだけ驚いたような顔をしたがすぐに少しだけはにかんで、申し訳なさそうに口を開く。
「ずっと気づいてたよ」
ここまで読んでくれてありがとうございます。
小説を書いて投稿するのは初めてだったので、拙く読みづらい文だったかと思います。
しかし楽しく書くことができたので、これからも小説を書きたいと思います。
もしよければ次回作の方も読んでくれたら幸いです。
重ねてになりますが、ここまでのご愛読ありがとうございました。




