12.皆で帰るのを諦めたりしない
全員が無事だといいですね
はっと意識が戻ると一人で魔物を間引いてる所だった。暗殺者のリベラルで加速し、オルソーニに追いつく。前を塞ぐ形で相対した。
「パシャ?どうした」
「組織が来てる。3人。一人は女。一人は男。団員をなりそこないにして回ってる。なりそこないからリベラルを抜いて、その団員の元の姿を思い浮かべながら願望のリベラルを使えば戻せる!なりそこないを殺さないで!」
「解った。なりそこないに遭う前で良かった。3人居るなら別行動の方がいいか」
「右にかたまってる場所がある…お願い…助けてオルソーニさん…」
じわりとパシャの目が潤む。
「解った、案内してくれ」
地点へ急ぎ、組織の女を殺してラカッソを救う。ユルファも救った所で、オルソーニに目配せし、組織の人間の相手を任せる。団員2人を蹴飛ばしてルーフェスに傀儡を使う。
「動くな」
サッとリベラルを回収し、ルーフェスを元に戻す。間一髪、ピートの襲撃を避けるのに間に合う。
「動くな」
敵を倒し、リベラルはなかったらしくサイフだけを回収したオルソーニが合流した為、ピートを戻すのを代わってもらう。生き残り(サヴァイバル)で索敵、ピートの3マンセルのうち2人が固まっている。
「動くな!!!」
統率を介して索敵を全開で展開しつつ、傀儡で縛る。今の所闖入者は居ない。ささっと2人の偽リベラルを抜いて、ピートが終わったらしいオルソーニにも手伝って貰う。
「エルゼルト、ねえ、戻ってきて…!」
オルソーニ側のイファレス、パシャ側のエルゼルト、共に戻ってきた。
まだだ。まだ14人居る。戻ってきた6人は複雑そうな顔をしている。やる事もなく、ただ着いて来るのが、心理的に不安な状態にさせている。
「帰ったら皆に奢ってもらうんだから。そんな顔してる場合じゃないよ。お財布の心配しないと。1人1日奢ってもらうから、20日豪華な料理を食べられるね私!」
「えー…横暴ッすよー」
「ええ…豪華さによっては自分の小遣いなくなっちまう」
軽口を叩いていると少しホッとした空気が戻る。このまま維持しないと。
「私の特殊スキルかオルソーニさんでもないと今回対応出来ない事態になってるんで、悪いんだけど、一番安全圏なのは私らの周りだから、付かず離れずでついてきて。文句は組織に言っといて」
組織の人間は後一人だ。それを見つけてしまえばかなり楽になる。戻す作業の邪魔が居なくなるからだ。
「あ、索敵だけはお願い。人間かなりそこないを見かけたら私かオルソーニさんに伝えて」
言ってる間に、パシャの索敵に4人引っかかる。3マンセル+人間、と考えるのが自然か。
「オルソーニさん。右前方4人。」
「4人?…きついな」
「先に組織からヤった方が楽だと思う」
「居ると思うか」
「もう見える」
2人がなりそこない、1人が人間、もう一人が口に突っ込まれそうになっている団員だ。暗殺者の速度で組織の人間に体当たりし、なりそこない化を防ぐ。直ぐ後にオルソーニが続き、ボーラを団員の体から解いてやっている。吹き飛ばされる間にも、腰の銃で組織の人間の額に孔を開ける。迎え撃とうとしてきたなりそこない2人に傀儡を使う。
「動くな」
さっとリベラルを抜いて、モラティスをパシャが、エンリケをオルソーニが元に戻す。残り11人。組織の人間はなし。
「なあ、パシャ、あっち、なりそこないが」
言われてそちらを振り向くと、明らかに団員ではない顔の虹リベラル持ちが居た。大きい。
パシャは迫撃砲に持ち替え、その顔部分を吹き飛ばす。しおしおと萎んでいく死骸からリベラルを確保する。
索敵にはあと2人。そちらへ向かうと団員2人が猪を殺して食おうとしている現場に行き当たり、傀儡で動きを止める。後はオルソーニと2人、偽リベラルを抜いて元に戻す。
あと3マンセルが3つ、9人だ。
人数が増えてくると、段々後ろの面々も調子を取り戻してきて軽口を叩き合っている。
「お前生猪食おうとしてたぞー」
「え、ああああなんか覚えてる…そうだったかも…」
トラウマとして残らないかが心配だったが、多分この分なら大丈夫だろう。
「あ、あっちになりそこないが…」
さっと言われた方向を見ると3人、が固まって何かを食べている…?
「う…」
何が3人だ!心の中でまで嘘をついてたのか!?4人目が居るじゃないか…!
命令に失敗したのか、主導権を握るアイテムか何かを持ってき忘れたのか、はたまた仲間に嵌められたのかは知らない。が、人間を食べた味を覚えていたくもないだろうから、さっさと傀儡で動きを止める。
さっとリベラルを回収、一先ず2人を元に戻し、最後の一人をオルソーニに任せて食い荒らされた組織の人間の懐を探る。少し歪に2つが捩れながらくっついたような虹のリベラル1つとサイフを回収。鞄に投げ入れる。オルソーニも元に戻し終えたようだ。
人間を食べていた事は、誰も話題に出さず、戻れて良かったな、という言葉で3人を迎えている。残り6人だ。
気が緩みそうになるのを頬を叩いて喝を入れる。
最後の索敵地には、7人の反応があった。6名が残りの隊員だとしてもう一人はやはり組織の人間だろうか。様子見の為、暗殺のリベラルでさっと傍まで寄ってみると、冒険者らしき人物が両手両足を握られ、危うく千切られそうになっている。
「動くなぁアアアアア!!!」
冒険者も含めて全員が動きを止める。先にリベラルを抜いて回り、それ以上の事が出来ないようにしておく。合流したオルソーニと2人、6人を元に戻し、冒険者の人には口止めも兼ねて少し多目のお詫びのお金を渡した。
「とんだ実習だった…」
「ほんとにな…あれじゃ何の訓練にもなってないな」
「え、オルソーニさんそっち!?」
「いやいや、嘘だよ。組織本当に面倒くさい…」
ヤケクソ気味に騒ぎながら夕食を食べた後、疲れきったパシャは泡の魔法で綺麗にしてからベッドに入る。
――そして、はっと意識が戻ると一人で魔物を間引いてる所だった。
何が起こったか解らない。
最後まで成功していた道を辿りなおす。問題は帰ってからだ。誰かが組織の人間なのか、夜間に強襲されて気付かなかったのか。オルソーニには話して置く。愕然とした顔になるオルソーニに、掛ける言葉が見付からない。
全員を助け、組織の人間は殺し、冒険者は助けた。オルソーニとは、夜間見回りをする約束をしている。それまでの観察で挙動に不審な点がある人間は、残念ながら絞れてしまった。外部からの侵入ではない、内部犯なのだ。
容疑者は3名。そして見つけた。なりそこないに再度化けた3人を。
「動くな!!」
パシャの声に反応してオルソーニも駆けつける。さっとリベラルを抜く。生える、抜く、これを50回程繰り返した辺りでやっと生えなくなった。
この3人は、組織の人間を食べた団員だ。そして夕食が食べられなかった3人でもある。軽口にも乗ってこず、ぼんやりと皆の輪に入っているフリだけをしていた。多分、あの組織の人間は肉を食べた者がそうなるよう体を弄られた人間だったのだろう。
3人の体を元に戻し、部屋へ寝かせに行く。そのまま部屋の前で待機する。朝まで大丈夫ならもう問題はなさそうだと思う、というパシャの意見で、じゃあ朝まで見張ろうという事になった。
朝方、うとうとしながら2人が見たのは、いつもと変わりない3人だった。安堵と疲れで、パシャとオルソーニはそのまま意識を失った。
パシャが目覚めて、ベッドの中に居る事に安堵する。そう言えばリベラルを口に入れておけば良かった、と思いながら、次に寝るまで後回しだ。
ごそごそと泡を浴びて体とベッドを綺麗にすると、訓練着のままだったので、そのまま食堂へ向かう。
食堂には、欠ける事無く全員が揃っていた。オルソーニも居る。安堵で笑顔になりつつ涙が一粒零れる。
「早く注文しないと、食いっぱぐれるぞ!」
慌てて注文し、受け取り口には席の近い団員が来て、代わりに受け取ってくれた。
「俺ら寝た後、まだなんかあったんだろ?あんなヘンなとこで2人で寝て」
「うん、もう終わったから大丈夫だよ」
「…………解った、追求しないでやるよ」
「その方がいいよ」
「で、奢る順番は決まったのか?」
「え?あれアイスブレイクじゃないんですか?!」
「パシャは食べるよ?」
「ぇえ~…き…決めときます…」
一気に団員が騒がしくなるのを笑顔で見ながら、パシャは頬を押さえながら美味しいご飯を食べた。
第5番隊がまた甘味目当てで来たが、隊長さんに「なんでこんな時間になって飯食うてはんの?」と首を傾げられたくらいだった。平和だ。
最後のお楽しみ、デザートを一口づつ蕩ける顔で食べていたパシャは、隊長からデザートを貰った。至福だ。
20日間豪華なご飯を奢って貰うのが楽しみですね、パシャさん!
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