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二十話

 なんだよあいつ。せっかく人が手を貸してやろうと思って声かけてやったのに、そんなんだから三年たっても仲の良い友人一人できないんだ。

「はぁ。どうしたもんか」

 ライチに今のことを言ったら俺が山根に何されるかわかったもんじゃない。山根のあの目は常軌を逸していた。思い出しただけで背筋が凍る。

 いやそもそも俺は関係ないじゃないか。山根がいじめられて学校に来なくなってライチと別れたらそれはそれで御の字じゃないか。俺は別に主人公のような正義感は持ち合わせていない。どちらかと言うとただの偽善者だ、ライチが幸せそうにしていて、あわよくばその隣に俺がいることができればそれ以外がどうなっていようと知ったこっちゃない。

 でも、ライチが俺に言ってきたんだ。不安そうな声で俺を頼ったんだ。助けてやらないとライチのために。

 「はぁ、仕方ない。高橋の方を調べるか。あいつ嫌いなんだよなぁ」

 どうするか。直接「お前山根に嫌がらせしてるだろ」なんて言えるわけないしな。うまいこと現場に居合わせるしかないか。

 それから何とか突き止めようと目を光らしていたものの、タイミングよく居合わせるなんてことは起きず、何もできないまま夏休みが始まってしまった。

 結局ライチの方も何も進展はなかったようで、ライチの中ではいじめなんてないものになっている。

 ライチがこの件に関心を無くしたのは余計な問題が起きなさそうでよいことだが、おそらくこの件の原因が蚊帳の外にいるのはなんだかなぁという思いはありつつも、夏休みが始まった以上俺にできることは一旦なくなってしまったのだ。

 それからというもの、例年通りであれば夏休みの課題を教えてほしいとライチが家に来るが、今年は山根に教えてもらうなんてほざいていたので俺は一人で弟たちの面倒を見ながら、自分の課題に向き合っていた。

「しかし、ライチが居なくなっただけで俺の夏休みはえらく静かになったな」

 それだけライチの存在は俺にとって大きかったのだ。

 不意に来たスマホの通知に俺は握っていたシャーペンを落とす。

「誰だいきなり」

 落としたペンを拾いながらスマホに目をやると、一つのメッセージに声が出る。

 『潮田君明日時間ある?』

 まさかの山根からの連絡に、たくさんの疑問が頭を駆け巡る。あんな感じのやり取りした後、要件不明の連絡してくるなんてどういうことだ?

 メッセージに既読をつけることなく考え込んでいると、追加のメッセージが届く。

『私たちやっぱり仲良くしておくべきだと思うの』

 ますます意味が分からない。

 しかしこのチャンスを逃すわけにはいかない。山根がどういう人間なのか。いじめの件についてもしっかり調べられる。

『明日なら一日空いてる』

 と、一言だけ返し俺は再び課題と向き合った。

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