63章 無双する人魚
道人たちの眼前には大軍のキャルベンの戦士たちが集う。大地も海もキャルベンの戦士で埋め尽くされている。当初の木倉下たちが帰ってきたら戦う場所を変える考えは断念せざるを得ない。大神たちスタッフは前方に退路がないため、神殿内に退避するしかなかった。
「海音さん、あのキャルベンの戦士と知り合いなんですか?」
愛歌がグゲンダルを指差して聞く。
「…はい、彼女はグゲンダル。キャルベンの姉妹将軍の妹の方で力押しの戦術を得意とする戦士です。」
「ラクベス!しっかりしてよ、ラクベス!」
ラクベスの異形の姿を見て叫ぶスラン。既にラクベスには意思がなく、静かに立っている。長く細い角がある頭で背中や両肩には固い甲羅がついている。
「無駄無駄ぁっ!既にこのカブトムシはカブトガニになった!オレらのキャルベンセンス、イカしてるだろう?理解、理解!」
「ふざけないで!ラクベスをもとにもどしてよぉっ!」
「オレのギャグが不理解だっての?信じられない!理解不能!もういいや!話は無意味!全軍突撃ぃっ!」
グゲンダルが右手を上げるとキャルベンの戦士たちとディフィカルトクラーケンMk-2、ラクベスは道人たちに向かって突撃する。木倉下はディフィカルトクラーケンMk-2の能力が付与された護身用の矢尻を周りに投げて宙に浮かせ、自分の身を守る。
「なるほどな、海音の言う通りだ!早速ゴリ押しで来やがったぜ…!」
「みんな、各自応戦!数じゃこちらが不利だ!リーダー格を倒して、ラクベスを助けよう!」
「えっ?ラクベスを、たすけてくれるの…?」
道人の指示を聞き、スランは不思議そうにしていた。
「当ったり前じゃない!」
「あの方はスランのお友達なのでしょう?ならば、助けない理由はありません!」
「みんな…!うん、おねがい!ラクベスをたすけて!わたしも、いっしょにたたかうから!」
愛歌と海音の優しさに溢れた言葉を聞いたスランは高揚し、薙刀を構えて敵に向かった。ジークヴァルたちも既に多くの兵士相手に交戦状態に入っている。
「…皆さん、私の正体はもうわかっているんですよね?なら、もう隠す必要はありません!」
「み、海音…?」
隣にいた海音を深也は見る。海音が宙に浮き、光に包まれる。スカートのポケットからパールのネックレスを取り出し、紐を引きちぎって宙に浮かせた。
「ビーネ・イオーシャ・ア・クアン!」
海音が呪文を唱えると全身が光になり、服が消えてパールが次々と海音の身体に当たって鎧になっていく。右手に巻き貝の槍を、左手に貝殻の盾を持つ。全身の光が消え、海音は人魚騎士の姿へと変わって着地した。
「人魚騎士ミオン、ドレスアップです!」
「はぁっ!?」
隣にいた深也は思わず大声を上げた。
「み、海音さん、本当に人魚騎士だったんだ…。」
「うん、たまげた…。」
道人とスランも海音の変身に驚く。
「…いい…!いいなぁ〜っ…!憧れるじゃん、変身ヒロイン!」
愛歌はテンションが上がって目に星マークを浮かべて輝かせ、右手で握り拳を作る。
「おぉっ…!?に、人魚騎士ミオン…!?」
「こ、こらっ!狼狽えるな、お前たち!」
キャルベンの戦士たちも人魚騎士の姿を見て恐れ戦く。
「み…海音、お前…?」
「ごめんなさい、驚かせちゃいました?この姿が私の本当の姿でして…。」
海音は槍と盾を宙に浮かせ、照れながら両手の人差し指同士を何度もタッチする。
「とにかく、海にいるキャルベンたちは私に任せて下さい!私を手伝って、シーラ!」
海音は防水特化スマホをポケットから取り出す。スマホから光の玉を出し、デュエル・デュラハンのシーラを出現させる。
「何?海音?」
「何っ!?お前、十糸姫の糸まで持ってたのかよっ!?」
「わっ!?びっくりした。あ、君、前に砂浜で倒れてた男の子かぁ。元気だった?」
シーラは深也に向かって右手を振った。
「ごめんなさい、深也。隠し事多くて…。後で説明しますから、ね?さぁ、我が同胞のキャルベンたち!人魚騎士がお仕置きしちゃいますよ!えいっ!」
海音はスマホを操作し、シーラにアンカーヘッドを装着させた後、宙に浮かせていた武器を掴んで高く跳ぶ。両足をマーメイドの足ヒレに変えて海に入った後、上半身を海上に出す。アンカーシーラは隣でホバーで海上に立つ。
「な、何が人魚騎士だ!所詮、古の戦士に過ぎん!か、掛かれぇっ!」
海にいるマーメイドデュラハン軍団は海音とアンカーシーラの周りを囲んで海面を跳ねる。両手に海水を纏わせ、水の大太刀を放つ準備に入る。
「さぁ、分身体の方々には容赦しませんよ?せぇい!」
海音は巻き貝の槍に水の竜巻を発生させ、そのまま勢いよく前に突くと水の竜巻が前方に飛び、マーメイドデュラハンたちを吹き飛ばす。
「やるね、海音!よぉし!」
アンカーシーラは両手に光の鎖で繋がれた錨を持つ。右手に持った錨を前に投げる。光の鎖は際限なく無限に伸びていき、マーメイドデュラハンの一人の身体に当たった。錨が形を変え、マーメイドデュラハンの身体を捕縛する。
「な、何だっ!?取れない…!」
「そりゃ、そうだよ。ホールドしてるもん。今から君がハンマー役ね。そぉれ!」
アンカーシーラはホールドしたマーメイドデュラハンをハンマー代わりにして自分の頭上まで持ってきてぶんぶんと振り回す。
「○✖️△□〜っ…!?」
「それ、当たってけぇ〜っ…!」
アンカーシーラは振り回した後、前方にいるマーメイドデュラハンにハンマー代わりにしたマーメイドデュラハンを激突させる。
「それ、そのままグルグル〜!」
ハンマーにしたマーメイドデュラハンをぶん回しまくり、他の多くのマーメイドデュラハンたちを蹴散らしていく。
「ぐわあぁぁぁーっ!?」
「はい、ぼちゃん!」
今までハンマーにしていたマーメイドデュラハンを解放し、海に落とした。
「よし、次はあれをハンマー代わりにしよう♪」
気絶して海上に浮かんでいるマーメイドデュラハンに錨を投げ、新たなハンマー代わりにして再びぶん回す。
「次は君がハンマー代わりになるかもよ?」
「ひえっ…!?」
マーメイドデュラハンたちはアンカーシーラを見てびくついた。
「怯むな!応戦っ!!」
マーメイドデュラハンたちは両手を振り、水の大太刀を海音目掛けて飛ばす。
「分身体には容赦無用です!」
海音は貝殻の盾にわざと水の大太刀を受ける。貝殻の盾は水を吸収し、盾一面に水が纏われる。
「お返しです!」
盾に纏った水を巨大な水鉄砲のようにして前に飛ばし、マーメイドデュラハンたちに直撃させた。
「うわあぁっ!?」
「それ、それ、それ!」
海音は今、吹っ飛ばしたマーメイドデュラハンたちに急接近し、巻き貝の槍をドリルのように回転させ、連続突きを繰り出して宙に浮かせる。
「あなたたちに本物の水の大太刀をお見せしましょう!せぇぇぇい!」
連続突きで宙に浮かせたマーメイドデュラハンたちに対し、空を横一閃すると巨大な水の刃が飛んでいき、マーメイドデュラハンたちは斬り裂かれた。
「ええぇぇっ…?海音さん、滅茶苦茶強いじゃん…。」
ディフィカルトクラーケンMk-2の触手対策で道人の後ろにいた愛歌は海音の無双っぷりにたまげていた。
「すごい…。あれが生ける伝説…。」
道人もあまりの凄さにポカンとしている。
「た、確かにすげぇが、俺らは俺らの戦いに集中するぞ!」
「う、うん!そうだね!」
「ごめんごめん!」
深也の言葉に納得し、道人と愛歌は自分たちの戦いに集中する。
「ちっ、兵士が相手じゃ分が悪いか…。理解!オレが相手だ!」
「将軍自らがっ!?」
グゲンダルは空を飛び、海音とシーラの前に立ちはだかる。
「お前たち、下がれ!ミオンの相手はオレがする!」
「おや?私相手に泣きべそをかいていたグゲンダルお嬢様が大きく出ましたね…。」
海音はジト目でグゲンダルを見る。
「黙らっしゃい!!いつの話をしている!?あんたはオレを不理解!以前のオレと同じだと思うな!それを理解!」
「ならば、久々に稽古と参りましょう!」
「だから、先生ヅラはやめろ!」
グゲンダルは左手のハサミから極太ビームを放ち、海音とアンカーシーラは左右に分かれて避けた。




