十八話
それからしばらくして、視界に山根が入った時は何となく目で追うようなっていた。そんな日々の中、決定的な瞬間を見たわけではないが、実のところそれっぽい場面は何度か見かけていた。嘘くさい笑顔をした山根がライチの元カノである高橋ひなに、特別教室やトイレに連れ込まれている場面を目撃したことがある。それに対して特段何かアクションを起こしたことはもちろんなく、いつも決まって何事もなかったかのように視線を逸らすのだった。
高橋ひな。ついこの間までライチと付き合っていた女だ。風の噂によると、ライチに嫌なところがあったから振ったというわけではなく、単に飽きたというところだったらしい。そんなつまらないことであの女はライチを傷つけたのだ。使い古したおもちゃを捨てるかのようにライチを振ったのだ。
そんなことをしたくせに今度は、自分の捨てたおもちゃが楽しそうにしているのが気にくわないのか、はたまたちょうどよい新しいおもちゃ見つけたとでも思っているのか、まあなんにせよ山根が対象であろうと気持ちの良いものではなかった。
しかし、どうしたものか。この件をライチに伝えたとしてそれが、良い結果につながるようには到底思えない。そもそも山根がライチに相談していなことが不自然なのだ。「心配をかけたくない」「面倒ごとに巻き込みたくない」と言えばそれまでなのだが、ほかに頼れるようなつながりがない山根が、最大の味方となったライチを使わないのが理解できない。
いじめをただ眺めているだけなのもなんだかよい気分になれず、思い切ってまずは山根の方に直接聞くことにした。
都合の良いことに今日は、ライチたちは部活で俺は一人で帰る予定だったから、山根の連絡先にメッセージを送った。
『聞きたいことがある。今日帰り一人か?』
送った直後に既読が付きすぐに返信が返ってきた。
『一人だよ~。もしかして帰りのお誘い?』
なんだこいつ、相手の顔が見えてないと陽気になるタイプか?まあそんなことはどうだったいい。
『端的に言えばそうだな』
『おっけ~。ロータリーのあたりで待ってるね』
これである程度話の流れが追えるだろう。何事も憶測と決めつけで動くべきじゃないからな。




