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十三話

「じゃあなきひろ。俺これからは蒼衣と二人で頑張ってくよ」

 ――は?おい待てよ。まてって!」

 目が覚めるといつも通りの見馴れた自室で、時計の針が示すのは三時だった。

「はぁ、はぁ、夢か……くそっ」

 異様に早い心拍とカラカラに乾いた喉、額には嫌な汗がにじんでいた。

 家族を起こさないように忍び足でリビングに降り静かに水を飲む。暗闇に目が慣れたころ、ソファで寝ている父さんに気づいて水を吹き出しそうになったが、何とかこらえて起こさないように再び、忍び足で階段を上る。

 暗い部屋で嫌なことを考えないようにしながら目をつむる。しかし、ライチが生活の一部となっている俺は、何を考えても関連づいてライチが頭をよぎる。

 結局嫌な想像が止まらなくて、それから一睡もできなかった。

「希拓大丈夫?顔色が良くないわよ」

 睡眠不足でやつれた俺の顔を母さんは見逃してくれなかった。当然のごとく寝不足で頭の回らない俺は、ありのまま伝えることも、ちょうどよい言い訳を思いつくこともできず、口ごもってしまう。そんな俺を見て、何かを察してような父さんが横から口をはさむ。

「まぁ色々ある時期だよな。風邪ひかないようにだけ気をつけろよ」

 さも「いい父親だろ?」と言いたげな父さんに乾いた笑いが零れるが、「ライチに彼女ができて寝むれなかった」なんて言えるわけもなかったので、父さんのファインプレーには感謝だった。きっと父さんは能天気に、俺に彼女ができたとか、はたまた俺が彼女と別れたとか、一般的な高校生にありがちな恋愛事情を考えたりしているのだろう。

 そう考えると、普通に異性を愛せない自分がひどく申し訳なく感じる。もしかしたらライチを忘れてそれっぽい女の人と適当に愛想よく付き合っていくのが最善なのかもしれない。なんて最悪な考えが頭をよぎる。

 本当に自分が嫌になる。『普通』でいられない自分も、取り繕うと誰かを傷つけうることを考えてしまう自分も。

 最悪な気分で家を出ていつも通り、待ち合わせの場所へ向かう。道中でポケットに入れていたスマホが通知を鳴らす。この時間の通知は、待ち合わせに間に合わに旨の連絡か、体調不良の連絡しかない。今日は三人登校かと、呑気な考えはすぐに崩れ落ちた。

『俺今日他の人と登校する』

 とライチの連絡だった。

 別に何もおかしくない。彼女ができて学校まで一緒ん登校する。当たり前のことだ。ライチが当たり前のように俺と登校すると考えていた俺の方がおかしいのだ。

『は!?お前新しい女か?』

『おい誰だ?学校着いたら詳しく教えろよ』

 トーク画面が次々更新されていく。

 結局ショックと寝不足で頭の中が真っ白のまんまで、登校中はずっと上の空だったようで、最初は「潮田寝取られてんじゃん」なんて茶化してきた山村も、「お前今日大丈夫か?」と心配してくれていた。

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