一話
「きひろぉ。俺何が悪かったんだと思う?」
ベットにうつ伏せになっていたライチが口を開く。
「相手に伝わってなかったんでしょ。高校恋愛なんてそんなもんだよ。切り替えな」
30分ほど前にライチから、家にいくね。という旨のメールが届き、ついて早々浮かばれない顔をしている彼を見ては、また振られたんだなと思い、ひたすらライチがブツブツとつぶやくのを適当に拾っては返す。そんなやり取りを続けている。
いい加減にめそめそしているライチを見ていられなくなったし、お腹もすくような時間になりご飯に連れていくことにした。
「ラーメンでも食べ行こうぜ」
俺のその呼びかけに、しばらく悩んで結局食欲に勝てなかったのか、「行くぅ」と弱弱しく返事をしては、のそのそと準備を始めた。その目は少し腫れていて涙の跡が頬に残っていた。
雷智は昔から恋多き男って感じで、いろんな女子に惚れては玉砕、運良く付き合えてもなかなか続かないことが多かった。そのたびに、幼馴染である俺が慰めている。そんな光景が日常となっていた。
これは墓場まで持っていくつもりの秘密だが、ライチが玉砕するたびに俺はどこかで安心していた。こうしている間はライチの隣には俺が居続けることができるからだ。
振られてめそめそしている弱弱しい姿も、サッカーで良いプレーができた時の驚きと自信に満ちたあの表情も、今こうして食欲に負け美味しそうにラーメンをほおばる姿も、俺だけの特等席で見続けることができるから。
まぁでも向こうは俺のことをただの友達としてしか見ていないし、男の俺が同じく男であるライチに好意を向けているなんて、世間的に見ればおかしなものだ。絶対に日の目を浴びることのない想いだ。
「ついてるぞ」
頬についたチャーハンをティッシュで取る。あまりに無防備で、あまりに可愛らしい姿についにやけてしまいそうになるのを必死でこらえる。
「ありがとなっ」
そう言ってチャーハンを再び頬張る姿をついつい眺めてしまう。
もしも俺が男じゃなかったらと、もしも同性に恋をすることが何も可笑しくない世界だったらと、そんなあるはずのない世界を考えてしまう。
「ごちそうさま!」
という、ライチの元気な声でふと我に返る。
「お待たせ。お前のおかげで元気でたわ!」
そう言ってピースサインをするライチの笑顔は街灯に照らされ、輝いて見える。昔からずっと変わらない、俺の大好きな笑顔。
「そりゃよかった。ちょっとうるさいくらいの方がライチらしくていいよ」
「はぁ?なんだよそれ」
二人並ぶ帰り道でそんなやり取りを笑いながら繰り返す。今この瞬間だけは月明かりが照らす世界に二人きりだとさえ思えた。




