十四話
いつも遅れてくるうえ、何かと色々なところに興味を持ちたびたび足を止めるライチがいない分、学校に着くのはいつもよりだいぶん早かった早かった。
学校にさえ着けば山根は別のクラスだし、廊下にでも行かない限り視界に入ることはないだろうと高をくくっていたが、実際はそんな簡単な話ではなかった。
早くに教室に着き、窓際にある自分の席に座って校門をくぐる人の流れを眺める。友人と楽し気に登校する人や、一人で憂鬱そうに登校する人を眺めては、その人の背景や心情などを何となく想像する。一、二年のライチとクラスが違う時に何となく行っていた習慣だった。久しぶりの想像は思いのほか膨らんで、HRまでの十五分ほどの待ち時間は、瞬きのように一瞬だった。いつの間にかライチが教室に着いたようで入り口には人だかりができていた。学校の中でも顔が広く、友人と言える人が多いライチに彼女ができたという話は瞬く間で広まったようで、今度は誰なんだと、どういった経緯なのかと、多くの質問がライチの周りを飛び交っていた。
外から見ていて収集がつかなくなりそうだと思い、いつもの癖で人だかりに割って入る。
「ハイハーイ、ホームルーム始まるよ。」
「ライチのこと放してやってね~」
人ごみにおぼれているライチの手を引っ張る。よく見馴れた笑顔のライチは「きひろぉ」なんて口に出し表情を緩める。タイミングよくチャイムが鳴って担任が教室に入ってくる。先日の体育祭について少し触れはしたものの、その後はいつも通りに一日が過ぎていった。一ついつもと違う点は、休み時間にライチが俺の席に来ずに、自分の席で質問攻めされては、少し恥ずかしそうに耳の先を赤くしているくらいだった。
「潮田は聞きに行かないのか?」
と、一人でボケっとしている俺に気をつかった清信が声をかけてくれる。
「誰よりも先に全部聞いてるわ」
「さっすが。やっぱライチが一番に報告するのは潮田だよな」
当然だろ?誰よりもライチのそばで、ライチの信頼を得て、ライチのことを見てきたんだ。ライチのことなら何でもわかる。
そう言いたくなるのをグッと抑え、「今度は続くといいなぁ」と漏らしてみる。あくまでも俺はライチの『親友』なのだから。自分の言い聞かせるように、周りにいい人だと思われるように。そんな俺の策謀に見事に引っかかった清信が、俺に称賛の言葉をくれる。
「お前ほんと言いやつだよな」
「いつ別れるかでジュース賭けてるやつもいるのに」
「そんな奴と比べて良いやつって言われても褒められた気がしないな」
真面目そうな清信の誉め言葉に、思わず笑ってしまう。
そんなこんなであっという間に一日が終わった。




