第九話:国王に呼び出されて胃が限界突破
「国王!? 国王って、ゲームのラスボス級キャラじゃん! 俺、こんな大物に会う準備ゼロだよ!」
クロイツェル家の屋敷、俺の部屋。俺——佐藤悠斗、いや、悪役令嬢イザベラ・フォン・クロイツェルは、王宮からの「国王直々の召喚状」を握りしめてパニック中だ。
舞踏会での闇の門の騒動、腕の刻印の暴走、賊の襲撃…と、すでにカオスすぎるのに、今度は国王!? ゲーム『キラキラ☆ロイヤルハート』じゃ、国王はほとんど出てこない背景キャラだったのに、なんで俺に絡んでくるんだ!
「やばい、バッドエンド回避どころか、国レベルの陰謀に巻き込まれてる!」
そこへ、窓から聞き覚えのあるチャラい声。
「よお、令嬢。国王との対面、面白そうだな。俺も行くぜ」
「レオン!? またお前!? いい加減、窓から入るのやめろ!」
黒髪赤目の暗殺者風イケメン、レオン・ヴァルドがヒョイと部屋に侵入。ニヤニヤしながら俺に近づいてくる。
「国王って、ルーカスやカイザーの親父だろ? どんな奴か楽しみだな」
「楽しみって、お前、ほんとトラブルメーカーだろ! 俺の胃、もう死んでるんだから!」
メイドのリナが慌てて部屋に飛び込んできた。
「お嬢様! 王宮への支度を! 至急、馬車が用意できてます!」
「うわ、早すぎ! リナ、ちょっと待って、心の準備が…!」
でも、リナに押し切られ、俺はまたしてもゴージャスなドレスに着せ替えられる。今日のは紫のドレス、金の刺繍がキラキラしてて、鏡のイザベラはまるで王妃みたい。
(美人すぎる…けど、俺の心はサラリーマンのまま! 国王に会うとか、プレッシャーやばい!)
王宮の謁見の間。でっかい扉が開くと、そこには金色の玉座に座る威厳たっぷりのおっさん…いや、ルミエール国王、アルフォンス・ヴァン・ロゼフォルトがいた。白髪交じりの髪、鋭い目つき、ルーカスとカイザーの父親だけあってイケオジ感ハンパない。
「イ、イケオジの圧、すごい…! いや、俺は男だ! いや、今は女…!」
心の中で葛藤しつつ、貴族令嬢らしくお辞儀。
「イザベラ・フォン・クロイツェル、国王陛下のご召喚に応じ参上いたしました」
(声、可愛すぎ! 毎回慣れねえ!)
レオンが俺の後ろでニヤニヤ。
「よお、陛下。イザベラの護衛、レオン・ヴァルドだ。よろしくな」
(お前、国王にまでタメ口!? やばい、処刑フラグ!?)
国王がレオンを一瞥し、冷たく言う。
「護衛だと? クロイツェル家にそんな男がいたとは聞いていない。身元を明かせ」
レオンが肩をすくめる。
「ただの流れ者さ。イザベラが可愛いから、守ってるだけ」
「可愛い!? やめろ、フラグ立てんな!」
思わず素で叫ぶと、国王が一瞬キョトン。
(やばい、イザベラ口調!)
「その…陛下、レオンはわたくしを助けてくれた者ですわ…」
国王が目を細める。
「イザベラ、単刀直入に言う。舞踏会での闇の門の騒動、君の刻印が関係しているな?」
「!?」
(やばい、いきなり核心! バレてる!?)
「その…刻印、ですの? わたくし、よく存じませんわ…」
必死でしらばっくれるけど、国王の視線が鋭すぎて胃がキリキリ。
そこへ、ルーカスとカイザーが入ってきた。
ルーカスが一礼して言う。
「父上、イザベラは私の婚約者です。彼女を疑うのは…」
カイザーがニヤニヤしながら割り込む。
「父上、兄貴の婚約者だけど、イザベラ嬢、めっちゃ怪しいですよ。刻印、光ってましたもんね!」
「カイザー! お前、裏切るな!」
(いや、貴族っぽく!)
「カイザー殿下、失礼ですわ!」
さらに、ヴィクター・フォン・グレンツェルが現れる。黒髪灰目の冷酷イケメン、ゲームじゃイザベラのライバルなのに、なぜか俺に絡みまくる。
「陛下、クロイツェル家とグレンツェル家の盟約に基づき、私もこの場に同席を願います」
「盟約!? またそれ!? ヴィクター、詳しすぎだろ!」
国王が頷く。
「ヴィクター、認めよう。イザベラ、クロイツェル家の刻印は、魔導書の鍵だ。舞踏会の騒動で、それが明らかになった」
「!?」
(やばい、完全にバレてる! 魔導書、隠してるのバレたら終わり!)
国王が玉座から立ち上がり、俺に近づいてくる。
「イザベラ、魔導書はルミエール王国の歴史を操る禁断の遺物だ。君の刻印が反応したことで、闇の使者が動き出した。隠すな、魔導書の在処を話せ」
「俺、知らねえ! いや、持ってるけど、言えねえ!」
(貴族っぽく!)
「陛下、わたくし、そのような物、存じませんわ…!」
レオンがニヤリと笑う。
「陛下、令嬢がビビってるんで、ちょっと優しくしてやってくださいよ。ほら、めっちゃ可愛い顔が台無しだ」
「可愛い言うな! てか、国王の前でふざけんな!」
ルーカスがレオンを睨む。
「貴様、陛下の前で不敬だぞ!」
カイザーがクスクス笑う。
「イザベラ嬢、ほんとモテモテだね。レオン、なかなかやるじゃん!」
「モテてねえ! 俺、ただバッドエンド回避したいだけだよ!」
その夜、屋敷に戻った俺は、魔導書を手にベッドに突っ伏す。
「国王にまでバレた…! 刻印、魔導書、闇の門…情報量多すぎ! 俺のサラリーマン脳、処理限界!」
魔導書を開くと、またしてもページが勝手にめくれる。
『刻印の者よ、試練は近い。真実の鍵は、裏切り者の影に隠れる』
「裏切り者!? またそれ!? 誰だよ、教えてくれよ!」
腕の刻印は、さっきより強く光ってる。触ると、なんかビリビリする。
「これ、ほんとに俺の体にヤバいもん宿ってるんじゃ…?」
そこへ、リナが慌てて部屋に飛び込む。
「お嬢様! 緊急です! 王宮からの使者が!」
「また!? 今度は誰!?」
「エレナ・リリエール様です! イザベラ様に直接お話ししたいと!」
「エレナ!? ヒロイン!? なんで俺のとこに来るんだ!?」
ゲームじゃ、イザベラはエレナをいじめる悪役なのに、舞踏会で助けたせいでなんか友好フラグ立ってる!?
「やばい、ヒロインと対面とか、シナリオ崩壊しすぎ!」
窓からレオンの声。
「よお、令嬢。ヒロインちゃんが来るって? 面白そうだな、俺も混ぜろよ」
「レオン!? またお前!? いい加減、窓から入るのやめろ!」
レオンがヒョイと部屋に入ってくる。
「エレナって、めっちゃ可愛いよな。イザベラ、負けるなよ」
「負けるって何!? 俺、ヒロインと戦う気ねえよ!」
さらに、リナが追い打ち。
「ヴィクター様からも、至急お話ししたいと連絡が…!」
「ヴィクター!? また!? 俺の人生、どんだけイケメンとヒロインに囲まれるんだよ!」
その瞬間、腕の刻印がピカッと光り、魔導書が勝手に開く。
『裏切り者の影が、君に迫る』
「!? 何!? またヤバいフラグ!? 俺の胃、もう限界突破だよ!」
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