十九話
「じゃあな。また明日」
早めに身支度を終わらせ、ライチたちに別れを告げる。あまり山根といるところを人に見られたくないから、いつもより急ぎ足で校舎を出てロータリへ向かう。そこにはすでに山根がいて、俺のことを認識すると俺に向かって手を振ってくる。
それを無視して声をかける。
「早いとこ帰ろうぜ」
俺は足を止めることなくそのまま校門へと向かう。
「ちょっと待ってよ。レディファーストは?」
「知るか。ライチに求めろ」
なんでこいつこんな陽気なんだ?この間のあれは何だったんだ?色々な疑問が頭の中を錯綜するが、そんなことは正直どうでもいい。校門を抜けしばらくして周りに学校の奴らがいないのを確認してから、俺はゆっくり口を開く。
「お前、高橋から嫌がらせ受けてんのか?」
俺のその言葉に山根は足を止める。
車通りの少ない道に蝉の声が響く。夏を迎える生ぬるい風が首元を撫でる。一瞬だけ山根が表情を歪めたように見えた、瞬きをするとそこには見馴れた嘘くさい笑顔を張り付けた顔があった。
「そんなことないよ。高橋さんはライチ君の元カノだからね。いろいろ聞いてくうちに仲良くなったんだよ。」
嘘に決まっている。高橋はプライドが高く、自己中心的で相手の不幸こそ最も幸せだというタイプだ。そんな奴が自分の元カレのことについて現在進行形で付き合ってるやつに話すわけがない。
ここで山根と向き合って初めて気づいた。こいつ垢抜けてる。ライチと付き合う前まではメガネをかけ、ザ・優等生って感じだったのに、瞳から唇に至るまで「私は可愛い」と言う自信に満ちている。印象に薄かった今までの山根は消え去り、いかにも男の好きそうないや、ライチの好きそうな「カワイイ女の子」になっていた。
俺が何も言わずに黙っていると、山根はあいもかわらず嘘くさい笑顔のまま口を開く。
「何で関係ない潮田君がこんなこと聞くの?」
「私知ってるよ、潮田君私のこと嫌いだよね?正確にはライチ君と付き合っている私か。」
「は?」
山根の顔から張り付いていた笑顔はいつの間にか消えていて、無機物のような冷たい表情だけがあった。
見たことのない表情と、不意を突くように俺のキモチを見透かされたことに言葉が出ず、開いた口から必死に反撃の言葉を出そうと必死に頭を回していると、続けるように山根が口を開く。
「潮田君ってライチ君意外に興味ないよね。なんて言うかライチ君とその他みたいな世界に生きてるよね」
「今俺の話は関係ないだろ。適当なこと言ってないで本当のこと話せよ」
やっと出てきた言葉はあまりに単調で、簡単に崩せてしまいそうなものだった。
「まぁいいや。でもライチ君には何も言わないでね」
それだけを言って山根は動けなくなった俺を置いて、そのまま帰っていっ




