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二十三話

 そのまま帰ることなんてできず結局俺は、気が付くと橋の下に座り込んでいた。いつの間にか日は落ちかけ、オレンジ色の光が俺の半身を照らしていた。

「はぁ。何やってんだろ。早く帰らねぇと。」

 帰ろうにも体が動かない。あまりの倦怠感にバックに手を伸ばすこともできない。きっと俺の帰りが遅いことを梨香たちが心配してるかもしれないし、お腹を空かせて待っているかもしれない。でも立てない。体が動かない。帰って夕飯を作らなきゃいけないのに、梨香たちの宿題を見てやらなきゃいけないのに。そんなことを考えてると、ぽつぽつと雨が降り始める。

 夕立だ。

 あっという間に本降りになり俺は橋の下に閉じ込められてしまった。ここから動かなくて良い理由ができてしまった俺の体は本格的に動くことをあきらめてしまった。


 ――もしかして好きな人に理想押し付けて現実見失っちゃうタイプ?」

 ――きひろが見てたのは俺じゃなかったんだな」

 違う...。違う。俺はちゃんとありのままのライチを見て、受け入れていた...。

「本当に?ライチ君のこと見えた気になっていただけでしょ?」

 黙れ。そんなことない。俺は。俺の目には間違いなくライチが――。

 

 スマホの通知で目が覚める。

「寝ちゃってたのか」

 どうやら雨宿りをしている間に寝てしまっていたようだ。すでに雨はやんでいて、空には綺麗に欠けた月が昇っていた。夜空は嫌に澄みきっているのに、雨の後に残る独特の空気は俺の肌を撫で、嫌な記憶を想起させる。

「そういえば今何時だ?」

 スマホを開くとそこには二十時を示す時計と、大量の通知が表示されていた。

「やべ。早く帰らねぇと」

 両親に一言だけ連絡をして、俺は雨上がりの星空の下を走り出した。

 家に着くと玄関では梨香が泣いていて、それをなだめる両親と望海が待っていて、俺がドアを開けた途端梨香が俺に飛びついてきた。

「うわああああん!にいにのばか!」

「ごめんな。心配したよな」

 飛びついてきた梨香を優しく撫でながら心配そうな両親をよけて部屋に寝かしつけに行った。

 梨香が寝た後、両親がリビングで待っていたが俺に何かを言ってくるわけでもなく、ただ一言『ごめんね』とだけ告げ、深く追究することなく自室へと帰っていった。この「ごめんね」にどんな意味が込められていたのかなんて、親になったことのない俺には到底理解ができなかった。

 その日はもう何も考えることができず、すぐにベットに潜り込んだ。

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