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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第1部 始まりのディサイド
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45章 憧れの暴走

 グルーナに気に入られた者が発表され、スポットライトを当てられたのは二十二名中、十二人。その中に愛歌、潤奈、虎城は入っていた。


「やった!三人とも入賞だ!おめでとう!」


 道人は思わずパイプ椅子から立ち上がり、周りに合わせて拍手した。


「くぅ〜っ…!俺と虎城さんのタッグも無事評価されて安心したぞい…!」

「私のお手伝いもうまくいって良かった!」


 大樹と稲穂も無事に入賞した三人に拍手を送る。


「へぇっ、大したもんだ。」


 深也も足を組みながら拍手した。


「ビューティフル!ワンダフォー!おめでとう!君たちは私の()()()()()()に選ばれた!約束だ、私秘蔵の豪華商品をプレゼントしようじゃないか!おいで、私のダビングルレンデス!」


 グルーナが右手を勢いよく上に上げると天井を突き破り、ダビングルレンデスが土煙を上げて着地した。


「…えっ!?何で…!?」


 道人たちはパイプ椅子から立ち上がり、急に現れたダビングルレンデスを見る。

身体に巨大なレンズの顔があり、顔もカメラの形をしたデュラハンで両肩にも望遠鏡のような物がついている。


「紹介しよう!私の最高のデストロイ・デュラハン!ダビングルレンデス!」

「…えっ?グルーナ、さん…?何で…?」


 潤奈も困惑していて、愛歌と虎城も潤奈の近くに寄る。観客たちも何かの演出かな?と思って残っている勢と、何かおかしくないかと疑って逃げる勢の二つに分かれている。


「主、下がって!」


 フォンフェルが危機を察知し、潤奈たちの前にいきなり現れる。フォンフェルの事を知らない他の参加者たちの何人かはフォンフェルの事も怖がって距離を取る。


「デストロイ・デュラハンだと!?ふざけやがって…!」


 深也が怒りを(あら)わにする。道人は稲穂を近くに寄せ、守る。


「お客さんたち、逃げるさぁっ!危ないさぁっ!」


 デバイスの中から叫ぶカサエル。大樹はデバイスの音量を上げる。


「カサエル、人命救助じゃ…!一緒に叫ぶぞい…!みんな!これは演出なんかじゃない!早く逃げるんじゃ!」


 大樹とカサエルが大声で叫ぶと何人かは大樹の言う事を聞いて逃げるが、唖然としている人やスマホで撮影する人もいて、全員とはいかない。


「…フォンフェル、グルーナさんを止めて!」

「御意!」


 潤奈が指示し、フォンフェルがグルーナの元へ跳ぼうとするが、志湯座に右腕を掴まれる。


「困りますねぇっ、Ms.グルーナの邪魔をされては!」

「何っ…!?こいつ、人間の腕力ではない…!?」

「よくわからないニンジャさんはそこで大人しくしてなさいな!まず私のコレクションに加わるのはエントリーNo.1!遠藤花子!」

「えっ?私…?」

「チャイナドレスが素敵だったあなたを永久保存!良い?ダビングルレンデス!」

「任せてよ、グルーナ。」

「…!? デストロイ・デュラハンが喋った…!?」


 愛歌が驚くとグルーナはダビングルレンデスと一緒に指でカメラのポーズを取って遠藤花子を捉える。

 

「フレーミング!」


 遠藤花子の身体全体に透けたフィルムケースが出現する。


「ハイ、パシャリ!」


 グルーナが指を鳴らすとダビングルレンデスが指から四角い光線を発射し、遠藤花子に当たるとフィルムケースが実体化して蓋が閉められ、小さくなって床に落ちる。


「…えっ?一体何が…?」

「人が、フィルムケースの中に…?」


 潤奈と愛歌は今何が起きたのか理解が出来なかった。グルーナはフィルムケースを拾う。


「はい、これが私が言ってた秘蔵の豪華商品!それは私の手によってコレクション化し、永久保存される事!光栄でしょう?Ms.遠藤?あなたは私の秘蔵コレクションになれたのだから!次!No.2!三重夏実!フレーミング!」


 またグルーナとダビングルレンデスが指

でカメラのポーズを取ると三重夏実の全体に透けたフィルムケースが出現する。


「…駄目!これ以上は駄目ぇっ!」


 潤奈は三重夏実の元まで走り、右腕を掴んで思いっきり引っ張る。フィルムケースは実体化するが、三重夏実を閉じ込めるのには失敗する。


「チィッ!よくも邪魔を…!」

「潤奈!」


 道人は右手を前に伸ばして潤奈の元まで走ってくる。


「…道人!」


 潤奈は道人の意図を理解し、ポケットから道人から借りていたスマホを投げた。無事に道人はキャッチし、潤奈たちの前に立つ。


「参加者のみんな!ぼーっとしちゃ駄目!早く逃げて!」

「こちらです!こちらから逃げて下さい!」


 愛歌と虎城の必死な呼び掛けを聞き、参加者たちは逃げていく。


「駄目!私のコレクションたち!逃がさない!ダビングルレンデス!」


 ダビングルレンデスは両肩の望遠鏡を前方に移動させ、熱光線を発射。出口の上の壁を壊して出口を瓦礫で塞いだ。


「まだ残ってる私のコレクション以外のオーディエンスたち!猶予をあげる!邪魔だから、向こうのエスカレーターやエレベーターでさっさと逃げなさい!じゃないとぶっ壊して逃げられなくなるわよ?」

「こっちじゃ!俺についてくるんじゃ!」

「早く逃げるさぁっ!」


 事態をようやく理解した逃げ遅れた観客たちは大樹についていき、エスカレーターに乗って逃げた。


「俺たちもあの子を手伝うぞ!避難誘導だ!」


 スタッフたちもさっさと逃げた人もいれば、残って大樹と一緒に避難誘導を手伝う人もいた。


「虎城さん!俺が稲穂ちゃんを守るからの!安心するんじゃ!」

「ありがとうございます、大樹君!」

「お姉ちゃん!」

「大丈夫!大丈夫だからね、稲穂!」

「気をつけて、お姉ちゃん!」


 稲穂は姉が見えなくなるまで顔を姉の方に向けて走り去った。虎城は妹が見えなくなっても視線を変えずに心配そうに見ている。


「ふん、不快な姉妹愛ですね。」


 グルーナの右上にマーシャルが突然現れる。


「…マーシャル…!」

「ご機嫌よう、お姉様。」


 潤奈がマーシャルを見るとマーシャルは右手でひらひらと手を振る。


「ふっはっはっはっ…!姉妹愛、良いではありませんか!実に興味深い!」


 志湯座はフォンフェルから手を離し、グルーナの元まで跳んだ。フォンフェルも潤奈の元へ下がる。


「いやぁっ、ニンゲンとは実に愉快、愉快!」

「何者だ、てめぇっ!」


 深也も駆けつけて道人の隣に立つ。虎城が隙を見計らってこっそり他の参加者と逃げようとする。


「逃げちゃノンノンノンって言ったでしょ!」


 グルーナは虎城の動きを察知してダビングルレンデスの熱光線でエスカレーターを破壊した後、エレベーターも破壊し、裏口も入口と同じく瓦礫で塞いだ。


「お初にお目に掛かります…。いや、ジュンナとはお久しぶりでしたね。志湯座とは園場だけの借りの姿!しかして、その実体はぁ〜っ!?」


 自分のゴムの身体を引き裂いて胸の顔に眼鏡をかけた紫の身体を披露する。


「シチゴウセンが一人!シユーザー、見ざぁ〜ん!」

「…シユーザー…!」


 潤奈はシユーザーの姿を見て怒りで身体が震えた。


「その目!あの時と同じ!君の父を私が怪我させたあの時と!いやぁっ、懐かしい!」


 マーシャルは父の事を聞いて少し不機嫌になる。潤奈の怒りで震える右手を道人は手を繋いだ。


「…! 道人…。」


 道人は潤奈を見て頷いた後、グルーナを見た。


「グルーナさん、何で!?何でこんな事したの!?」

「そうです!事情を話して下さい!」


 最初にグルーナのイベント内容変更に苦情を言ったスタッフがまだ残っていて道人の横に立った。他にも残ったスタッフは二人いて参加者たちを安全そうな場所にしゃがませて、前に立って守っていた。


「良いでしょう!お話しましょう!私の目的はただ一つ!芸術品の永久保存よ!」

「永久、保存…?」


 道人の隣のスタッフが理解できずに自分の言葉で言い直した。マーシャルは空気を読み、スポットライトをグルーナに当てる。


「そう!私は世界的ファッションデザイナー!常に私は世界中の人々を私のデザインした服でシャイニングさせたいと常々思っている!だがぁっ、時の流れは残酷…。せっかく苦労して思いついたファッションは次第に時代遅れになり、私の服を着てくれた人も歳を取っていく…。」


 グルーナは右手を顔全体に当て下を向いて悲しむ。


「そんな感情を隠しながら生活をしていた時、私はマーシャルとシユーザーに出会った!そして、私は解き放たれ、得た!芸術品を永久保存する術!我がスペシャルパートナー、ダビングルレンデスと!」


 グルーナは両手を横に伸ばし、天を見る。


「私はもう出会った芸術品を、モデルたちを私が死ぬまで失う事はない!シユーザーたちが地球を滅ぼすまでに私は芸術の原石たちを保存してみせる!だから、待ってて!今日見つけた私のインスピレーションたち!絶対に永久保存してあげるからね!」

「…この女、デストロイ・デュラハンの影響をかなり受けてやがんのか…?」


 深也はグルーナの目的を知り、顔を歪める。


「…お願い、考え直して!目を覚まして、グルーナさん!」

「そっかぁっ、君は私のファンだったね。待ってて、君の順番になったら永久保存してあげるからね…!」

「…グルーナさん…。」


 潤奈は涙目になり、下を向いた。


「そう!その顔!また見る事ができた!」


 シユーザーは潤奈を指差す。フォンフェルは潤奈の前に立って右手を右下に伸ばし、潤奈を守る。


「美しい…!リフドー人もチキュウ人も表情が豊かで実に良い…!特にジュンナ!君は絶望に満ちた顔がよく似合う!君はまた大事な人に裏切られたんだね…!」


 潤奈の両目から涙が流れる。


「おぉっ、涙よ!もっと見せておくれ!」


 道人は殴る勢いで右手に持ったスマホを前に出し、ハーライムが実体させてシユーザーの頭と胸の顔に飛び蹴りを喰らわす。


「ふぎゃっ!?」


 シユーザーは吹っ飛び、壁に激突した。


「…もう喋るな、愚か者共…!」


 ハーライムは蹴り終えた後、道人の近くに着地する。


「潤奈はもうお前の知ってるジュンナじゃない!お前たちバドスン・アータスを倒すために諦めずにここまで生き残った強い子だ!それ以上潤奈を侮辱する事は僕らが許さない!!」

「…道人…。うん…!」


 潤奈は涙を拭い、強い眼差しで前を向く。


「あたしたちも道人と同じ気持ちよ!」

「あぁ!とっとと片付けてみんなでお好み焼き食おうぜ!」

「…愛歌、深也…!うん、私は…諦めない!グルーナさんを絶対止めてみせる…!」

○グルーナ・フリーベル 24歳

血液型 A型

誕生日 4月15日 牡羊座

身長159cm 体重 秘密

趣味 服作り コレクション 散歩

好きな食べ物 賞味期限が長い食べ物 ヨーグルト

苦手な食べ物 賞味期限が近い食べ物 バナナ


○虎城稲穂 9歳

血液型 A型

誕生日 11月3日 蠍座

身長126cm 体重26kg

趣味 アクセサリー作り お絵描き

好きな食べ物 父の作ったお好み焼き 焼きそば

苦手な食べ物 こんにゃく

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