71章Side:BA 大変身大作戦
「…マーシャル…!どうやら、またあの手を使う時が来たようだ…!」
「…何ですか、急に?」
研究室でデストロイ・デュラハンを更に発展させる研究をしている最中にシユーザーが話し掛けてきた。
「私の華麗なる変装術の事さ。御頭デパートで人間に変装したろう?園場志湯痤というユニークな名前をつけた!シチゴウセンで唯一無二さ!潜入任務を熟せるのは私しかいない…!」
「…あぁ、ありましたね。それが何か?」
「鈍いなぁっ、マーシャル!あれでデュラハン・パークにスパイできないか、と思いましてね!」
また唐突に妙な事を思いついたものだ、とマーシャルは内心呆れつつも付き合ってあげた。
「しかし、スパイならもう送り込んでいるも同然でしょう?まぁ、セキュリティが固くてなかなか中に入れていないようですが…。」
「あぁ、あいつは気分屋だし、スパイとは言わん。入る気なんて初めからない。ただ散歩を楽しんでるだけだ。やはり、私自らが出向かなくては…!」
「…変装、と言っても誰に変装するつもりなんですか?」
シユーザーの変装は能力ではなくて、元となる人間を誘拐した後、外見をコピーしてラバースーツを研究室で作り、着るという手間が掛かる作業だ。つまり、園場志湯痤の外見もコピーに過ぎない。特殊なゴム素材で作ってあるため、尖った身体のデュラハンでも凹凸を収納できて、違和感なく普通の人間の姿になる事ができる。ただし、身長を縮める事や声を変える事はできない。
「ふっふっふっ、デュラハン・ガードナーの関係者に変装するのだよ?そうすれば、パーク内を堂々と歩けるという訳さ!」
「なるほど。ですが、誰がデュラハン・ガードナーのスタッフなのか見分けられるのですか?あそこには一般社員もいますよ?」
「…わからない。」
「…そうでしょう。」
マーシャルはやれやれ、と思って研究に戻ろうとする。
「それにシユーザー様が変装できる事は御頭デパートの一件で、あちらももう承知済みでしょう。もうその手は通じないと思いますよ?」
「た、確かに…。残念…。私の変装が…。いや、諦めるにはまだ早い…!きっとまだ私の変装には使い道があるはず…!」
マーシャルは聞き流して研究を続ける。
「マーシャル、あなた、以前にパーク内の実験エリアまでワープできてますよね?」
マーシャルのワープ能力は一度行った場所にならどこにでもワープできる。
「えぇ、ライガ様がジークヴァルに倒された時に。でも、あれはデュラハン・ガードナーがわざとライガ様をパーク内に誘導するために一部の通路を開けていたに過ぎませんからね。」
「そ、そうだった…。」
「確かにまた実験エリアまでワープはできますが、そこから先に行くには難しいでしょう。入るなら、ハッキ…。」
マーシャルは今の会話で閃いた。シユーザーとの会話も嫌がるものではないな、と考え直した。
「…シユーザー様、私に良い考えが思いつきました。あなたのおかげです、ありがとうございます。」
「えっ?あ、あぁ!さすが私だ!自分の意思の領域外から君に知恵を与えてしまうとは…!?私は自分の天才さが恐ろしい…!」
シユーザーが自分に酔っている最中にマーシャルは自分が思いついた策を実行するためのデストロイ・デュラハンの制作に入った。ちょうど良いデータがあるので流用ですぐに完成しそうだ、とマーシャルは笑む。
「…ところで、スラン様がいなくなった件はどうするのですか、シユーザー様?」
「ん?あぁ、あんな敵前逃亡する若輩者はどうでもいいですよ。ディアスやラクベスが勝手に捜索に行ってますし、そちらに任せたらいいでしょう。私は興味なーい。」
そう言ってシユーザーは無気力になってエネルギー切れの人形みたいにそのまま椅子に座った。おかげで静かになったので開発は順調に進み、新たなデストロイ・デュラハンが完成した。
「よし、では早速行ってきます。シユーザー様はどうします?」
「ん?そうだなぁ〜っ、いいや!君だけで行きなよ!吉報を待ってるよ、マーシャル!私は私の変装能力をうまく使えないか考えるから!」
シユーザーの言う事を最後まで聞かずにマーシャルは開発室から出た。
「…いきなり、パークまでワープしてもいいですが、この服装じゃ目立つし、すぐに私だってバレますね…。…そうだ、それこそ変装する必要がありますね…。」
マーシャルは自室に向かい、服を取り出した。
「御頭デパートで私も変装しないかとグルーナに無理矢理渡された服が役に立ちそうですね…。ふふっ、これを着れば私たちを裏切ったグルーナを悔しがらせる事ができる…!私に服を送った事を後悔するがいい…!」
マーシャルは普段着を脱ぎ、水色の上着にピンクのシャツ、白いロングスカートを着て白い帽子を最後に被った。
「こ、これは私には全然似合わないのでは…!?」
マーシャルは着た後に恥じらいを感じ始めた。
「…まぁ、いい。よし、行こう。」
マーシャルは気を取り直して部屋から出る。
「「あ」」
廊下でライガと遭遇した。刻が止まる。
「…へぇ〜っ!いやぁっ、いきなりべっぴんさんが俺の目に飛び込んできたかと思ったら、お前、マーシャルか!見違えたぜ!」
「失礼します。」
マーシャルはライガを無視して高速で駆ける。
「お、おい!そんな格好でどこ行くってんだい?誰かとデートかい?まさかシユ」
「それはない!です。」
「お、おぅ…。」
目の前にマーシャルの怒り顔が急に出現し、焦るライガ。マーシャルは溜め息をついて目を瞑り、腕を組む。
「…今から地球へ行って自分で考えた作戦を実行するんですよ。」
「作戦?またファッションショーとやらにでも出るのか?」
「怒りますよ?」
「おぉっ、怖っ!」
マーシャルはライガを睨んだ後、また高速で去る。
「…とにかく!私はもう行きます!失礼!」
「おぉ、気をつけてな!いやぁっ、訓練の後に良い目の保養だったぜ!」
会ったのがライガで良かったのかもしれない。これがレイドルクやシユーザー、ましてはダジーラクだったらもう死んでいたかもしれない。マーシャルはそう思いながらさっさとワープした。御頭街の公園近くにワープを完了する。
「今回のデストロイ・デュラハンは性質上、パートナーはいりませんね。」
マーシャルは街を探索する。すると、電気屋のテレビに目をつけた。
「これならいいでしょう。さぁ、行きなさい。」
マーシャルはデストロイデバイスを取り出し、テレビの画面に紫の光の玉を入れた。
「よし、次は…。」
マーシャルはデトネイトランドレイク戦を思い出し、会社エリアの物陰にワープした。
「後はさっきのテレビからここに来るまで待つ…。ふぅっ、さすがに連続でワープするのは疲れます…。」
マーシャルはしばらく腕を組んでぼーっとしていると見知った顔が目に入った。
「…姉さん?」
間違いなく潤奈だった。何やら嬉しそうにビルに入っていく。マーシャルは潤奈の後をつけた。会社エリアの食堂に着く。食堂までなら一般人も入る事ができる。
「…って、何で私は姉さんをつけてるのか…?」
マーシャルは自分でもわからずに潤奈を見る。何やら自販機で券を買った後、嬉しそうに席で待っている。
「…あんな姉さん、久々に見た…。」
マーシャルは楽しそうにしている潤奈を見て少し動揺する。自分の家族を捨てたマーシャルにはもう不用の感情のはずだ。潤奈は何やら店員に呼ばれ、食事を持ってきた。
「…あれは…。」
マーシャルはゆっくりと潤奈の方に歩いて行く。嬉しそうにご飯を眺めている潤奈を見るとひどく懐かしい気持ちが溢れ出してきた。潤奈は色んな具が入った粉の固まりのような食べ物を一口食べる。その姿を見たら、つい
「… 何をそんなに楽しく食べてるんですか、姉さん?」
声を掛けてしまった。




