第44話 旅立ち
パパが、関西へ行ってから半年がたつ。
「瞳、聖也も元気?」
「こっちは、大丈夫よ。お母さんも妹もいるし。
聖也が、元気過ぎて困るくらいよ。」
「そう、それならいいけど。
色々、揃ったしさ。こっちに、呼ぼうと思ってるんだけど。」
「そうなの。」
私は、一緒に暮らせる日が来たんだと、素直に嬉しくなった。
「いつ、そっちに行けるの?」
「月末からでも、いいけど。
準備に時間がかかるなら、来月でもいいよ。」
パパは、早く来てほしそうだ。
私も、出来るだけ早く行きたい。
「わかった。準備して、また連絡するね。」
わたしは、いつになるかを、即答しなかった。
だって、聖也を私から取り上げてまで、抱っこにミルクに、世話を焼く家族が悲しむのは分かっていたし、いつかはパパの所に行くことは分かっていたけど、時間を作らないと。そう思った。
「そうなんだ。もう少し先だと思った。」
「聖ちゃんがいなくなると、寂しくなるね。」
「わたしは!」
みんなが、笑ったけど、複雑な気持ちなのだろう。
それから、準備とか家族の時間をしっかり作って、過ぎて行く日を心に焼き付けた。
月が明けて、出発の日。
「ありがとう。みんなも、落ち込まないで、気を付けてね。」
「何かあったら、すぐ連絡してね。」
「うん。わかってる。」
目を赤くして、泣き出すお母さんに、つられて皆が泣き出した。
お母さんと妹の手が私たちの肩を、抱かれると、言葉にならない感情が込み上げてきた。
色んなことがあった。楽しかった思い出も、喧嘩したことも、進学に就職、結婚と聖也。
『ありがとう。 行ってきます。』
声に出しても、伝えきれない想いに、胸が熱くなった。
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