二話
夜遅くまで仕事をしている両親の代わりに、朝食を作るのは俺の役目だ。リビングのテーブルでは、すでに席についた、梨香と望海が朝食が出来上がるのを待っている。出来上がったころに起きてきた両親に運ぶのを手伝ってもらい、全員で食卓を囲む。
「いただきます」
小学校のイベントや宿題の有無を二人に聞く両親や、聞いて聞いてと、学校での出来事を話す梨香とクラブ活動での出来事を話す望海。仕事で帰ってくるのが遅く、なかなか家族そろって落ち着ける時間がない分、朝の全員がそろう時間を両親はとても大切にしているし、望海と梨香も楽しみにしている。
「希拓、いつも色々ありがとね。本当は私たちがするべきなんだけど…」
母さんは、いつも申し訳なさそうに俺に話しかける。
「大丈夫だよ。父さんも母さんも遅くまで仕事頑張ってくれてるし、俺にできることは手伝わせてよ。」
いつも本心で返す。俺たちのために両親が仕事を頑張っていることを、自分でお金を稼げるようになってからしっかり理解したし、過酷なスケジュールの中で家族で過ごすための時間を作っていることを、俺は知ってる。
それに俺は孫の顔を両親に見せてやれなさそうだから、そこじゃないところで親孝行をしていきたいと思っているから。
「希拓は、しっかり者だなぁ。父さんは嬉しいよ」
横で聞いていた父さんが、頷きながら会話に混ざる。
「親孝行だよ。俺が今できるのはこれくらいしかないし」
「本当にいい子に育ったなぁ。父さん泣きそうだよ」
と、ふざけている父さんを横目に母さんが口を開く。
「私たちは、あなたたちが元気に過ごしてくれるだけで充分幸せなのよ。それが一番の親孝行だからね。」
「梨香元気~!」
と、梨香が会話に入ってくる。途端に賑やかな空気に食卓が包まれる。
「ごちそうさま」
と俺は一足先に席を立ち、学校に行く準備を済ませ、自分の弁当と望海の間食を作り、洗い物始める。
その間に両親は、一年生でまだ慣れない梨香の準備と望海のクラブ活動に行くための準備を手伝いをしている。
洗い物が終わるころに、スマホにライチからのメッセージが届く。
『今日ってなんか特別な持ち物あったよな。なんだっけ?』
『体育祭の練習でハチマキ使うぞ』
『ハチマキね。サンキュ!』
こんな何でもないやり取りに笑みが今こぼれる。慌てて誰にも見られていないかを確認し、表情を整える。準備していたカバンを背負い、家を出る。
「行ってきます」
家族みんなの声で行ってらっしゃいと元気に送り出してくれる。




