誰ぞ彼時の怪
途中で別視点に切り替わります。
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「お主、幾らでも死んで良いと言ったが──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「おーい、我の声が聞こえ──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「何回死ぬつもりじゃ。一応──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「えぇい!!あんなスキル渡すんじゃな──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「もう面倒じゃ!!我の権限で手続きの時間はカッ──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「茶菓子が美──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「お主も食わ──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「おーい、無視──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「ちっとははな──」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
「倒れても知らんぞ!!」
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
右腕を切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、落とした腕を操作する、死ぬ。
三肢を切り落とす、首も切り落とす、断面を菌糸で塞ぐ、切り落とした三肢と胴を操作する、死ぬ……。
──あれ?いつの間にか訓練方法エグくなってる。とりあえず、体を菌糸で繋いでくっつけて……いつの間にこんなの習得したんだ?
駄目だ、思い出せない。多分、無意識により効率的的な訓練をしていたんだろうけど絵面がホラー過ぎる。
まあ、私がヤベーやつなのは今更か。
そんなことより、ステータスの確認しよう。
◇◇シイタケ◇◇
Lv:7
種族:菌人 所持金:0G
本職:死霊使い
副職:薬師、神官
HP:162/162
MP:92/92
状態異常:貧血
・スキル:菌使役、死霊使役、闇魔術、死体回、採取速度上昇、調薬、黄泉神の加護、暗闇の住民、七死八生、集中、ど根性、応急処置、窮鼠猫嚙、作業効率up、菌根ネットワーク、操魔術
・魔法
マナショット
マナマシンガン
ダーク
ダークボウル
ダークランス
ダークショット
ダークマシンガン
・技
菌糸体
菌糸縫合
子実体❲❳
胞子拡散
装備:古ぼけた魔導書、穢れた銀の銃、アイテムポーチ、破けた修道服
アイテム:調薬台、死霊使いの指南書、調合書
《《称号》》
[狂人]
狂った行動を行ったプレイヤーに贈られる称号。この称号を持つものは状態異常:誘惑、洗脳、萎縮、恐怖を無効化する。
[死に急ぎ]
連続で50回死んだ者に贈られる称号。この称号を持つものは蘇生時間が1分短縮される。
[自傷体質]
自傷行為を50回行った者に贈られる称号。自傷ダメージを軽減する。
[貧血体質]
大量の血を失った者に贈られる称号。常に状態異常:貧血を受ける。また、状態異常:貧血によるデバフを無効化する。
────────────────
「Lv低!?」
もしかして、1時間も経って……2時じゃん!?深夜の2時じゃん。私が始めたの朝からだよね。ごはん抜きでぶっ通しでやってるじゃん!?ああやばい、めっちゃお腹が空いてきた。ログアウトしないと!!
◇◇side???◇◇
「点呼取るぞ〜!!ジャジャジャ!!」
「あーい」
重厚な鎧を観に纏った獅子獣人の男性の呼び掛けに、ローブを羽織った下半身が蛇の男性が気怠げに答えた。
獅子の男性はその凶悪な顔を顰めるが、ジャジャジャと呼ばれた男性はどこ吹く風という態度を崩さない。
「全く……春風邪!!」
「ほーい。」
春風邪と呼ばれたのは、ピンクの髪にピンクの可愛らしいワンピースを着込んだシイタケ目の少女だ。
但し、頭には天に伸びた立派な双角、肩からはコウモリの様な翼、そして腰と背の間に細長い尾を生やしている。
更には子憎たらしい笑顔を浮かべており、100人中100人が小悪魔だと認めるだろう。
「……………スリスリバチ。」
鬣から湧く火の粉を必死に抑え、獅子の男性は最後の1人の名を呼んだ。
「ひぃぃぃっ!?すみませんすみません!!ゴマスリパシリ、カツアゲに暗殺まで何でもするんでご命だけは!!」
「うわー、レオレオがスリ君泣かせたー。いーけないんだーいけないんだー。」
「レオンだ。」
ここぞとばかりに春風邪は獅子の男性──レオンを煽り始めた。
「……すまなかったスリスリバチ。今度アイス奢ってやるから、な?」
レオンは2mはある巨躯を縮め、足元にあった液体を溢しながら嗚咽を出す壺を優しく撫でた。
「本当ですか?」
「ああ、勿論」
すると、壺から流れる液体が徐々に粘性を備え始め、
「300円の奴を5つでお願いします。」
「わかったわかったそのぐらいで、ちょっと待てなんて言ったッ!?」
哀しいかな、壺の側面を赤らめ舌舐めずりをしていたスリスリバチにその言葉は届かなかった。
「ぶふぉっwww」
「何?アイス買ってくれんの〜?」
「お前の分は買わんぞ!!」
「アイス、アイスー。」
決定事項だと言わんばかりに喜ぶスリスリバチ、その変に肝が据わった要求に頭を抱えるレオン、吹き出す春風邪、話を聞いてなかったジャジャジャ。
4人?の間になんとも言えない空気が流れていた
──それから4人はギルドで「スライム討伐」、「走梟の捕獲」「ミミックに捕まったエルフの救助」、「木から降りれなくなったケルベロスの救助」などなど様々な依頼を受け数時間。すっかり周囲の景色は暗くなっていた。
「さて、今日受けた以来はこれで最後だな。」
「なあ〜、本当にこの依頼今日やるの?明日で良くない。」
4人の現在位置はマヌケリア連峰にあるとある場所に来ていた。
「ジャジャッチさー、明日は予定あるって言ってたよね?もしかして、逃げちゃうの〜?ざーこざーこ♡」
その場所とは淡い水色に染まった霧に包まれた森だった。至る所に開いた渦状の異空間ゲートが開いており、その異様な風景から、『迷いの霧森』と現地民に呼ばれている。
「い、依頼内容はゲートの配置がか、変わってる気がするからちょうは、調査して欲しいとのことです。この依頼にはジャジャジャさんが必要不可欠です。」
レオンに抱えられたスリスリバチも、ジャジャジャを引き止めようと話しかける。
「気がする、だろ。そもそも、自分たちで管理しているものの調査を余所者に任せんなよな。」
「それはそうだが、この時期は祭りの準備が忙しいらしい。それに、できるなら踏破してもいいと村長から言質は取っている。」
「……はいはい、分かりましたよ。やりゃあいいんでしょ。」
すました雰囲気を出していたとしても、ジャジャジャもまたゲーマーであり、「初めて」ということばは甘美な蜜だった。
故に気怠げに装いながら了承するとこにした。
「ま、仕事すんのは俺じゃねえけどよ。」
ジャジャジャのローブの裾から次々と蛇が姿を現し、霧の中に消えていった。
「では、俺も探しに行ってくる。くれぐれも、問題行動は起こすなよ。」
スリスリバチを地面に置いたレオンは革鎧に着替えると、屈強な四肢で走り去って行った。
それを見届けたジャジャジャはスリスリバチに手を近づけ、
「スリバチ、地図。」
「わ、分かりうぼおぉぉぉー!?」
「うわー、かわいそ。辞めてあげなよ。」
スリスリバチの中に手を突っ込んで中を漁り始めた。
それに引いた春風邪はジャジャジャを止めようと腕を掴むが、ステータス差か。ジャジャジャの腕はびくともしなかった。
「あったあった。現在地も入ってる。マジックマップを渡すとか、お人好しなんだね村長さんは。」
「ゴホッゴホッ。ジャジャジャさん、酷いですよ。」
「そうだよジャジャジャ。誤ってあげな。」
咳をするスリスリバチを撫でながら、春風邪はジャジャジャを避難する。存外に、面倒見はいいようだ。
「あーはいはい。土産に東京メロン買ってやるから許してちょーよ。」
「ジャジャジャ!!それじゃ──」
「10箱でお願いします。」
「……。」
「ええー……。スリ君は現金だね〜。」
そして存外に、スリスリバチは非常識だった。
──4人が『迷いの霧森』に入ってから小一時間、ジャジャジャが霧に紛れて帰ろうとしたり、スリスリバチが春風邪にホールケーキを強請ったり、色々なことがあったが、
「この異空間かなー。マジックマップに載っていないのは。」
やっとこさ件の異空間を見つけ出した。後はレオンに蛇の遣いを出し合流するだけである。
「ジャジャッチすっごーい。いつもは、後ろで適当に蛇撒いて遊んでるだけだけど〜。偶には、野生のゴキブリ並には役立つね。」
「あーあー、それはどうも。誰彼構わず挑発して怒らせる、戦力的に±−10なインキュバスに褒められて俺も嬉しいよ。」
但し、
「……おっ?やるか?へなちょこ根暗蛇。」
「や、やめまちょ、しょうよー!?」
問題行動をしなければ、と枕詞がつくが……
結果としてはバチバチと火花を散らせる春風邪とジャジャジャの2人、1番不味い状況だとスリスリバチは捉えた。こういう時は大抵、
「じゃあ、先にこの異空間を攻略した方がラーメン奢ってね。ま、私が後衛ざこざこインキャに負けるはずないけどね〜。」
「言ったな、クソガキインキュバス。財布すっからかんになっても泣くなよなー!!」
「えっ……?ああー、ちょっと!!」
古今東西の様式美、2人は同時に異空間に突っ込んで
いや、
「レオンさんは問題行動を起こすなって……そんなものよりラーメン奢りです!!」
スリスリバチ含む3人が未知の異空間に突っ込んでいった。
◇◇◇◇◇
[『異空間:誰ぞ彼時の森』に侵入しました。]
先人を切るは春風邪とジャジャジャの2人。
2人が異空間に入ると同時にシステムボイスが脳内に流れ込む。
「黄昏の空、たそがれ、たれぞかれ、今までにないセンスのダンジョンだね〜。」
「そうだなー。」
会話の内容そのものは呑気であったが、2人は互いに睨み合っていた。
刹那、2人は左右に分かれて駆け出す。一方は魔力感知を全開に、もう一方は蛇を撒きつつピット器官を使い、周辺を探りながら森を疾走した。
「ちょっと、僕も入れてくださいよ〜。」
遅れてスリスリバチが異空間に入る
スリスリバチは横倒になり、液体を撒き散らしながら真っ直ぐ森を転がる。
──果たして、最初に攻略するのは誰か?
「建物見〜つけた!!一番乗りは私だー。ジャジャジャは雑魚乙〜。」
魔力感知をしたところ、とある一箇所を除いて反応を感じなかった春風邪。
他に目印になりそうな物も無かったため、其処へと全力疾走をした訳だが、
「行かせるかー!!」
「げっ!?足に蛇がッ!!」
ジャジャジャによって足止めをされる。ジャジャジャは春風邪とは異なり全方位を隈無く探索していたため遅れはしたのだ。しかし、春風邪より先に目星は付けており、尚且つ春風邪が来ても妨害出来る蛇を先回りさせいた、
「分からせてやんよ。メスガ──「ラーメンは僕のだ!!」──うおッぶねぇな!?」
しかし、ここで乱入者が来る。偶々最短距離の直進を選んだスリスリバチが追いついたのだ。、何の躊躇いもなく即死効果付きの呪剣をジャジャジャに投げつける。
「いや、スリスリバチ!!躊躇いなく即死ナイフを仲間に投げるな!!」
「僕は殺人者になってでも、ラーメンが欲しいんです!!」
「覚悟ガンギマリだね〜。では、2人はごゆっくり雌雄を決し──」
「「行かせるか!!」」
始まるのは三つ巴の乱闘。ナイフが飛び交い、蛇の大群が地面を覆い、魔法が咲き乱れる。
そんな混沌を止めたのは──
「アヒャヒャッ!!」
「「「!?!?!?」」」
教会から響いた笑い声だった。
「おい、スリスリバチ──」
「ち、ちちち違いますよ。そんな頭おかしい声出さないですよ。」
一体どの口が言っているんだ、という突っ込みを飲み込んでジャジャジャは舌を教会に向ける。
感覚を研ぎ澄ませば、
「ッ!?」
「どうしたのジャジャっち?ピット器官なら輪郭も見えるでしょ。」
ジャジャジャは考えた。これは果たして本当か?と。確かにこのゲームはグロくはあるが、設定でモザイクも入れられるし、ましてやこんな魔物は見たことなかったからだ。
故に思考が遅れ、
「何も無いなら開けるよ。」
「待」
扉がゆっくりと開く。その先には、
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャー!!」
狂ったように笑う女性の首。血を撒き散らし踊る腕と足。
「うわっ……」
「「ッヒュ!?」」
直後、SAN値が急上昇した2人は気絶した。
「ええ……、確か2人ともモザイクかけてたよね?と、ザコすぎない?」
残ったのは春風邪ただ一人。春風邪はジャジャジャを担ぎ、壺を手に取ると教会に背を向けた。
「それにしても、私そっくりだな。」
2、3歩歩き、しかし何を思ったのか。立ち止まり後ろに振り返った。
「………楽しそうなら………………、止めなくていいか。」
それだけ言い残し、春風邪は帰路についた。
◇◇◇◇◇
「おい、問題行動は起こすなと言ったよな?」
「あー、レオレオ。これには深いわけがアデッ!?」