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13.世界を穢した魔女

あっちもこっちも動き出したようですね

「で、どちらが魔女様なのかね」


 オルソーニとパシャが騎士元帥に呼び出されて第一声がこれだ。素直に知らないと答えていいのか、いや、むしろ魔女とは?と聞き返したい気持ちでいっぱいだ。


「あの。魔女というのは?」

「しらばっくれる気かね?君たちのどちらかが魔女であるという報告は届いている!出来得る事ならばそのお能力をこの目でしかと見たいのだ。さあ!」


「あの、元帥、先ず我々は魔女という存在を御伽噺(おとぎばなし)のようなものでしか知りません。世界を(けが)した魔女、と呼ばれてるあの魔女ですか?」


「当人に自覚がないだと!??しかも忌々しい忌み名で魔女様を呼ぶとは…。無理矢理にでも……いや、いや、自然な覚醒が望ましいだろう…。私に出来るのは覚醒を促す手伝いをする事くらいか……。ふむ。状態は把握した。下がっていい。今の君達には早すぎる要求だったようだ」


 唐突な元帥からの呼び出しに、オルソーニは礼服を持っていたが、まだそんなものまでは作っていないパシャは通常の団服で慌てて呼び出しに応じた。なのに、蓋を開ければ良く解らない質問ばかりだ。魔女、と呼ばれる存在は、500年前に没した「世界を(けが)した魔女」くらいなものだが、その話も、噂程度にしか聞きかじった事がない。


 元帥がこれ見よがしにリベラルウォームを加工したものを腕輪として付けていなければ、完全に自分たちとは縁のない話だと判断してしまった筈だ。


 必ずどちらか一方が、と言われるとパシャになるだろうが、本人が目を白黒させている。それに、魔女ではないと判断された方はどんな扱いを受けるのか?いやむしろ、魔女と判断されたほうの扱いにも疑問が残る。


 一先ず現実的に判断出来るのは、パシャの礼服の作成を急ぐ事くらいだ。この年齢だから、成長ごとに何度も作り直すのは不経済だと後回しにしたのが(たた)った。



 そして、元帥との対面以来、第一部隊に不自然なくらい討伐依頼が舞い込んでくる。殆どをパシャとオルソーニが片付けてしまう為、団員達には不評だが、この頻度(ひんど)で全員でマトモに闘っていれば、戦闘不能に(おちい)る団員は1人や2人では済まないだろう。その事は徐々に団員も解って来た様で、此処のところ不満は聞いておらず、逆に心配されている。


 何度も死んでは戻ったあの件で、手に入れたリベラルウォームは4つ(正確には3つ+と言った所か)磁力+のリベラル、磁力ーのリベラル、透明のリベラル、回復支援のリベラルだ。生き残り(サヴァイバー)とは違って、回復支援は大きく回復能力に特化し、味方の能力を上げる事が出来る。磁力は、どうしても直ぐに合流したい時に自分に+、相手にー、と念じれば直ぐに引き寄せられ、逆に相手を遠ざけたい場合は両方+か両方ーにすればいい。透明は、潜入捜査などに便利そうだと思うが、そんな依頼は舞い込んで来ない。


 兎に角物量で押し潰されそうな、2~3部隊共同で行うべき討伐依頼ばかりだ。そして、あれだけ活発だった組織からのちょっかいが消えた。


 最近はギリギリ見えるかどうかの位置からナパーム弾で一掃してからの戦闘が定着しつつある。

 消火は水魔法で行っているが、移動時に行っているので団員からは見えないはずだ。しかし、あらかた洗い流され、消火され、綺麗になった所からの殲滅開始であるので、薄々どころかかなり見え見えでバレてはいると思う。皆口に出さないで居てくれるのでそれに甘えている格好だ。誰も死なずに生きて全員で帰る事が一番の目標だと思え、と隊長にも全員が言い含められている。


 討伐依頼などの書面整理などをしている第10部隊辺りから、抗議の声も出ているという。それほど明け透けに殺しに掛かっているような任務状況だ。慰労なのか、10部隊からは何度か陣中見舞いが届いている。大体は甘いものであるので、疲れを癒せ、と言われている気持ちになる。



 が、今回は少し毛色が違った。周辺に被害を出す害獣退治、という内容に変わりはないが、それは巨大な1匹の獣だった。狐に似ている気がするが、尾が9本ある。まさにパシャが魔法で大刀を落そうとした時に、()()は口を開いた。


『久しいの、魔女殿。500年余りも行方を眩ませて。こちらは寂しく思っておったぞ』

 それはまるで頭に直接聞こえるような声だった。そしてサトリの能力で、敵意などはない事が解る。むしろ人間全般に害を為すような事はしていないのが解った。


 そして自然とパシャの声も同じように脳内へ響くような声となる。

『魔女というのは私のこと?』

『……っふふ、魔女殿も冗談を言えるようになったか。いや、感心。人間共とも上手くやれているようだねぇ』

『待って、冗談ではないの。私は魔女なの?』


『おや?若返ったと思えば記憶喪失かえ。我はそなたのお陰で大きい魔法も使えるようになって感謝しておるし、少し記憶を共有してやろうか。海のと川のと野っ原のも、其方に逢いたがっておるよ』

 魔女が感謝されている所を初めて聞いた。大体の人は誰もが顔を(しか)めて嫌そうに語るのみだったのだ。例外は元帥だ。


『ほれ、こんなものでどうじゃ』

 途端に、体全体がドクン、と脈打ったのが解った。頭の中に覚えのない記憶が次々と刻まれていく。

「あ…、あ、あ、あああッ」

 強い痛みと脳を掻き混ぜられるような不快感に思わず声が漏れる。



 ――かつて世界には小さな魔法があった。蝋燭を灯す程度の火の魔法や、一口分の水を出す魔法。ディコレッタは――ディコレッタ・アスール・ミ・レストゥム=ファランドールは、それに不満を募らせていた。皆の力を合わせたらもっと大きな魔法が使えるのに、と。一国の王女として生まれたにも関わらず、贅沢品などに興味も持たず、魔法の話ばかりする変わり者だった。


 そのうち姫の研究は実を結ぶ。その頃には年齢は120に達しており、人々からは魔女と呼ばれるようになっていた。


 世界中の魔法を集め、自分の中でコアと呼ばれるものにして、大魔法を色々と使えるようにした。

 コアは複製が出来た。魔女は出し惜しみする事無く、コアを他の人間に分け与え、それと共に色々な技術を世界中から集めてコアにした。けれど、魔女は気付かなかった。誰もがコアをただの1つも受け入れられず、なりそこないに変化して仕舞うことを。


 相当器が大きくないと、1つのコアも受け容れられない。魔女の持つ、規格外な器を持ってして初めて複数の力が宿せることを。

 

 人々は集めた力を返せと言ったが、集めて固めてしまったものを戻す事は難しかった。願望の力を使って、なんとか色々な力をコアから抽出還元は出来たが、人々の体が魔法の力だけは受け入れようとしなくなっていた。


 魔女は捕まり、拷問され、魔法を戻す方法を散々聞かれたが、解らない物はどうしようもない。断頭台に立った魔女は、いずれ自分は帰って来る、と告げると全身が虹色のブロック状のコアとなって崩れて行った。コアはあちらこちらへと飛んで行き、行方は誰にも解らなかった。


 ――わたし、は。

 コアを集めたから魔女なのか。

 前世がそもそも魔女なのか。


 そこからが怪しい。死んでも生き返る能力はコアを受け容れる前からあったが、魔女にそんな特性はあったのだろうか。


『魔女は…、魔女は、死んでも、その原因となった件をやり直すところに戻る能力を持っていた?』

『ほう。そんな能力もあったやも知れんが、其処まで覚えておらんなあ。いつも一人で寂しそうにしておった。いつ頃か男と2人で会いに来るようになった間は楽しそうじゃったが、男が寿命で死んでからはまた1人だったの。年は取らなんだ。いつも18才くらいの姿でおったよ』


『私は8つだから、取らないと困る…』

『任意の年齢で止めておったんじゃろ。最初は普通に育っておった。故に其方は永遠を生きる生き物だと思っておったのに、急に500年前からすっかり連絡が取れなくなってしまって心配したんじゃよ』


『何故コアの事をリベラルウォームと呼ぶの?』

『人間が付けたんじゃろうが、えらく好意的な名前じゃな。自由の暖かさ、と言ったところかの』


 記憶を見せられても全くピンとこない。本当にこれが自分の事なのか?と不安に思う。

『この記憶に思い当たるものがないの。どうして私を魔女だと言ったの?』

『魂の形が同じだからさね』

『思い出せなくてごめんなさい…』


『気にせずともそのうち戻るだろうさ。ところで我に何ぞ用があったのではないのか?』

『誤解かも知れないけど、周辺の村や町から、貴方に対して被害を受けたと苦情があったの』


『あぁ…悪戯な狸のやつじゃな。仕方ない』

 ごそごそと山の麓を探るように顔を突っ込み、一匹の狸を咥え出した。蔦で拘束し、パシャの元へと移動させる。


『犯人じゃよ。煮るなり焼くなり好きにせい』

『ありがとう。じゃあ今日はもう帰るね』


『また顔を見せてくれればそれで良い、()()()()()()も気をつけて過すんじゃぞ』


 それきりすうっと小さくなって山の中に紛れた狐はもう見えなくなった。

「あー、パシャ。悪い、全員全部丸聞こえだったぞ」


 ――ディコレッタ


 そう呼ばれて初めて、頭の中に色んな情景が映り始める。

 許容を超えた情報に、パシャはぐらりと体を傾がせる。オルソーニが慌てて抱き上げた。


「サイラ…ごめんなさい、共に逝けなくて…」

 その言葉にオルソーニがびくっと体を震わせる。目頭を片手でぎゅうっと押しながら、告げる。

「帰るぞ。あと他言無用だ。言っとくが、パシャはいつでもお前達全員を生かして帰るために必死だったぞ」


「……なんとなく…あの会話で解ります」


 そうして戻った第一番隊は、飯を食うものと寝る者と、狸を突き出す者に分かれていく。オルソーニはパシャを寝台まで運んだ後、自室で頭を抱えていた。


「また出会えたと思ったらこんな年の差で…どうしろって言うんだ、なあコレッタ」

 まだ記憶は増え続けている。オルソーニは大人しく寝る事にする。


 長い夢になりそうだった。


Yes!ロリ!NO!タッチ! ですよ!

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