不死者掃討作戦
今日は朝9時から『ODO』の世界に飛び込んだ。昨日は朝日が家に不法侵入かましたり、レベリング集中しすぎたりしたせいで不死者軍団の攻略が全く進んでいない。その分を今、取り返そうという訳だ。
「ふう、先ずはスキルの確認からだね。」
昨日は疲れていてあんま覚えてなかったからね。改めてステータスを確認する
◇◇シイタケ◇◇
Lv:7
種族:菌人 所持金:0G
本職:死霊使い
副職:薬師、神官
HP:162/162
MP:92/92
状態異常:貧血
・スキル:菌使役、死霊使役、闇魔術、死体回、採取速度上昇、調薬、黄泉神の加護、暗闇の住民、七死八生、集中、ど根性、応急処置、窮鼠猫嚙、作業効率up、菌根ネットワーク、操魔術
・魔法
マナショット
マナマシンガン
ダーク
ダークボウル
ダークショット
ダークマシンガン
ボディコントロール
・技
菌糸体
菌糸縫合
子実体❲❳
胞子拡散
装備:古ぼけた魔導書、穢れた銀の銃、アイテムポーチ、破けた修道服
アイテム:調薬台、死霊使いの指南書、調合書
───────────
サクッと確認していこうか。
『マナマシンガン』、連射ができるマナショット。1発ごとに7MP消費。自然回復は撃ち終わってから2秒後開始。DPSは高め……なのかな?サンドバッグが欲しい。
『ダークマシンガン』、1発で12MPも消費する。自然回復も8秒後。重すぎるので使う予定なし。
『ダークボウル』。闇属性の球を発射、……ではなくお椀状の闇を指定した位置を中心に展開し閉じ込める技。範囲は半径10mぐらい。指定できる位置は自キャラから6m、つまり11mまでなら捕獲可能。勿論、外部からの侵入もできる。
消費2MPの自然回復開始は1秒後、軽め。但し、持続は20秒かつ使用者も出入りは不可。自発的な解除も不可なので、使い所は気をつけなければいけない。
そして、特殊効果として中にいる状態で『ダーク』を使用することで2つが融合。
自キャラを中心に半径10mの、『ダークボウル』付きの『ダーク』と化すのだ。
但し、このコンボが成立するとMP消費が倍の40MPとなる上、自然回復の無効化もちゃんとある。今の所は使えない技だ。
『菌糸縫合』。無意識的に使っていたバラした体を繋げるやつ。
『ボディコントロール』。体を操る魔法。MP消費は対象の質量依存。MP消費は対象の質量依存。腕ぐらいなら5MPで充分だ。挙動は割と無茶苦茶、ポルターガイストみたいに浮かせられるからロケットパンチなんかもできる。……炎魔術習得しようかな?
そしてなりよりMP回復が即開始するのでコスパ最強だ。
強そうだけど、これ傷を塞がないと出血でHP減るんだよね。私だからこそできる運用だ。
まあ、私の練度の問題か精密動作はできないから、飛び道具代わりが限界だけど。
スキルは相変わらず説明がなくて分からん。詳しい数値は載せなくてもいいから概要を教えてくれ。
「現状使える手札は『マナショット』ぐらいかな。『ダークショット』は効かなさそう。『胞子拡散』はぶっつけ本番になるかな。」
死体だし、有効だと嬉しいんだけど。
うーん、手札が弱い。というか、魔法で使えそうなやつがなさすぎる。どうしようか、マナショットを撃ちながら考えてみる。
腕を切り離して、手首だけにして、菌糸で繋いで……。
やっぱり、反動はないんだよね。ファンネルとしてはかなり優秀、……だけどあの不死者たち私の体を食べてたよね。
下手したら『肉を切らせて骨を断つ』つもりが『骨肉を断って餌をやる』迷惑餌やり系高校生になってしまう。
どうしようか、アーツを上手く戦闘に組み込めるかな?例えば、菌糸体をボディコントロールで操るとか。
「まあ、できるわけ……できた。」
左腕の断面から伸びた菌糸が、水揚げされた魚みたいに暴れ回っている。
筋肉と同じ要領で、うんできちゃった。
「……これ以上、机上論を挙げてもキリないね。」
よし、後は実戦で試すか。
◇◇◇◇◇
昨日、いや一昨日ぶり?とにかく、私は再び地下室に足を踏み入れた。不死者の徘徊はなし。七死八起もあることだし、気楽に死んで覚えますか。
という訳で、DIEジェスト開始。
1戦目、とりあえず不死者たちの感知範囲の特定。大体、扉から3mの位置で襲いかかってきた。死なないとリセットされないかもしれないので、集団に突っ込んで死亡。
ついでになんか、私みたいな不死者も発見した。
閃いた!!不死者になった姉妹を引き連れるの良くない?グヘヘっ余裕があったらテイムするために残すか。
2戦目、菌糸体の糸を地面スレスレに張る。予想通り、足を引っ掛けてくれッ!?、待ってドアが菌糸体に………不死者(私)に食われて死亡。
3戦目、開いた扉に引っかからないように気を付けて菌糸体を張る。結果、転んだ奴を踏み越えて来た不死者に食われ死亡。
4戦目、網状に張って足止め作戦変更。突破されて作戦頓挫死亡エンド。
5戦目、趣向を変えてぶっとい菌糸体を振り回す。大したダメージが入らない。死亡。
6戦目、菌糸体を纏い『シイタケ マイセリウムカスタム』に変身する。ここは特撮ヒーロー物の世界じゃないので初登場補正なんてものはなく、菌糸体ごと食われてぽっと出に相応しいエンディングを見せられる。
7戦目、マイセリウムだぁー!!!!(???)。錯乱して大量の菌糸体で押す。パワー負けで押し返され窒息死。
8戦目、今こそ試そう胞子拡散。準備段階の子実体を美味しく頂かれて失敗。でも、食った不死者は痙攣してぶっ倒れた。9人の私が痙攣している姿はとても興奮した。そして、見惚れて固まっていた私は無事食われて死亡。
もしかして、私って不死者増やしてるだけ?
9戦目、菌糸体を操りお口にプレゼント。嬉しさの余り不死者は痙攣する。そして、需要に供給が間に合わず殺到したお客様に食われて死亡。
記念すべき10戦目、此処で決着を付ける。というか、付かなかったから今日はもう無理。
私、これが終わったら朝日と一緒に遊ぶんだ。
閑話休題、今回は事前に自キャラである程度は検証済み。思い出すだけで興奮……私の天才っぷりに感激する。懸念点は、スキルが他人に干渉できるのかということである。
つまりは博打だ。
そうこう考えている内に感知判定に入り、殺到する不死者共、この光景にも慣れてきた。
先頭集団はお誂え向きに11人の私だった。
まずは菌糸体を口から体内にぶち込む。
次に喉から胃へ、胃から腸へ菌糸を伸ばし、粘膜から血管、筋肉、皮膚と侵食を広げる。
ここまでくれば仕上げだ。『ボディコントロール』で体内に張り巡らした菌糸体を操作。更には『菌根ネットワーク』を使って神経と接続……、できた!!筋肉をも掌握する。懸念点もクリアだ。
そこまでやって私は11人の不死者をその場に留める事に成功する。正確なラジコン操作なんてできなくても良い。私の姉妹の体から子実体を生やす。名付けて『強制テイム肉壁作戦』だ。
いや、違う。聞こえてる。11人の姉妹からの「頑張って」、「仇敵を打って」という声が。
姉妹の体がキノコごと食われる。四肢がもげ、ドロっとした血が舞う。それでも私の姉妹は耐え抜く、私を助けるために。
私も応えなければ、『菌糸縫合』でサポートをしつつ、私の姉妹に群がる不死者共に弾丸を打ち込む。
頭が痛い、疲労感で倒れそうになる。
駄目だ、ここで倒れたち姉妹たちの執念が無駄になる。
これが終わったら、そうだね、皆でたい焼きのカスタードをめいいっぱい食べよう。だから、持て!!私の身体!!
私たちの積年の思いを弾丸に込めて──
──遂に不死者たちを一掃した。
無数に転がる頭を貫かれた死体。その中に混じって、肉片や布切れが転がっている。
無事に残ったのは姉……………………、『マツタケ』の死体のみ。後は…………『ツキヨタケ』と…………『マイタケ』の2人は菌糸縫合を使えばどうにかなりそう。
残りの8人は損傷が激しすぎて判別がつかない。そう、決して名前が思い付かなかった訳ではないのだ。
そういえば、スキルに『死体回収』があったはずだ。アイテム化できるのではと考えた私は居ても立っても居られずマツタケを手に取る。
[『防腐処理済みの死体』を入手しました。]
ビビった。いきなり声が聴こえてきたから、ビクッと跳ねてしまった。ついでに何か踏み潰した。姉妹、じゃないね。良かった。
閑話休題。アイテム名の『防腐処理済み』という表記が気になった私は説明を読んでみた。
◇◇防腐処理済みの死体◇◇
防腐処理が施された死体。保護魔法を掛けずとも長持ちし、『屍操魔菌』によって動屍体化することもない。
───────────
なるほど?この説明的に死体は長持ちしないのかな?これ『死霊使いの指南書』に書かないといけない奴では?
いや、それがこの世界だと周知の事実だから書いてない可能性も……。
朝日と遊ぶ時に聞けばいいか。
とりあえず、ツキヨタケとマイタケの欠損部を菌糸縫合で治して……足りない。あまりに痛々しすぎる姿で連れ回すのは気が引けるし、動きに支障が出るかもしれない。
なんとかするしかないか。
ツキヨタケは穴だらけ、筋肉は菌糸縫合で縫い付け補完する。後は露出した中身を肉塊を菌糸体で纏めたもので隠してと。マツタケより機動力は落ちるだろうけど、誤差の範疇だろう。
ちょいグロいな、というか他の2人含め素っ裸だ。服を用意しなければ……。
マイタケは、バラッバラだ。ただ運がいいことに潰れてぐしゃぐしゃな部位は少ないため、菌糸体で継ぎ接ぎにすれば大丈夫だろう。
上半身は
下半身はもう、分かんない。ぐちゃぐちゃの肉塊に混ざっている。
とりあえず断面を菌糸体で塞ぐけど、マイタケは非戦闘用員に任命だ。一応、魔法を習得する可能性もあるけど、当分は倉庫番だね。
これで連れていける、姉妹の回収・処置は完了だ。私が弾丸で倒した有象無象共や肉片は、まあ持っていって損はないだろう。防腐処理されているかだけ確認して回収しておく。
[『防腐処理済みの死体』を入手しました。]
[『防腐処理済みの死体』を入手しました。]
[『防腐処理済みの腕』を入手しました。]
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おお、どんどんシステムアナウンスが鳴る。うるさいね。
それと、回収したアイテムは銃や指南書と同じ様に謎空間へと送られていた。『収納空間』みたいな収納系のスキルないけど。
まあ某テイマーRPGも各種回復薬をただのバッグで999個持ち《カンスト》できてたしいいか。
よし、次はお待ちかねの地下聖堂探索だ。どんなお宝が眠っているのやら。今から楽しみだ。
「なんもねぇ!!!!」
錆びた剣を床に叩き付けて私は絶叫した。まあ、それも仕方ない……、仕方ないんだ。仕方なくあってくれ。
それはそれとして。
マジで、なんも、ないのだ。
あるのは錆びた武具とか、埃を被った装飾品だとか。どれも、これも、スキルはおろかステアップもない飾り物だった。
マジでクソ喰らえ。このダンジョン考えた奴は地獄に落ちろ。
……落ち着け私。確かに、ここには何もない。でも姉妹の死体とスキルの数々は私が頑張って作り出した宝箱だ。
そうだね、そういうことにしよう。
とりあえず、服、服、チャイナドレス?なんで?…………自分で使う用に回収。ナニに使おうかな?
え〜っと、セーラー服(スカートは長め)、軍服?、これは……ゴスロリ?あかん、辛うじてジャンルが分かるだけで、どれが何なのか分からん。
こんなことなら、ファッション誌とか読んどくんだった。とりあえず、3人に着せるようで回収。
……死霊使い系シスターとJKゾンビ、軍人ゾンビ、ゴスロリゾンビ、メンツがカオス過ぎる。
次に比較的マシ……高そうな宝石──『ムーンストーン』という名前のアイテムを3つ。加工すれば姉妹へのプレゼントになるだろう。
最後にネックレス。齧られた桃が逆十字に貫かれている不吉すぎる装飾が入っている。名前は『黄泉神さまのネックレス』だ。……首に掛けておく。
僅かな物資と実戦経験を手土産に、私は地下聖堂を後にした。
本編に入れられないので。
◇◇ボロボロのセイラー服◇◇
ボロボロになってしまった謎の服。海兵の制服に似ているが細部が異なり、おそらく転移者が着ていたと考えられる。
全体に血がこびり付いており、着用者がどうなったのかは言うまでもない。
◇◇ボロボロの魔物連合軍礼装◇◇
旧魔物連合の礼装、ヒト型魔物用のもの。血が付いていないにも関わらず、濃厚な血の臭いが漂っている。
また、シンプルではあるが装飾の一つ一つが丁寧に作り込まれており、相応の位の者が着ていたと考えられる。
◇◇ボロボロのドレス◇◇
ボロボロのドレス。サイズは大人用だが、フリルやリボンがふんだんに使われている。
血が固まったような黒一色で織られており、不気味なオーラを放っている。
◇◇黄泉神さまのネックレス◇◇
黄泉神さまを信仰する者のためのネックレス。逆十字は現世の神と相容れぬことを、齧られた桃は黄泉戸禊を表しているとされている。
◇◇ムーンストーン◇◇
月の魔力を宿した魔法石。暗闇の住人に力を授けると言われている。