二十一話
朝、スマホの通知で目が覚める。
スマホの画面にはライチではなく山根の文字。
「はぁ。最悪な目覚めだ。」
『潮田君おはよ~(^▽^)』
『じゃあ今日はここに二時くらいに集合ね~』
と言う文字の下にはカフェのURL。俺は了解の意を示したスタンプで返し、予定の時間までは弟たちの面倒を見ながら時間をつぶしていた。
俺はあまり人を待たせるのが好きではないので、いつも待ち合わせの五から十分程早く行くのだが、俺が付いた時にはすでに山根は、少し大きめのパフェを半分ほど食べ進めていた。
「なんなんだあいつほんとに」
恐る恐る席に足を運ぶ。俺を席まで案内してくれた店員さんに、コーヒーを一つ頼み山根との会話を始めた。
「夏休み前にあんな事俺に言っといてどういう風の吹き回しだよ」
「あれはぁあれだよ。ほら」
俺の当然の問い掛けに山根は適当にお茶を濁す。
「そんなことより、私は今日潮田君と仲良くなりたくてこうしてるの」
こいつはいつも、こんな小学生でもするかどうか怪しいコミュニケーションを使ってきたのかと思うと涙が出そうになる。
「やっぱりお互いライチ君とのつながりが深いじゃん?だから仲良くするべきだと思うの」
山根は念入りにライチのためにと押してくる。こいつは本当に何を考えているんだ?わからない、こいつの思考回路の根っこのところからさっぱり理解不能だ。
「俺は正直お前みたいな得体のしれない奴と仲良くなんてできそうにない」
俺は正直にそう告げる。その答えがわかっていたかのように山根は続けて口を開く。
「私も正直彼氏のこと狙ってるような人と仲良くするのは気が引けるけど、でもその方がライチ君が嬉しそうにするんだよ?」
山根の中で俺が完全にライチを大好きな人間になっていることにかなり大きな疑問があるが、まぁ間違ってもいないので触れることなく会話を進める。
「あのなぁ。ライチになんて言われたかしらねぇけど俺らがどういう仲だろうとライチは興味ねぇだろ」
俺の言葉を遮るように山根は口を開く。
「幼馴染とか言ってる割には、ライチ君に対する解像度が高くないんだね。もしかして好きな人に理想を押し付けて現実を見失っちゃうタイプ?」
その言葉に完全に頭にきた。公共の場でこんなことは大人げないと思ったが売り言葉に買い言葉で俺の口から山根を貶す言葉が次々と出てくる。
「お前ホントに人とコミュにケーションとってこなかったんだな。お前を見てると憤りを覚えるよ。お前みたいなやつにコミュニケーションを学ばせる場を用意できなかった社会構造に対して」
俺はその言葉の勢いのまま、届いたコーヒーを飲み干し、ポカンとした表情の山根にお金を置いて店を出てしまった。




