第四話:王子コンビと謎のイケメンに挟まれて胃が痛い
「なんで俺の人生、こんな展開になってんだよ!?」
クロイツェル家の屋敷、俺の部屋。俺——佐藤悠斗、いや、悪役令嬢イザベラ・フォン・クロイツェルは、窓枠にふんぞり返る謎のイケメン、レオン・ヴァルドを睨みつけながら頭を抱えてる。
こいつ、昨夜の賊とのバトルで俺を助けてくれた暗殺者風の男。黒髪に赤い瞳、チャラいけど何か裏ありそうな雰囲気プンプンだ。
「なんでお前が俺の部屋にいるんだ!? てか、王子たちの召喚に同行って何!?」
レオンはニヤリと笑って肩をすくめる。
「ほら、令嬢。お前、魔導書絡みでヤバい状況だろ? 俺がいないと、また賊に襲われて終わりだぜ」
「終わりって言うな! 俺、死にたくねえよ!」
(いや、イザベラとして生き残るんだ! バッドエンド回避が俺の使命だ!)
そこへ、メイドのリナが慌ててドアをノック。
「お嬢様! 第一王子殿下と第二王子殿下がご到着です! 至急、応接室へ!」
「うそ、早すぎ! まだ心の準備が!」
俺は魔導書を隠し扉に押し込み、ドレッサーの前でリナに着せ替えられる。今日のドレスはエメラルドグリーンの超ゴージャスなやつ。鏡に映るイザベラの美貌は完璧だけど、俺の胃はキリキリしてる。
「レオン、お前、ほんとに付いてくる気!?」
「当たり前だろ。面白そうなことには首突っ込みたいタイプなんだよ、俺」
(こいつ、絶対トラブルメーカーだろ! ゲームにいなかったキャラ、信用できねえ!)
応接室に通されると、第一王子ルーカスと第二王子カイザーがソファに座って待ってた。
ルーカスは金髪碧眼、キリッとしたイケメン。ゲームじゃヒロインにベタ惚れする俺の婚約者だけど、今は真剣な顔で俺をじっと見つめてくる。
カイザーは銀髪紫目、ニヤニヤしたチャラい笑顔。こいつ、ゲームじゃただのサブキャラだったのに、なんかめっちゃ絡んでくる。
「イ、イケメンの圧がすごい…! いや、俺は男だ! いや、今は女か…!」
心の中で葛藤しつつ、貴族令嬢らしくお辞儀。
「イザベラ・フォン・クロイツェル、参上いたしました、殿下方」
(声、可愛すぎ! 毎回慣れねえ!)
ルーカスが立ち上がり、鋭い目で俺を見る。
「イザベラ、単刀直入に聞く。魔導書の在処を知っているな?」
「!?」
(やばい、めっちゃ直球! バレてる!?)
「その…魔導書など、わたくし、存じ上げませんわ…」
必死でしらばっくれるけど、声が震えてる。
カイザーがクスクス笑いながら割り込む。
「イザベラ嬢、めっちゃ怪しい反応だね。隠してるってバレバレだよ?」
「うっ、黙れ、チャラ男!」
(いや、貴族っぽくしろ、俺!)
「カイザー殿下、失礼なご発言ですわ!」
その時、応接室のドアがバンッと開いた。
「よお、遅れて悪いな。イザベラの護衛として同席させてもらうぜ」
レオンだ! なんでこいつ、堂々と入ってくるんだ!?
ルーカスとカイザーが同時に「誰だ?」って顔でレオンを睨む。
「レオン・ヴァルド、よろしく。イザベラの…まあ、臨時ボディーガードってとこかな」
レオンがニヤニヤしながら俺の隣に立つ。
(臨時ボディーガード!? 勝手に決めんな!)
ルーカスが冷たく言う。
「イザベラ、こいつは何者だ? クロイツェル家にこんな男がいたとは聞いていない」
「え、えっと…その…」
(俺も知らねえよ! 昨日出会ったばっかだ!)
カイザーが興味津々な顔でレオンに近づく。
「へえ、面白そうな奴だな。イザベラ嬢のボディーガード? どこで拾ったんだい?」
「拾ってねえ! 勝手に来たんだよ!」
思わず素で叫ぶと、三人とも一瞬キョトンとする。
(やばい、イザベラ口調!)
「わ、わたくし、この方に助けていただいたことがありまして…その、護衛をお願いした次第ですわ」
必死で取り繕うけど、めっちゃ怪しい。
ルーカスが話を戻す。
「イザベラ、魔導書の件だ。昨夜、クロイツェル家の屋敷が賊に襲われたと聞いた。やはり魔導書を狙っている者たちが動いている」
「!?」
(情報早すぎ! 王宮のスパイネットワーク、怖え!)
「その…賊、でしたの? わたくし、よく存じ上げませんわ…」
レオンがフッと笑う。
「賊は俺が追い払った。イザベラは無事だ。感謝しろよ、王子殿」
ルーカスがレオンをキッと睨む。
「貴様、口を慎め。イザベラ、こいつを信用するな。魔導書を狙う一味かもしれん」
「え、そ、そうなん!?」
(レオン、怪しすぎるし、あり得る…!)
カイザーがニヤニヤしながら茶々を入れる。
「兄貴、厳しいねえ。けど、イザベラ嬢、ほんと魔導書持ってるんだろ? 隠しても無駄だよ。ほら、王国の危機なんだから、さっさと吐いちゃいな」
「吐くって何!? 俺、なんも知らねえよ!」
(いや、イザベラっぽく!)
「カイザー殿下、わたくしにそのような物があるなんて…!」
その時、ルーカスが一歩近づいて、俺の腕を掴んだ。
「イザベラ、クロイツェル家の刻印を見せてもらおう」
「!?」
(やばい、腕の紋様! バレたら魔導書のこともバレる!)
俺は慌てて腕を隠そうとしたけど、ルーカスの力が強くてドレスの袖がめくれる。
そこには、確かに光る紋様。
ルーカスの目が鋭くなる。
「やはり…刻印の者だ。イザベラ、君は魔導書の鍵だ」
カイザーが「おお!」と声を上げ、レオンが「ほう」と呟く。
(なんで俺、こんな注目されてんだよ! 胃が痛え!)
その夜、屋敷に戻った俺は、魔導書を手に持ってベッドに突っ伏した。
「刻印の者って何!? 魔導書の鍵って何!? 俺、ただバッドエンド回避したかっただけなのに!」
ページをパラパラめくると、またしても本が勝手に開き、新しい一文が浮かび上がる。
『刻印の者は、闇の門を開く。だが、真実を知る前に試練が待つ』
「闇の門!? 試練!? やめてくれ、俺にそんなフラグいらねえ!」
腕の紋様は、さっきよりハッキリ光ってる。
「これ、ほんとに俺の体に何かヤバいもん宿ってるんじゃ…?」
そこへ、リナがドアを叩く。
「お嬢様! 緊急です! 王宮から新たな使者が!」
「また!? 今度は誰!?」
「公爵家の跡取り、ヴィクター・フォン・グレンツェル様です! イザベラ様に直接お話ししたいと!」
「ヴィクター!? ゲームのライバルキャラ!?」
ヴィクターは、ゲームでイザベラと敵対する冷酷な公爵家の跡取り。ヒロインをいじめるイザベラを嫌ってるはずなのに、なんで俺に会いに!?
「やばい、王子二人とレオンで胃が限界なのに、またイケメン追加すんの!?」
窓の外で、聞き覚えのある声。
「よお、令嬢。賑やかになってきたな」
「レオン!? またお前!? いい加減にしろ!」
レオンが窓からヒョイと入ってくる。
「ヴィクターって奴、面白そうな奴だな。一緒に話、聞いてやろうぜ」
「勝手に決めんな!!」
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