46章 乱戦と、転送と
「…行くよ、フォンフェル!目標はデストロイ・デュラハンの撃退、またはグルーナさんのデバイスの破壊!」
「それとさっきフィルムケースに閉じ込められた遠藤花子さんの救出、だよね?」
道人の言葉に潤奈は強く頷く。フォンフェルとハーライムが並び立ち、ダビングルレンデスたちを見る。道人はスマホを操作してハーライムにランスヘッドをつけた。
「…いったた…!?いきなり飛び蹴りなんて、ひどい!私の自慢の眼鏡が割れたらどうする気ですかぁっ?弁償ですよ、弁償!あなたたちの命でねぇっ!」
シユーザーが立ち上がり、道人を睨む。が、ランスハーライムが前に跳び、シユーザーの頭を掴んで壁に勢いよく押し付けた。
「二度目っ!?」
「すまない、私の実体化には限りがあるのでな。手早く済ませてもらう!」
ハーライムはシユーザーの頭を掴んだまま横に引きずって壁を擦った後、地面に叩きつけた。天に背を向けて倒れるシユーザー。
「終わりだ!」
ハーライムはランスを逆手に持ち、シユーザーを刺そうとするが、シユーザーの背中に透明なシールドが出現して槍を防ぐ。
「何っ!?」
「調子に乗るなよ、部外者がぁっ!」
シユーザーは横に転がってすぐに起き上がり、両手に出現させた奇妙な形の剣でハーライムに切り掛かるが、ハーライムはランスを横にして防ぎ、後ろに下がった。
「…行くよ、フォンフェル!ヘッドチェンジ!サスケ!」
『忍びの極意とは何者』
「…人に隠れて悪を斬る!」
『承忍。』
フォンフェルに炎を模した角がついた覆面の頭がつき、炎のマフラーが巻かれ、赤い肩・足パーツが足された姿に変わる。刀身が燃えた日本刀を新たに持つ。
「サスケフォンフェル、見参!」
サスケフォンフェルはダビングルレンデスに向かって高く跳んだ。
「出た!潤奈の新しいヘッド!奴らに見せてやれぇぃっ!」
愛歌は右手でガッツポーズをして応援した。
「さ、さっきから君たちは一体…?」
参加者たちを守っているスタッフ三人がこの状況について行けず、愛歌と深也につい声を掛けた。
「あ?通りすがりのお節介なデュラハンだよ。気にすんな。」
深也が後ろのスタッフにそう伝えた後、またフォンフェルの方を向いた。その時、道人のデバイスから着信音が鳴る。
「はい、こちら道人!」
「道人君!わしじゃ!大樹君から連絡があってな!事態は把握した!」
どうやら大樹が観客たちを避難させた後、博士たちに連絡を取ってくれたみたいだ。
「大樹、ナイス…!博士、ジークヴァルたちのボディの輸送は?」
「あぁ、もちろん、運ぶんじゃが…道人君、少し賭けじゃが…試させてくれるか?」
博士は何か考えがあるのか、道人に許可を得てきた。
「今日完成したばかりでの…!ぶっつけ本番じゃが…うまく行けば、ジークヴァルをすぐにそちらに送れるぞ!」
「ほ、本当ですか!?」
「だが、失敗の恐れもある…!それにこれを使うとヘッドを使用した扱いになってしまい、この戦いの間だけ使えるヘッドが一つ減ってしまうんじゃ。この手を使うかどうかは道人君、ジークヴァル、君たちの判断次第じゃ!」
デバイスに映る博士の画面が小さくなり、ジークヴァルが映る。道人はジークヴァルと見つめ合う。
「…僕は、博士を信じます!良い、ジークヴァル?」
「あぁ、もちろんだ!例え可能性が低くても、この状況を打開できるのならば、私は迷わずその道を選ぼう!」
「決まりだね!博士、頼みます!」
「合点承知じゃぁっ!バドスン・アータスの奴らめ、今まで遭遇戦で煮え湯を飲まされておったが、見ておれよぉっ…!」
モニター越しでも博士がすごい勢いで電子キーボードを叩いているのがわかる。
「大神君!道人君のデバイスに『ワープカード』を転送じゃぁっ!」
「了解!ワープカード、プログラムイン!ゴー!」
大神がキーボードを操作した後、新たに机に出現したボタンを押すと道人のデバイスに光が収束し、一枚のカードになる。道人は左手でカードをキャッチする。
「その現れたカードをデバイスに読み込ませるんじゃぁっ!!」
「はい!行っけぇっ!」
道人はデバイスにカードスラッシュする。
『転送開始。』
道人の持っていたカードが消え、デバイスから光が溢れ出し、道人の前に光が収束してジークヴァルが現れる。
「よし、成功じゃぁっ!今じゃ、道人君!」
「はい!ジークヴァル、インストール!」
デバイスからビームを放ってジークヴァルの胸の顔に当たり、瞳が宿った。道人の右腕にもガントレットが出現し、ネックレスが装着される。
「おぉっ…!?私の身体だ…!」
ジークヴァルは両手でグーパーを繰り返し、身体に異常がない事を確認する。
「おぉっ、ジークヴァル…!」
シユーザーと鍔迫り合いをしていたハーライムがジークヴァルに気づく。
「ば、馬鹿なっ!?チキュウの科学者が転移技術を開発したというのかっ!?ありえん…!?」
「あり得るから目の前で起きてるんだろう?」
ハーライムは右足でシユーザーの腹を思いっきり蹴る。
「また蹴った!?おのれぇっ…!」
シユーザーは腹を抑えて後ろに下がった。
「続けてトワマリーたちも…と行きたい所じゃが…!?」
「博士、駄目です!システムに負担が…!?」
「すまん、愛歌ちゃん!深也君!トワマリーたちはヘリで輸送する!すぐに向かうから待っておいてくれ!」
博士はそう言うと通信を切った。
「あたしたちはワープお預けかぁっ…!」
「あぁ、しゃあねぇな!ランドレイクたちが着くまで俺たちは俺たちでやれる事をやるぜ!」
愛歌は潤奈の左に、深也は道人の右に立つ。
「僕がここを離れたら、スタッフさんや参加者の人達の守りが手薄になる…!あいつらが近づいて来たら僕がガントレットで戦うから、ジークヴァルはハーライムの所へ!」
「わかった!」
ジークヴァルはランスハーライムの横に移動し、共にシユーザーと戦う姿勢を取る。
「共に戦おう、ハーライム!」
「あぁ、私たちで主君を守るぞ!」
「おう!」
「道人、俺のダブルトライデントを使え!」
深也はデバイスを操作し、道人のデバイスにダブルトライデントのデータを送る。道人はダブルトライデントのカードを実体化する。
「ありがとう、使わせてもらうよ!ヘッドチェンジ!ダブルトライデント!」
『あなたの向かう先に二つの選択肢があります。あなたはどっちを選びますか?』
「どっちも選ぶ!」
『欲張り。』
ジークヴァルに両耳が尖った新たな頭パーツが装着され、両肩と胸に新たなパーツがつき、両手にトライデントを持った姿になった。ダブルトライデントジークヴァルとランスハーライムは互いに槍の高速突きでシユーザーを攻撃する。
「何の!何時までもそちらの好きにさせてたまりますかぁーっ!」
シユーザーも負けじと剣を持った両手を回転させ、三本の槍を何とか防ぐ。
「フレーミング!フレーミング!さっさと私たちのコレクションになりなさい、ニンジャッ!」
サスケフォンフェルはダビングルレンデスが連打する透けたフィルムケースに入らないように避け続けていた。
「えぇい!ちょこまか、ちょこまかとぉっ…!」
「ねぇっ、疲れたよぉっ、グルーナァ〜ッ…!」
「…! 隙あり!」
ダビングルレンデスの一瞬の隙を見逃さずにサスケフォンフェルは前進し、炎のマフラーを伸ばしてダビングルレンデスの胴体をぐるぐる巻きにして炎で熱した。
「わぁっ!?熱い、熱い!?僕のレンズが焼けちゃうよぉっ!」
「更に焼けて貰いましょう。」
サスケフォンフェルは炎の手裏剣を七つ投げ、ダビングルレンデスの全身が燃える。
「わあぁぁぁぁぁーっ!?熱い、熱いぃっ!?」
「ルレンデス、待ってて!このぉっ…!」
グルーナはダビングルレンデスに近づいて自分の両手が火傷になるのも気にせずにサスケフォンフェルの炎のマフラーを外そうとする。
「あっつ、あっつ…!?今助けてあげるから…!」
「…!? いけない!?マフラーを外して、サスケフォンフェル!」
サスケフォンフェルは急いでマフラーをダビングルレンデスから外す。ダビングルレンデスから炎が消え、煙が出る。
「た、助かったぁっ…!ありがとう、グルーナ…。」
「良かったわ、ルレンデス…!」
グルーナは倒れたダビングルレンデスに近寄って心配した。
「…何で、自分の手を顧みずにデストロイ・デュラハンを…?」
「当たり前じゃない…!この子は私の意見に理解を示してくれた友達だもの…!私の手の一本や二本、くれてやるわ…!」
「…そんな…。何で…?」
潤奈は困惑し、下を向く。
「おい、マーシャル!さっきから気になっていたが、何でデストロイ・デュラハンが意思を持って行動できてるんだっ!?」
深也が高みの見物をしているマーシャルに叫んだ。
「何、簡単な事です。私とシユーザー様の研究の成果が形になっただけですよ。先日あなた達の前に現れませんでしたか?ピエロのデストロイ・デュラハンが。」
「…!? あのピエロ、デストロイ・デュラハンだったの…!?」
愛歌がマーシャルの発言にいち早く驚いた。
「くっくっくっ…!私はn…。」
「「うおぉぉぉぉぉーっ!!」」
シユーザーは未だにジークヴァルとハーライムの高速突きの相手をしていた。
「…私の研究自慢の邪魔すんなやぁっ!!」
シユーザーは急にキレだし、両手の高速回転を止め、前進。シユーザーは自分の前に多くの透明なシールドを配置する。が、次々とパリンパリン割れて意味がないが、ダメージを気にせずに進み、ジークヴァルの首を右手で締めた。
「何っ…!?」
「ジークヴァル!」
シユーザーはジークヴァルをハーライムに投げ、二人を吹っ飛ばした。
「ぐあっ!?」
「私はなぁっ、自分の研究の自慢を邪魔されるのがいっち番むかつくんだよ!大人しくしてろぉっ!」
シユーザーは落ち着き、自分の胸の顔にかけた眼鏡をクイクイした。
「…いやぁっ、お恥ずかしい!つい激怒してしまった…。マノンシア姉妹には見苦しいものをお見せしましたね。失礼を…。」
シユーザーはその場で一礼した。
「な、何なの、あいつ…。」
愛歌はシユーザーのテンションの落差に引いた。




