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十話

 色々あった体育祭もいよいよ大詰めで、残す競技は俺らが出る代表リレーと、綱引きのみとなっていた。

 他のチームの人達がバトンパスの練習や、緊張をほぐすための会話なんかをしている中、俺らは控え待機場所で黙って綱引きの勝敗を見守っていた。

 綱引きの撤収作業が終わり入場の合図があり、俺たちは小走りで位置に着く。スタート前に同じく代表の女子から、「あんたらダイジョブなの?」と心配そうな顔をされたが、「パフォーマンスに影響はないと思うよ。」とだけ返しといた。

 パァン!というスターターピストルの音を合図に、第一走者の人達が走り出す。基本的には女子が一走者目になっているクラスが多いが、そうでないクラスも少数派ではあったがいた。

 一走者目、二走者目と大きな差がついていない、いわゆる団子のような状況でバトンが渡っていき、徐々に心拍数が上がっていくのを感じる。一度深呼吸し「大丈夫。いつも通りやるだけ」と自分に言い聞かせる。俺の方に走ってくるクラスメイトに合わせて俺も走り出す。バトンを受け取るために左手を後ろに出す。金属のバトンが確かに左手に乗っかる感触を感じ、左手を握りしめる。自分に出せる最大の力で地面を蹴り走り出す。一人、また一人と視界から消えていき目前に残すは二人単ったところでライチが視界にうつる。「いつも通り。いつも通り」と何度も頭の中で反芻する。けれど嫌な感じが消えず、世界はスローモーションになっていく。

 バトンパス、走り出したライチが右手を出す。その差し出された右手に目掛け、バトンを置きに行く。

 いつもより少し、多分俺が手を離すのが早かったんだと思う。バトンがバランスを崩し始め、右手の上で起こる異変に気付いたライチが振り返る。俺が抜き去った人たちが、バトンを渡し終えレーンから外れていくのが視界の端に見える。バトンを拾いなおしライチに渡すころには、俺らの後ろに走者はいなかった。きっと二、三秒しか経っていなかったのだろうけど、俺にとっては数十分にも感じり時間だった。

 その後はライチが圧巻の走りを見せてくれたが、一位に躍り出ることはなく、最終順位は三位に終わった。

 応援席に戻った時、みんなは「ドンマイ」や「しゃーない」などと、慰めの言葉を投げかけてくれたがその裏には色々な詰まっていた。

 結局最後の体育祭は二位という順位で幕を下ろした。

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