53章Side:深也 前編 リベンジハート
深也とランドレイクは戦島から出た後、会社エリアのモノレール乗り場から外に出て立ち止まった。
「…さて、行くぜ、ランドレイク。行き先は御頭公園だ。あの爺さんは絶てぇそこにいる…!」
「へへっ、でしょうね!あの爺さんが俺らを待つ場所って言ったらあそこしかねぇ。」
深也とランドレイクは近くの御頭公園まで走った。が、行く途中で首無し兵士七体と遭遇する。
「ちっ、邪魔しやがって…!ランドレイク、あの爺さんと闘うまでヘッドチェンジはなしだ。いいな?」
「そりゃ、当然!雑魚相手に俺の九分間はあげられねぇよ!さぁ、どいたどいたぁっ!」
ランドレイクは両手に装飾銃を出現させて連射し、七体の首無し兵士の身体を蜂の巣にしながら歩く。
「そらそら!どうした、どうした!?俺に触れる事もできねぇか、おい!なぁっ!」
ランドレイクは両手に持った装飾銃を宙に投げ、七体の首無し騎士を殴っては蹴り、あっという間に破壊し、機能停止させた。
「ふぅっ!何だよ、ウォーミングアップにもなりやしねぇっ!」
「さ、行くぜ。」
深也がさっき宙に投げられた装飾銃二丁をキャッチし、ランドレイクに軽く投げて返した。しばらく無言で歩くと御頭公園が見えて来た。深也の予想通り、公園の真ん中で腕を組んでレイドルクは立っていた。
「…来たか。」
「おう、待たせたな、爺さん。さっさと始めようぜ。」
深也は鞄を地面に置き、ポケットに入れていたデバイスを手に取る。地面に置いた鞄を少し眺めた。
(芽依、稲穂…。お前らの想いが籠った天使のぬいぐるみ、ここに置かせてもらうぜ…。)
深也は少し笑みを浮かべた後、すぐに殺気に満ちた顔になり、レイドルクを睨む。
「さて、もう我らに言葉は不用…。」
「ただ死合うのみ、ってかぁっ!」
「そうよ…!わしを楽しませよ、海賊…!」
ランドレイクとレイドルクは互いに睨み合う。深也が強く右足を地面に踏み直したのがゴングとなり、ランドレイクとレイドルクは前に跳び、お互いに両手を握り合って力比べをした。硬直状態になる前に先にランドレイクがレイドルクの胸の顔に三回蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
レイドルクは痛みを感じ、後ろに下がった。
「行くぜ、ランドレイク!ヘッドチェンジ!パイルバンカー!」
深也はカードを実体化させ、デバイスに読み込ませた。
『あなたはどんな壁が立ち塞がろうとも己を貫けますか?』
「へっ、そんなの俺の得意分野だ!」
『承認。』
ランドレイクにホーンのついた頭が新たに装着され、右腕に大型のパイルバンカーが装着される。
「すかさず奴の首を掴め、ランドレイク!」
「おっしゃあっ!」
ランドレイクは左腕を伸ばし、レイドルクの首を掴んだ。
「そのまま地面にぃぃぃぃぃーっ…!」
「叩きつける!!」
ランドレイクは首を掴んだレイドルクを持ち上げた後、地面に倒した。
「ぐっ、やるのぉっ…!じゃが…!」
「相手と長く闘いたいから、防御力の高いヘッドをつけてる…だろ?」
「…!」
「そのためのパイルバンカーなんだよぉっ!全弾打ち尽くせぇっ、ランドレイク!」
「オラァッ!出し惜しみなしだぁっ!」
ランドレイクは右腕のパイルバンカーをレイドルクの腹に当て、何度もパイルを打ち込んだ。打ち込む度に薬莢が宙を舞う。
「ぐおぉっ…!?ぬかったわぁっ…!?」
「オラオラ!十六、十七、十八、十九…!」
最後の二十発目を放つ前にレイドルクを持ち上げ、腹に改めてパイルを当てる。
「ラストォッ!二十パァーッツ!!」
最後のパイルバンカーでレイドルクは空高く舞い、地面に倒れた。ランドレイクが首を掴んでパイルバンカーを打ったため、龍の頭が取れていた。
「ぐっ…!?何と…!?」
レイドルクの腹にヒビが入り、激痛が走った。腹を押さえて立ち上がり、ランドレイクと距離を取る。
「じゃが、パイルバンカーはもう弾切れ!追撃できまい!」
「できるんだなぁっ、これが!」
ランドレイクは落ちた薬莢を次々とサッカーのシュート練習のように蹴り、レイドルクのいる方向へ薬莢を飛ばした。
「何と!?薬莢を武器にするとは!?」
「そして、すかさず…!」
「なっ…!?」
「どらぁっ!!」
ランドレイクはレイドルクが飛んでくる薬莢に注意を奪われている隙に近づき、パイルに薬莢を刺して即興でハンマーを作り上げ、胸の龍の顔をぶん殴った。
「ぐっ…!?いかん、流れを完全に取られた…!調子に乗らせん!」
レイドルクはすかさずランドレイクの右足に蹴りを入れようとするが、ランドレイクに足を掴まれた。
「何とっ!?読まれただと!?」
「うちには優秀なオペレーターがいてなぁっ!お前は危機に陥った際、必ず右足を攻めてくる癖があるんじゃないかと予想したのよ!」
「おのれぇっ、勉強熱心…!!」
「ありがとさんよぉっ!」
ランドレイクはそのままジャイアントスイングし、コージードームにぶん投げた。
「よっしゃあっ!よくやった、ランドレイク!」
「押忍、船長ぉっ!」
ランドレイクが両手でガッツポーズを取るとパイルバンカーヘッドが時間切れになり、元に戻った。レイドルクはまだよろけながらも立ち上がる。
「…くっくっ、かっかっかっかっかっ…!素晴らしい…!素晴らしいぞ、お前ら!
まさかわしがここまで手玉に取られるとは…!愉快愉快!いやぁっ、あれからまだ三日しか経っておらんというのにまるで別人じゃ!」
「そっちが三日で歳取ったんじゃねぇか、爺さん?」
「はっ、減らず口を言いおって!」
「俺は負けた試合の後は必ず自分を見つめ直すようにしてるんでなぁっ!次にあんたと闘う時、こうすればいいんじゃねぇか、ああすればいいんじゃねぇかとぽんぽん思い浮かんでよ!夜眠れねぇ訳よ!」
深也は自分の額を人差し指で三回軽くタッチする。
「そして、たくさん思案して俺が作り上げた、このあんたを打倒するためのヘッドパーツたち!そして、それを使いこなす優秀な相棒と、分析を手伝ってくれたオペレーターたち!」
「船長…!俺の事、優秀って…!」
ランドレイクは胸の顔の瞳をうるうるさせる。
「これらがうまくいってリベンジが決まる瞬間が俺はたまらなく好きなのよ!」
「なるほど、それがお前をデュエル・デュラハンとやらで準優勝の結果を残せた腕前の秘訣か!良いぞ!お前の好きとやら、もっと知りたくなってきた!」
レイドルクは右手に禍々しい頭を出現させる。
「…わしはお前たちに一度土をつけたからと言って正直、見下しておった…。許せ、誇り高きリベンジハートの持ち主たちよ。」
「爺さん…。」
「お前たちには是非、このわしの最高の頭を見せてやりたくなった…!わしは普段、防御に特化した頭を装着しておるが、これは逆!攻撃に特化した頭…!これを今経験させてやる…!覚悟せい!」
レイドルクは勢いよく禍々しい龍の頭を装着すると装甲が新調され、肉体が更にマッシブに変化する。パイルバンカーのダメージも消え、万全の状態になった。
「おいおい!それは初見だから対策しようがねぇぜ、爺さんよ…!」
「闘いの中で、わしの真価を見極めてみせよ!小僧共!」
「無茶振りかよ!来るぜ、ランドレイク!用心しろよぉっ?」
「絶対勝ってみせるぜ、船長ぉっ!」




