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第十一話:王子と賊と裏切り者の影に心が折れそう

クロイツェル家の屋敷、書斎。 燭台の炎が揺れ、壁に飾られた先祖の肖像画がまるで私を見下ろしているようだ。 窓の外では、秋の夜風が庭の木々をざわめかせ、月光が芝生に銀色の光を投げかけている。 静寂の中に、不穏な気配が漂う。


私は——佐藤悠斗、いや、悪役令嬢イザベラ・フォン・クロイツェル、魔導書を握りしめて書斎の椅子に座り、頭を抱えている。


「王子コンビ、賊の襲撃、裏切り者の影…! 俺の胃、もう存在しない! ただのサラリーマンだった俺が、なんでこんな国家レベルの騒動に巻き込まれてんだよ!」


魔導書の革表紙は冷たく、触れるたびにゾクゾクする。 さっきのメッセージが脳裏で響く。


『裏切り者の影が、今、君を試す』


「試すって何!? 裏切り者って誰だよ!? ヴィクター? レオン? まさかエレナ!?」


ゲーム『キラキラ☆ロイヤルハート』の知識を総動員しても、こんな展開なかった。 イザベラはヒロインをいじめて断罪される悪役令嬢のはずなのに、なぜかヒロインに感謝され、王子や公爵に追い詰められ、謎のイケメンに絡まれ、賊に命を狙われる。


「この世界、ゲームと違いすぎる…! 魔導書と刻印が鍵なら、俺、ほんとに何かやらなきゃいけないのか?」


サラリーマン時代の記憶がチラつく。 徹夜で作った企画書を上司にボツにされ、胃薬を飲みながら耐えたあの感覚。 今はそれどころじゃない。 命がかかってるんだ。


腕の刻印が、月光に照らされて青白く光る。 触ると、熱いような冷たいような、奇妙な感覚が全身を走る。


「この刻印、ほんとに俺の体に何かヤバいもん宿ってるんじゃ…? 魔導書とリンクしてるって、マジで?」


隠し扉にしまった魔導書を思い出す。 あの本、持ってるだけで命の危機なのに、捨てるわけにもいかない。 バッドエンド回避の鍵かもしれないからだ。


そこへ、書斎の外でドンッと大きな音。


「!? 何!?」


メイドのリナが悲鳴を上げ、ドアをバタンと開ける。 彼女の顔は、燭台の光で青ざめて見える。


「お嬢様! 屋敷の外に賊です! 衛兵が応戦してますが、数が…!」


「賊!? また!? 魔導書狙ってる!?」


心臓がバクバクする。 窓の外、庭の闇に複数の黒い人影。 月光に照らされたフードの男たちが、まるで幽霊のように動く。


レオン・ヴァルドが窓枠に現れ、剣を手にニヤリと笑う。 黒髪に赤い瞳が、夜の闇で不気味に光る。


「よお、令嬢。賊がまた来たぜ。今回は数が多い。準備しろよ」


「準備って何!? 俺、戦えねえよ! ただのサラリーマンだぞ!」


レオンの気楽な態度にイラッとするけど、舞踏会で助けてくれたのは事実。 味方…だよな? でも、あの「獲物」発言、絶対怪しいよな…。


その時、屋敷の玄関ホールで馬車の音。 リナが慌てて言う。


「お嬢様! 第一王子ルーカス殿下と第二王子カイザー殿下がご到着です!」


「ルーカスとカイザー!? 今!? こんなタイミングで!?」


胃がキリキリを超えて、なんかもう無感覚になってきた。


庭に出ると、月光の下で衛兵と賊が剣を交えている。 金属音が夜の静寂を切り裂き、芝生に血の滴が散る。 空気は冷たく、火薬の匂いが鼻をつく。


ルーカスが馬車から降り、金髪碧眼の凛々しい姿で衛兵に指示を出す。


「イザベラ、無事か!? 衛兵、賊を一網打尽にしろ!」


(婚約者、めっちゃカッコいい! でも、俺、こんな戦場にいる場合じゃねえ!)


カイザーが銀髪を揺らし、ニヤニヤしながら短剣を手に近づいてくる。


「イザベラ嬢、ピンチだね! でも、なんかワクワクするよ!」


「ワクワクしてる場合か! お前、ほんと呑気だな!」


レオンが賊の一人を剣で倒し、俺に振り返る。


「令嬢、魔導書、持ってるだろ? 賊がこんなしつこいってことは、近くにある証拠だぜ」


「レオン! お前、味方だろ!? 疑うな!」


でも、心のどこかで思う。 レオン、ほんとに味方か? ゲームにいないキャラ、怪しすぎる。


その時、賊のリーダーらしき男が庭の中央に立つ。 フードの下、目だけがギラリと光る。


「イザベラ・フォン・クロイツェル、刻印の者よ。魔導書を渡せ。さもなくば、この屋敷を灰にする」


「灰!? やめろ、俺の家だぞ!」


(いや、イザベラの家か…! でも、燃やされるのはマジ勘弁!)


腕の刻印がピカッと光り、胸が締め付けられるような感覚。 魔導書のメッセージが頭に響く。


『裏切り者の影が、今、君を試す』


「裏切り者って、お前か!? それとも誰だよ!?」


ルーカスが剣を構え、賊のリーダーに突進。


「貴様、何者だ! 魔導書を狙う組織の目的は!?」


賊のリーダーが低い笑い声を上げる。


「ルミエール王国の偽りの歴史を暴く。それが我々の使命だ。刻印の者よ、魔導書を開け!」


「偽りの歴史!? また新情報!? 俺、頭整理しきれねえ!」


カイザーが短剣を投げ、賊の動きを封じる。


「イザベラ嬢、めっちゃモテモテだね。こんなヤバい奴らにまで狙われて!」


「モテてねえ! 命狙われてるんだよ!」


レオンがニヤリと笑い、別の賊を倒す。


「令嬢、時間稼ぐから、なんか考えろよ。刻印が光ってるってことは、魔導書の力、使えるんじゃね?」


「使える!? 俺、そんなファンタジー知識ねえよ!」


その時、屋敷の窓から金髪の少女が飛び出してきた。 エレナ・リリエール、ゲームのヒロインだ!


「イザベラ様! 私、助けに来ました!」


「エレナ!? なんでここに!? ヒロイン、こんな戦場に来るなよ!」


エレナが小さなナイフを手に、震えながらも俺の前に立つ。


「イザベラ様がピンチなら、私も戦います! 舞踏会で助けてくれた恩、返したいんです!」


「エレナ!? めっちゃ良い子! でも、ゲームじゃ敵なのに、なんでこんな展開!?」


心が揺れる。 エレナのキラキラした瞳、純粋すぎる。 裏切り者じゃないよな…?


突然、刻印が熱くなり、庭の地面に赤い紋様が浮かぶ。


「!? 何!? また闇の門!?」


ルーカスが叫ぶ。


「イザベラ、刻印を抑えろ! 魔導書の力が暴走してる!」


「抑えろって、どうやって!? 俺、こんな力、知らねえよ!」


賊のリーダーが笑う。


「刻印の者よ、闇の門を開け! 真実がそこにある!」


「真実!? やめろ、俺、そんなヤバい門、開きたくねえ!」


エレナが俺の手を握る。


「イザベラ様、信じてます! きっと大丈夫!」


「エレナ…! ヒロイン、なんでこんな良い子なんだ!」


サラリーマン魂が叫ぶ。 締め切りギリギリのプレゼンだって乗り切った。 なんとかするしかねえ!


その瞬間、刻印から光が爆発し、庭が真っ白に包まれる。


「うわ!? 何!? 俺、死ぬ!?」


光の中、魔導書の声が響く。


『刻印の者よ、真実の鍵は、君の心の中にある』


「心!? 俺の心、ただのサラリーマンだぞ!」


光が収まると、賊たちは消え、庭は静寂に包まれる。 だが、刻印はまだ光ってる。


ルーカスが息を切らして言う。


「イザベラ…また君が、闇の門を抑えたのか?」


「俺!? いや、知らねえ! 勝手に光っただけだよ!」


カイザーがニヤニヤ。


「イザベラ嬢、ヒーローすぎ! 惚れちゃうね!」


レオンが笑う。


「令嬢、なかなかやるじゃん。俺、ますますお前に興味出てきたぜ」


エレナが目をキラキラさせる。


「イザベラ様、すごい…! 私、もっと力になりたいです!」


「みんな、落ち着け! 俺、ただ生き残りたいだけなのに!」


その夜、書斎に戻った俺は、魔導書を手に震える。


「裏切り者の影、真実の鍵、闇の門…。俺、どんだけ試されるんだよ…!」


そこへ、リナが慌てて飛び込む。


「お嬢様! 緊急です! 王宮から新たな召喚状が!」


「また!? 今度は誰!?」


「国王陛下と…謎の占い師が、イザベラ様を至急呼び出しています!」


「占い師!? ゲームにそんなキャラいなかったぞ! 俺の人生、どこまでめちゃくちゃになるんだ!」

読んでくれた皆さん、ありがとうございます! 感想やブックマークや評価も良かったらお願いします!作者のモチベーションがUPします笑

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