第二話:魔導書と王子たちの圧がヤバい
「やばい、めっちゃやばい! なんで俺がこんなヤバい本持ってるんだよ!」
クロイツェル家の屋敷、自分の部屋。俺、佐藤悠斗——いや、今は悪役令嬢イザベラ・フォン・クロイツェルが、隠し扉から見つけた「呪われた魔導書」を握りしめてパニック中だ。
この本、表紙に不気味な紋様がビッシリ刻まれてて、触るとゾクゾクする冷気が漂ってくる。ページを開いたら、古代文字で何か書いてあるけど、読めねえ! でも、昨夜チラッと目に入った一文が頭から離れない。
『クロイツェル家の血に宿る刻印は、王国の運命を握る』
そして、俺の腕に浮かんでる謎の紋様。明らかにこの魔導書と関係あるっぽい。
「これ、ほんとに王国の秘密が詰まってるってやつ? でも、なんでイザベラがこんなモン持ってるんだ…!」
そこへ、ドアをノックする音。
「お嬢様! お支度を! 至急、王宮からの使者が参りました!」
メイドのリナの声だ。昨日と同じく、焦ってる。
「え、また!? 昨日、王子に会ったばっかじゃん!?」
俺は魔導書を慌てて隠し扉に押し込み、ドレッサーの前に座らされた。
「今日は第一王子殿下と第二王子殿下が揃ってのご訪問です! 急いでください!」
「は!? 二人とも!? 何!? 俺、なんかやらかした!?」
内心で絶叫しつつ、リナの手によってまたしてもゴージャスなドレスに着せ替えられる。鏡に映るイザベラの美貌は完璧だけど、中身の俺はガチガチに緊張してる。
「王子二人が直々にクロイツェル家に来るって、ゲームのシナリオにこんなイベントなかったぞ…!」
馬車に揺られて王宮に到着。昨日と同じ豪華な謁見の間に通されると、そこには二人のイケメンが待ち構えていた。
第一王子、ルーカス・ヴァン・ロゼフォルト。金髪碧眼、キリッとした顔で、まさに王子様のテンプレ。ゲームじゃヒロインにベタ惚れする予定の俺の婚約者だ。
そして第二王子、カイザー・ヴァン・ロゼフォルト。銀髪に紫の瞳、ニヤニヤした笑顔がチャラいけど、なんか裏ありそうな雰囲気。
「イ、イケメンの圧がすごい…! いや、俺は男だ! いや、今は女か…!?」
心の中で葛藤しながら、なんとか貴族令嬢っぽくお辞儀。
「イザベラ・フォン・クロイツェル、参上いたしました、殿下方」
(うわ、声が可愛すぎる! これ、ほんとに俺の声!?)
ルーカスが真剣な顔で口を開く。
「イザベラ、昨日話した呪われた魔導書についてだ。クロイツェル家にその在処を知る手がかりはあるか?」
「え、えっと…その…」
(やばい、隠し扉の本のことバレてる!? いや、落ち着け、知らないふりだ!)
「魔導書、ですか? わたくし、存じ上げませんわ…」
俺はイザベラらしい高飛車な口調を意識しつつ、しらばっくれる。
すると、カイザーがニヤッと笑って割り込んできた。
「ほぉ~、イザベラ嬢、ずいぶん怪しい反応だね。隠してるんじゃないの?」
「っ!? な、何をおっしゃいますの!?」
(こいつ、鋭い! ゲームじゃただのチャラ男だったのに、なんでこんな洞察力あるんだよ!)
ルーカスがカイザーを睨みつける。
「カイザー、余計なことを言うな。これは王国の存亡に関わる問題だ」
「へいへい、兄貴、わかってるよ。でもさ、イザベラ嬢がそんな大事な本持ってるなんて、面白すぎるよね?」
カイザーの軽い口調に、俺の胃がキリキリする。
(こいつ、絶対わざと煽ってるだろ! でも、ルーカスの真剣さも怖い…!)
ルーカスが一歩近づいて、俺をじっと見つめる。
「イザベラ、魔導書は単なる書物ではない。ルミエール王国の歴史を操る力を持ち、間違えば国を滅ぼす危険な遺物だ。クロイツェル家に代々伝わるはずだ。君の父、クロイツェル公爵もそのことを知っていた」
「父!? いや、待て、俺の父って…!」
ゲームの設定では、イザベラの父親はすでに亡くなってるはず。でも、ルーカスの口ぶりだと、なんか深い関わりがありそう?
「その…父が何か仰ってましたの?」
俺は探りを入れるように聞いてみた。
ルーカスは少し目を細める。
「公爵は生前、魔導書の秘密を厳重に守っていた。だが、最近、王宮で不穏な動きがある。魔導書を狙う者たちが動き出したのだ」
「不穏な動き!? 誰!?」
思わず素で聞き返してしまい、ルーカスが一瞬驚いた顔をする。
(やばい、イザベラっぽく振る舞えよ、俺!)
カイザーがクスクス笑いながら口を挟む。
「イザベラ嬢、ずいぶん興味津々だね。まぁ、そりゃそうか。自分の家がそんなヤバいもん持ってるって知ったら、誰だってビビるよね?」
「わ、わたくし、ビビってなんかいませんわ!」
(めっちゃビビってるわ!)
その夜、クロイツェル家の屋敷に戻った俺は、魔導書を再び手に取って頭を抱えた。
「これ、ほんとにヤバい本じゃん…。王国を滅ぼすとか、冗談じゃねえ!」
ページをパラパラめくると、またしても不思議なことが起きた。本が勝手に開き、特定のページが光り出す。
「うお!? 何!? また勝手に動いてる!」
光るページには、さっきと同じ古代文字。でも、なぜか一文だけが日本語に変わって見えた。
『刻印の者は、真実の鍵を開く』
「刻印の者…って、俺の腕のこれ!?」
ドレスの袖をめくると、腕の紋様がさっきよりハッキリ浮かんでる。しかも、微かに光ってる!
「うそ、なにこれ!? 俺、どんどんヤバい状況にハマってる!」
そこへ、リナが慌てて部屋に飛び込んできた。
「お嬢様! 大変です! 屋敷の外に怪しい人影が!」
「は!? 人影!? 何!?」
「わかりません! 衛兵が確認に行きましたが…おそらく、魔導書を狙う賊です!」
「賊!? もう!? 話が早すぎるだろ!」
俺は魔導書を抱えて立ち上がった。
(ゲームの知識じゃ追いつかない! でも、この本が鍵なら、絶対守らなきゃ!)
窓の外を見ると、確かに黒い影が屋敷の庭をウロウロしてる。月明かりに照らされたその姿、なんかめっちゃ怪しい!
「リナ、衛兵に伝えろ! 俺…いや、わたくしが直接対処する!」
「お嬢様!? 危険です!」
「いいから! ここでビビってたら、バッドエンド一直線だ!」
俺は魔導書を握りしめ、覚悟を決めた。
(サラリーマン根性で、なんとかするしかない!)
庭に飛び出すと、黒いフードをかぶった男が俺を睨んでくる。
「お前がイザベラ・フォン・クロイツェルか。魔導書を渡せ」
声が低くて、めっちゃ怖い! でも、なんか見覚えがあるような…?
「待て、てめえ、誰だ!? ゲームのキャラか!?」
思わず素で叫ぶと、男が一瞬キョトンとする。
(やばい、イザベラっぽくしろ!)
「わ、わたくしに何の用!? 魔導書など、知りませんわ!」
男がニヤリと笑う。
「ふん、しらばっくれるな。クロイツェル家の刻印を持つお前が、魔導書の在処を知らないはずがない」
「刻印!? てめえ、なんでそれ知ってるんだ!?」
また素で叫んでしまい、男が剣を抜く。
「黙れ。渡さなければ、力ずくで奪う!」
(うわ、マジでやばい! 俺、どうすりゃいいんだ!?)
その瞬間、庭の奥から別の影が飛び出してきた。
「そこまでだ、賊め!」
キラリと光る剣とともに、現れたのは…黒髪に赤い瞳、めっちゃイケメンの暗殺者っぽい男!
「え、誰!? 新キャラ!?」
俺の叫びを無視して、暗殺者っぽい男は賊と剣を交える。火花が散り、庭が一気に戦場に!
(何!? 何この展開!? ゲームにこんなキャラいなかったぞ!)
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