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十五話

 後は帰るだけ。今日はライチたちは部活があるし、いつも通り一人で帰るだけだ。

「じゃあな」

 別れを告げて帰路につく。背中から聞こえる賑やかな声を聴きながら、今日の献立を考える。

 ふと、背中から駆け寄る一つの足音を感じて振り返る。ライチが忘れ物でもしたのかなんて呑気に考えている俺の予想を裏切るがごとく、そこに立っていたのは山根蒼衣だった。

「潮田君だよね。一緒に帰らない?」

「は?」

 思わぬ人物からの思わぬ提案。おそらく今世紀最大に間の抜けた声が出たと思う。しかし俺はすぐに訝しんだ。当然のことだ。親友の彼女から付き合った翌日に、一緒に帰ろうと提案されたのだ。誰だって怪しむにきまってる。そんな俺の心境を察したのか、山根蒼衣が口を開く。

「あぁ!まって、違うの。その、松村君のこと教えてほしいなぁって」

「ほ、ほら。潮田君って松村君と昔からの友達だって...聞いたから」

 身長の関係もあるが、明らかに意図してるであろう上目遣いや、尻すぼみになっていく声が、俺の嫌悪感や警戒心を逆なでする。

「いやに決まってるだろ。何も知らない奴らに変な噂流されたくないし、それでライチを傷つけたくないし。」

 当然のごとく俺は断る。向こうからしたら思い人のことをよく知っている友人かもしれないが、俺からしたらライチを奪い取っていった女狐だ。何一つライチのことなんか教えてやるもんか。

 それでも山根は食い下がってくる。

「そこを何とか!」

 緊張しているのか裏返った声でかつ、でかい声で俺に頭を下げてくる。声を聞きつけた野次馬たちがなんだなんだと覗きに来る。

「お!二人とも何してんの?」

 なんともタイミングの悪いことにライチが野次馬の中に交じっていた。最悪だ。なんて説明しようかなんて考えていると俺よりも先に山根が少し甘めに声をあげる。

「あ、松村君!今潮田君に松村君のこと聞こうと思ってて」

 こいつ猫被ってやがる。ライチの前でワントーン高くなった声に無性に腹が立つのを抑えて、落ち着いた声で俺も口を開く。

「帰りながらライチのこと教えてほしいなんて言ってくるんだ。でもライチは嫌だろ?」

 嫌だっと言ってくれ。そんな俺の思いはライチには届かず、少し喜ばしそうにライチはこたえる。

「きひろなら大丈夫だよ。いろいろ教えてもらいなよ。」

 にこやかに、そして爽やかなライチの笑顔を俺は本気でぶんなぐってやろうかと思ったが、ライチがそういった以上、俺に逃げ道はなく渋々俺は女狐と帰ることにした。

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