62章 トモダチ
木倉下が去った後、大神たちデュラハン・ガードナースタッフが神殿内に入り、調査を行なった。木倉下は協力者を連れてまた来ると発言していたため、戦闘に巻き込んでしまう可能性を考慮して警察は呼ばずに調査をする事になった。木倉下の言う通り、神殿内は荒らされていて行方不明の海音の手掛かりになりそうなものは何も見つからなかった。
「海音さん、どこ行っちゃったんだろう…?」
「うん、心配だね…。無事だといいけど…。」
道人と愛歌は神殿入口近くの階段に座り、話していた。何時襲ってくるかわからない木倉下を待ち構えているのだ。深也は腕を組んで壁に寄っ掛かっていて、ジークヴァルたちもボディにインストール済みで神殿の外に立っている。木倉下たちが来たらスタッフたちの安全を考え、場所を移動して戦う算段だ。
「うーむ…。」
「どうしたの、ジークヴァル?」
ジークヴァルたちは何か考え込んでいるようで話しかけてみた。
「いや、彼女と会話した方がいいんだろうか…?」
「あ、うん…。そっか…。」
道人たちと少し離れた所の岩にスランが体育座りして寂しそうに座っていた。
「シチゴウセンの一人だもんね…。どう話し掛けたらいいか…。」
「…よし、あたしが話し掛けてみる!」
「あ、おい、愛歌!」
愛歌がスランの元へ歩き始めたので道人とジークヴァル、トワマリーもついていく。
「こんにちは、えっと…スラン、だったっけ?」
「あ、うん。こんにちは。」
普通に挨拶を返してきた。意外と礼儀正しいのだろうか?と道人は思った。
「あなた、海音さんに会いに来たって言ってたけど、どういう関係なの?」
「わたし?わたしはみおんとともだち?なのかな?ダジーラクさまにあるめいれいをされたんだけど、きにいらなかったから、きばらしにちきゅうにきたの。みおんとあそぼうかなって。」
「そうなんだ。命令って、何が気に入らなかったの?」
「それがね、しちごうせんのじかくがわたしにはたりないから、じぶんでさくせんをたてて、なんでもいいから、いのちをかりとってみせよ、って。」
「えっ…?」
道人と愛歌は今の発言を聞いてお互いを見た。再びスランの方を向いて話を続ける。
「そっか、乱暴な事言われたんだね。お気の毒だ。」
「うん、おきのどく!わたし、ちきゅう、きれいだからすき。とくにうみがすき。すきとおったあおいうみがだいすき。さかなもすき。とくにみおんとあそんでいたさかながとってもすてき!」
「そっか、そっか!気に入ってもらえて何より!」
「うん、なによりだね!」
思いの外、愛歌とスランの会話は弾んでいて眺めている道人とジークヴァル、トワマリーも不思議と和んでいた。
「シチゴウセンって血の気が多い奴らばっかだと思ってたが、話の通じそうな奴もいるんだな。」
深也とランドレイクも道人たちの近くに寄ってきた。
「あ、ひどい。わたしをライガやレイドルクといっしょにしないでよね。しつれいだよ、きみ。」
スランはびしっと深也を指差した。
「わ、悪かった…。そりゃっ…。」
深也も調子が狂ったのか、返事に困った様子だった。
「あ、そうだ。自己紹介してなかったね。私は愛歌。」
「僕は道人。」
「深也だ。」
「ジークヴァルだ。」
「トワマリーヨ。」
「ランドレイクだぜ!」
「わぁっ、いきなりたくさん…。えっと、愛歌、道人、深也だ、ジークヴァルだ、トワマリーヨ、ランドレイクだぜ、だね。」
「ふふっ、いや、一部語尾はいらないよ?」
愛歌たちはスランの天然さに思わず笑ってしまう。
「ねぇ、スラン。良かったらさ、あたしたちも友達にならない?あたしさ、ダーバラとは敵対関係だったんだけど、闘ってる内に何か仲良くなりかけたんだよね…。だけどさ、うん…。」
「あ、うん…。」
「…だからさ、戦わずに済むシチゴウセンがいるんなら、あたしは仲良くなりたいと思ってる訳よ!」
「うん、いいよ!きょうから愛歌たちはわたしのともだちね!」
スランは物分かりがかなり良くて道人たちは戸惑った。
「わぁっ、素敵です…!スランにいきなりこんなに友達ができて!良かったですね、スラン!」
「うん、うれしい!」
「良かった、海音さんも喜んで…って、海音さあぁぁぁぁぁ〜ん!?」
「はい?何でしょうか、道人さん?」
両手に買い物袋を持った海音が突然現れて道人たちは驚愕する。
「お、お前!今までどこ行ってたんだよっ!?」
即座に深也が突っ込みを入れる。
「はい、昨日皆さんがまたいらっしゃるという事で。皆さんを歓迎するために朝早くから商店街に買い出しに…。あ、皆さん、ようこそ!水縹星海岸へ!歓迎致します!」
「いや、そうじゃなくて!みんな、海音さんの事、心配したんですよ!?」
愛歌も海音に突っ込みを入れる。
「おや?はて?まぁっ…!」
道人たちは自分たちが神殿に来た際に起こった出来事を海音に説明した。
「あらあら、そんな事が。すみません、ご心配をお掛けして。誰でしょうね?神殿内を荒らしたのは。早く片付けないといけませんね。」
「みおん、あいたかったよ!」
スランは海音に飛んで抱きついた。
「おやおや、スラン。遊びに来てくれたのですね、よしよし…。」
海音はスランの頭を右手で優しく撫でる。
「皆さん、立ち話も何ですし、どうぞ中へ。もうすぐお昼ですし。」
「いや、聞いてたか、お前!?木倉下が仲間連れてまた来るって言ってんだろ?」
「聞いてますよ、失礼な。ですが、腹が減っては戦は何とやらと言いますし、まずはご飯を…。」
「ミツケタ、スラン!!」
道人たちの後ろで大きな音がし、土煙が舞う。ラクベスが跳んできて、地面に着地したのだ。
「おやおや?今日はお客さんがたくさん!今度はカブトムシさんですか。」
「ラ、ラクベス?どうしてここに?」
道人たちはすぐに戦闘態勢に入り、ジークヴァルたちは道人たちの前に立つ。
「オマエヲ、ムカエニキタンダ。サァ、カエロウ、スラン。」
ラクベスはスランに向かって右手を優しく前に出す。
「ラクベス、むかえにきてくれたのはうれしいけど…。かえってもダジーラクのだしためいれいがきえるわけでもないし、わたし、ころされるだけだよ…。」
「チガウンダ、スラン。ダジーラクハ、イクサジマデ、イッテイタ。オマエハ、マダテヲ、ヨゴシテイナイ。ジャクハイモノ、ダカラ、ソノウチ、ワカッテクレルッテ。」
「でも、シチゴウセンのしかくをとるって!ゆえあればころすって!どこが、じきに、なのよ!?」
「ダジーラクサマハ、ダーバラヲウシナイ、ディサイドノキョウイモシリ、テキタイセイリョクモ、イキナリフエタ。センリョクガ、カケタカラ、オマエニハヤク、イチニンマエニ、ナッテホシイカラ、アアイッタンダ。」
「でも…!」
スランはラクベスから視線を逸らし、愛歌たちを見た。
「わたし、きょう、ともだちがふえたの!わたしがみおんがいないからってこまっていたら、きづかって、はなしかけてくれたの!ちきゅうじんはわるいひとばかりじゃない、いいひとだっている!わたしにはちきゅうにある、いのちをかりとることなんて、ほろぼすことなんて、できない!したくないよ!」
「スラン…。」
海音と愛歌はスランの発言に喜びを感じ、つい名前を呼ぶ。
「スラン、オマエ…。オマエハ…。」
ラクベスは身体を震えさせる。ジークヴァルたちはラクベスが怒りに任せて攻撃してくるのではないかと警戒する。
「…オマエハ、ホントウニ、イイヤツダナ…。」
「えっ…?」
ラクベスから意外な言葉が出てきたのでジークヴァルたちは思わず、気を緩めた。
「スラン、オマエハ、ヤサシイ。オレハ、ノロマデ、アタマガワルイ…。シユーザータチニモ、ヨクバカニサレル。ケド、オマエハ、チガッタ。オマエハ、コンナオレヲ、バカニセズニ、キガルニハナシカケテクレタ。タタカイノアトニ、オマエガハナシテクレル、チキュウノ、サカナノハナシヲ、キクノモ、タノシカッタ…。」
「ラクベス…。」
スランは右手を胸の顔に当てて苦しそうにする。
「デモ、ソウカ…。オマエカラ、ヤサシサガ、ウシナワレタラ、モウアノ、タノシイヒトトキハ、ナクナッテシマウノカモシレナイナ…。」
ラクベスはスランを無言で見つめる。
「…ワカッタ。スラン、オマエハ、オレノダイジナ、『トモダチ。』オマエガ、クルシイコトハ、オレモクルシイ…。オイ、イガイトヤルヤツラ。」
「な、何だ?」
急にラクベスが話し掛けてきたので道人は慌てて返事をした。
「スラン、オマエタチニ、シバラクマカセル。オレ、ダジーラクサマヲ、ナントカ、セットクシテミル!スランニ、ナニカアッテミロ!オレガ、ゼッタイユルサナイカラナ!」
「わ、わかったよ!」
「スランは私の大事な友達です!絶対に守ってみせます!」
道人と海音がラクベスに対して強く返事をする。
「オマエタチ、オレヲ、ニドモマカセタ、イガイトヤルヤツラ!シンライ、デキル!ジャア、マタナ、スラン。ハナレバナレニナッテモ、オレタチ、トモダチダゾ?」
スランがラクベスに返事をしようとしたその時。
「いいねぇっ!戦いの中、敵・味方同士の間柄ながら、仲良くなる!素晴らしく、貴重な光景だ!理解に値する!」
「グッ…!?」
謎の女戦士がラクベスの上に乗り、左手のハサミでラクベスの頭を掴む。
「貴重だからこそ、壊しがいがある…なぁっ!」
左手のハサミでラクベスの頭を投げ捨てた後、右手に持った別の頭パーツをラクベスに無理矢理つけた。
「グッ、グオアァァァァァーッ…!?」
「ラ、ラクベス!!」
「てめぇっ、何者だっ!?」
スランと深也が叫ぶ。ラクベスは両手で頭を掴み、取ろうと足掻くが外せずに苦しむ。
「ニ、ニゲロ、スラン…!オレガ、オレジャ、ナクナルマエニィッ…!?グオアッ!?」
ラクベスの周りに追加装甲が出現し、どんどん装着されていく。
「いいね、いいねぇっ!敵と和解しそうになったところを別の敵が台無しにする!なるほどぉっ、これがDULLAHAN WARの醍醐味か!理解!」
「そうですねぇっ、姉貴ぃっ!」
木倉下とディフィカルトクラーケンMk-2が大群の魚人デュラハンが姿を現す。
「木倉下の協力者って、キャルベンの事だったの!?」
愛歌が驚いた後、道人たちは戦闘態勢を取る。
「…その悪逆非道な行い、昔から何も変わっていないのですね、グゲンダル…!」
「み、海音…?」
怒りを露わにする海音の姿を見て驚くスラン。
「ふん、久しぶりだな!人魚騎士ミオン!
貴様こそ、相変わらずの甘ちゃんぶりだな!不理解!」
グゲンダルは海音を見下し、嘲笑した。




