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最高な先行投資

※グロ注意です




 現在、朝の9時。不死者(アンデッド)にぼこぼこにされた後セーブをし、私は眠ることにした。

 で、起きたら


「丈乃ちゃん!!聞いてるの!?今度からは勝手に通話を切らないでッ!!」


「私は良いけど、人ん家に勝手に入──」


「話を逸らさないッッッ!!!!返事はッ!!??」


 ……マジで話聞かないなコイツ。私も人のこと言えないけど。まあここは、


「すいませんでした。」


「よろしい。」


 私の誠意が一切込持っていない謝罪に朝日は満足した表情をしていた。……鋭いんだか、鈍いんだか分からないな。


「それで、用事終わった?」


 まあ、話は済んだだろう。帰ってもらって──


「なーに言ってんの?本題はこれからだよ!!」


 ……待ってましたと言わんばかりに朝日は声を張り上げた。はぁ……。


「丈乃ちゃん、変な空の世界にスポーンしたってホント?」


 あれ?そのこと言ったっけ?……言った……かも。


「あー……そうだよ。」


 まあ別に間違ってもないし、言ってなかったとしても良いだろう。世の中には気にしない方が良い事もある。例えば、先週玄関の鍵を変えたばかりなのにあっさり不法侵入されてることとか。


「じゃあ、やっぱり丈乃ちゃんは異空間(ダンジョン)が初期地点なんだね。」


「……ダンジョンってどういうこと。」


 確かにあの教会、ダンジョンだと言われればそんな気もするけど、


「ダンジョンの中が初期地点って普通ないでしょ。」


「それがあるんだな〜。よし、まずは『Other Dimensions Online』のストーリーを私がざっくり説明してあげよう。」




──その昔、この大陸中を支配する大国がありました。しかし、今から百年前に事件が起きたのです。突如として、不可思議な霧が王都を包みこんだのです。

 そして霧が晴れた時、()()()()()()いました。まるで最初から何もなかったかのように、抉られた地面だけを遺して。


 それ以降、この大陸では不可解なことが起きるようになりました。

 王都と同じ様に人や物、或いは土地が『霧隠し』にあったり、異空間(ダンジョン)に繋がる(ゲート)が現れたり。


 教会は王都と共に姿を消した『聖地』と(かみにえらばれしもの)を取り戻すために、霧の調査を開始しました。


 一方、将軍はこれを好機と見たか土地を占領し新たな国を興しました。


 今まで蔑まれてきた魔物や精霊たちは人類滅亡を掲げました──




「そして霧隠しにあってこの世界に飛ばされたプレイヤーたちは、元の世界に戻るべく霧の先の異空間(ダンジョン)に挑む!!転送先であるアホイヤ教国、バカタリヤ帝国、マヌケリア連邦はそれぞれの目的のために協力してやるぜ!!っていうのがこのゲームのストーリーだね。」


「一切合切、そんな話聞かされてないんだけど。」


「それはそうだよ、普通は三国の何処かに飛ばされるよ。」


 ええ?それってさ。


「バグじゃない?」


「公式曰く、仕様らしいよ?」


 何それ、運が悪いと他のプレイヤーたちから出遅れるってことじゃない?


「一応、メリットもあるよ。」


「どんなのがあるの?」


 なんか思考盗聴された気がするけど気にしない。


「難易度低い割に良いアイテムが落ちてる、ぐらいかなあ?」


 難易度が低い?いや、不死者以外にはモンスターいないし、そもそも私の職業が──


「はい、丈乃ちゃん。対話中に自分の世界に入らない。」


「ごめん。」


 と、どうにもこの悪癖は治りそうもない。いや、治す気がないだけだけど。


「良いよ良いよ。それよりさあ、丈乃ちゃん、以外と大きいよね。良い触り心地だったよ。」


 私の胸を見ながら朝日──いや、変態が言う。


「殺す。」


「わっはっは、鬼ごっこしようか。丈乃ちゃんが捕まえたら、……私をめちゃくちゃにして良いよ//」


 頬を赤らめんじゃねぇぞ、変態が。


「いいよ……ひき肉(めちゃくちゃ)にしてやるッ!!」


 その後、私は必死に朝日を追いかけたけど全然捕まえられなかった。子どもと大人くらい身長差があるし勝てる道理がなかった。



◇◇◇◇◇



 何とか朝日を家から追い出した私は、ゲームにログインした。

 スポーン地点は昨日と同じ教会内。地下への階段は閉じてあり、不死者も見たところはいない。


「暫くは教会が拠点かな。」


 朝日以外のプレイヤー以外と遊ぶ予定はないし、設定も練れてないからね、暫くは引き篭もることにする。


「先ずは外の探索かな。出入り口の場所も確認したいし。」


 崩れた壁をよじ登り、外に出る。やはり、不気味な空間だ。常に黄昏時の空。枯れた草木に覆われた森。


 全ての異空間(ダンジョン)がそうなのか、ここだけの特徴なのか分からないけど、なんだか特別な雰囲気を感じる。


「……いかんいかん。雰囲気に圧倒されてどうする。さっさと探索を終わらせないと。」


 ダークを展開し、私は森に踏み出した。


 足を踏み入れてわかったけど、地面が泥濘(ぬかる)んでいて歩きずらい。というか、今更だけど私は裸足だった。

 何で今までに気づかなかったんだ?


 うん、見たところマジで何もないし私のアバターの設定を固めよう。


 そうだね。私はこの教会で何が行われていたのか何も知らなかった新人シスター。

 小さい頃に両親がモンスターに殺されて、私自身も左腕を失う大怪我をした。

 しかし、運良く通りがかった勇者一向に救われて一命は取り留めた。


 その後は私も勇者一向の様に誰かを助けたいと考え、シスターを目指した。だけど、その教会では非人道的な実験をしていて……。


「ん?何だあれ?」


 森?の中で怪しいものを見つけたので近づいてみる。良い子は真似しちゃ駄目だよ。

 見たところは3mくらいの青く光る渦だ。


「あー、あれが出入り口か。」


 確か私はパイプオルガンがある方を北として、南側に進んだはずだ。


 距離は歩いて30分くらい。


「疲れるな。そもそも、このダンジョンに端あるのかな?」


 流石に際限なく広がるなんてことはないと思うけど。端から先に進んだ瞬間に真反対の座標に飛ばされるとかだったら、遭難しかねない。


 私は探索を切り上げて教会に戻ることにした。



◇◇◇◇◇



「残りの探索は……不死者を使役(テイム)してやらせるか。死体は……」


 不死者軍団しか当てがない。

 という訳で、あいつら攻略の糸口を探すためにに先ずは『死霊使いの指南書』を読み込むか。


 手を翳すと、虚空から銃や魔導所と同じようにして指南書が現れる。


『──死霊使いとは、怨霊(ゴースト)または不死者(アンデッド)と契約し使役する職業(ジョブ)である。怨霊との契約は難易度が高いため、この本では不死者との契約を主軸に解説していく。』


 なるほど、ゴーストとの契約は難しいと。なんか、ゴーストになってる人ってヤバそうだしね。


『先ずは不死者とは何か?について解説をしていく。不死者とは、精神力や魔力によって動く死体の事である。注意点として、動屍体(ゾンビ)とは菌系魔物が動かす死体を指すものなので混同しない様に。』


 ……ややこしい。何でアンデッドとゾンビで別々の存在にしたんだ。


『多くの場合、生前有していたスキルの殆どは失っている。残っているとしても、《棘の鎧》や《鋭爪》等の肉体由来のものが多い。《魔術》や《剣術》等の技術由来のものや、《心眼》や《龍の血》の様な精神力・魔力由来のものは例外はあれど失っていることが殆どだ。故に、不死者を扱う場合は数を揃えることが必須だ。』


 なるほど、あくまで不死者は捨て駒と。もしかしたら怨霊は生前のスキルを有しているけど、契約は難しいみたいな調整なのかな?


『Step.1 死体を操作しよう

まずは死体を使って、魔力の流し込みやマニュアル操作で動かすことを習得するのが良い。これを繰り返し行うことで、死体への理解と魔力操作の精度を深めることができる。』


 死体への理解?筋肉は友だちみたいなノリで極めたくはな……い…………いや、私のキャラ設定とロールプレイの完成度を上げるためには必要では?(※要らないです

 でも生憎周りに死体はない。仕方ないか。私は教会を歩き周り、いい感じの割れたガラスを見つけた。長さは大体、18〜22cmくらいか。

 捲れた床を支柱に菌糸体で覆い固定。

できるか分からないけどものは試しだ。


「ふんっ!!」


 ザシュッ!!と音がし血が吹き出す。でもね、まだだ。何度も何度も私の右腕を叩きつけると。数にして20、漸く私の腕が転げ落ちる。痛い。マイセリウムで断面を覆って即止血と。

 っと、血が漏れてる。あ〜HPも減ってる。これは……良い練習になるね。魔力を流し込みつつ、ダークを展開しつつ、マイセリウムを上手く操作して完全に塞げる状態を探る、それに加えて更に死体の操作も行う。


 一石四鳥だ。私って天才………



◇◇◇◇◇



「お主馬鹿か?」


 気づけば真っ暗な世界にまた来ていた。む〜、まだ魔力の流し込みしか出来てないのに。


「蘇生までの時間、後払いに出来ないかな。」


「お主は何を言っている?」


「さっさと腕切り落として練習したい。」


「親御さんが泣くぞ。」


 そんなこと言われてもなぁ〜それしか方法ないし。というか、なんか前と違う様な?


「それはそうじゃろう。自分のステータスを見てみろ。」


 ……最近は思考盗聴が流行りなの?


 とりあえず、言われた通りにステータスを開く。


「ステー──」


「魔法や技もそうじゃが、その程度の児戯に詠唱はいらぬぞ。」


「……ありがとうございます。」



◇◇シイタケ◇◇


Lv:1

種族:菌人(クサビラビト) 所持金:0G

本職(メインジョブ):死霊使い(ネクロマンサー)

副職(サブジョブ):薬師、神官


HP:120/120

MP:80/80


・スキル:菌使役、死霊使役(ネクロマンス)、闇魔術、死体回、採取速度上昇、調薬、黄泉神の加護、暗闇の住民


魔法(マジック)

マナショット

ダーク

ダークボウル

ダークショット


(アーツ)

菌糸体(マイセリウム)

子実体(フルーティングボディ)❲❳

胞子拡散


装備:古ぼけた魔導書、穢れた銀の銃、アイテムポーチ、破けた修道服

アイテム:調薬台、死霊使いの指南書、調合書


《《称号》》


[狂人]

 

 狂った行動を行ったプレイヤーに贈られる称号。この称号を持つものは状態異常:誘惑、洗脳、萎縮、恐怖を無効化する。



──────────



 称号と地味に新魔法がある。ログ出ないんだ。定期的にチェックしなきゃだね。で、称号の方は……


「あー、そうか。貴方に対する恐怖心がなくなったのか。」


 なんか話しかけやすいと思ってんだよね。


「しかし、何とも不思議じゃ。死に近い我と話した時や亡者に食われた時は恐怖を感じたのに、自傷行為には恐怖を感じないとは。」


 死に近い?あー、もしかして黄泉神さま?なのかな?まあ、今はそんなことは良いか。それより、質問への解だけど


「なんの意味も、なにも次に活かせない死は嫌だけど、次に活かせるなら幾らでも死ねるよ私は。」


「なるほど、な。」


 噛み締める様に天の声、黄泉神さまは呟く。


「面白いのう、その姿勢。若い割に達観しておる。先行投資じゃ。そんなに死にたいなら幾らでも死ぬが良い。」


 ❲黄泉神:○○○○○○よりスキル:七死八生(しちしはっき)を授かりました。❳


 これはログ出るんかい!?


「ほれ、再誕の準備はできたようじゃぞ。精々、死に死に死んで冥土から抜けれる様に頑張るんじゃな。」


 その言葉を最後に、機能と同じ様に視界が白く染まり──



 ──気づけば教会に戻っていた。なんかデジャブだな。


 閑話休題、ステータスを確認してみよう。


◇◇シイタケ◇◇


Lv:2

種族:菌人(クサビラビト)

本職(メインジョブ):死霊使い(ネクロマンサー)

副職(サブジョブ):薬師、神官


HP:122/122

MP:82/82


・スキル:菌使役、死霊使役(ネクロマンス)、闇魔術、死体回、採取速度上昇、調薬、黄泉神の加護、暗闇の住民、七死八生


魔法(マジック)

マナショット

ダーク

ダークボウル

ダークショット


(アーツ)

菌糸体(マイセリウム)

子実体(フルーティングボディ)❲❳

胞子拡散


装備:古ぼけた魔導書、穢れた銀の銃、アイテムポーチ、破けた修道服

アイテム:調薬台、死霊使いの指南書、調合書


《《称号》》


[狂人]

 

 狂った行動を行ったプレイヤーに贈られる称号。この称号を持つものは状態異常:誘惑、洗脳、萎縮、恐怖を無効化する。



──────────

 


 Lvが上がってる?もしかして、死ねば死ぬほどLvが上がるの?


「………………。」


 黄泉神さまは、黄泉神さまは、………


「しゃあーーーッ!!」


 なんて優しい人、いや神さまなんだ!?死んだらLvが下がるどころか上がるなんて!!破格すぎる。


 余談だが、後に朝日にこのことを話した丈乃は1週間朝日の抱き枕にされたという。

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