30章 戦い嫌いのカサエル
パートナーが誰かわからない、と告白するカサエルに対して道人たちは困った表情を浮かべた。ディサイド・デュラハンが何故起動する前にパートナーの事を知っているのかは未だにわからない。ジークヴァルやトワマリーがパートナーの名前を知っていたからと言って、カサエルも知っているとは断定できないのが現状だ。
「すまない、カサエル。私たちはジークヴァルとトワマリーのケースで物事を考えてしまった。君がパートナーを知らないというのは変な事ではない。すまなかった…。」
「いえいえ、あっしは気にしてないでさぁ。そう落ち込まずに。」
カサエルは軽い感じで謝る司令を許した。
「えっと、この場合はどうなるんですか、博士?」
「うむ、問題ない。カサエルのパートナーを見つける事は可能じゃ。」
博士は司令を見てお互いに頷いた。
「道人君たちは、何故私たちデュラハン・ガードナーがデュエル・デュラハンというゲームをこの御頭街で商品展開などを行なったと思う?」
司令は道人たちを見て問いかける。
「えっと、なんでだろう…?」
「そういえば、聞いた事なかったね…。」
道人と愛歌はお互いを見て知らない事を確認し合った。
「私たちは当初、ディサイド・デュラハンが起動する前からもうパートナーが決まっているという事を知らなかった。」
「潤奈君のお父さんの設計図にデバイスを持ったパートナーと協力し、デュラハンと共に戦うというコンセプトは読み取れたんじゃが、どうやってパートナーが決まるのかはわからなかった。だから、わしはディサイド・デュラハンの開発と同時にデュエル・デュラハンというゲームを作った。」
さらっと言っているが、短期間でディサイド・デュラハンの開発、ニつの人口島を増やしたりもしているのにゲームの開発までやってのけてるのが博士のすごいところだ、と道人は改めて思った。
「この街で何度か謎の首無し騎士が現れるようになり、街に被害を出すようになったという話は道人君は博士から聞いているだろう?」
「はい、前に聞きました。」
「我々はディサイド・デュラハン開発と同時に気が早いかもしれんが、先を見越して『量産型ディサイド・デュラハン』も計画していた。」
「りょ、量産型ですか?」
ジークヴァルやトワマリー程の性能のデュラハンがたくさんできるなんて、そんな事が?と道人たちは驚いた。
「量産型ディサイド・デュラハンを作るためにはその数だけパートナーも必要となる。ディサイド・デュラハンのパートナーを捜しつつ、量産型ディサイド・デュラハンを扱える程の人材も捜す。そのためのシミュレーションゲームとしてデュエル・デュラハンは作られたんだ。」
「だが、量産型ディサイド・デュラハンを造るだけの素材やデュラハン・ハートは全然足りなくての。量産計画はほぼ白紙状態になったんじゃ。デュエル・デュラハンはその時の名残りでの。まさかこんなに流行するとはわしも思わなかったんじゃ。」
「まさか、当初想定していた扱いをする時が来るとはな…。」
「うむ。デュエル・デュラハンがそのまま流行、人々に愛されるゲームとして扱われるのならその方がいいとわしは思ったんじゃがのぅ…。」
司令と博士は寂しそうに下を向いて話した。
「あぁ、そういう事なら捜さなくていいでさぁ。あっしは戦いは嫌いで、パートナーが見つからないならそれはそれでいいでさぁ。」
カサエルのまさかの発言に道人たちは驚いた。
「戦いが、嫌い…?」
「えぇ、戦いなんかより、あっしが好きなのは…これでさぁっ!」
カサエルは三つの三度傘を上空に投げた後、右手に傘を出現させて開き、回転させて傘の上で三つの三度傘を転がした。道人たちはそれを見てポカンとする。潤奈だけは頬を染めて真剣に見ていた。
「さぁっ、さぁっ、さぁっ!ここから更に難易度を上げまっせぇっ!」
更に左手でゴムボールを三球投げ、三度傘と同時に傘の上で転がす。右足でもう一球のゴムボールをリフティングし出した。潤奈の目の輝きは更に増す。
「ほい!仕上げ!」
傘に乗った三度傘とゴムボールとリフティングしていたゴムボールを上空に思いっきり投げた。傘の先っぽの石突きの部分を両手で持って上に上げ、傘の内部に落ちてきた三度傘とゴムボール四球を入れた後、傘を畳んで右手の指を鳴らした後、傘も消した。
「おぉ〜っ…!」
道人たちはカサエルのさっきの発言を忘れていつの間にか大道芸に魅入っていた。潤奈も感動し、拍手をしている。フォンフェルも主に合わせて拍手した。
「おぉっ!良い歓声!お客様は神様なりぃ〜っ!」
「…博士、カサエルにどうやってあんな性能を…?」
「いや、わしはあんなマジシャンみたいな能力はつけておらん…。」
司令と博士は二人で困惑していた。
「はい、この通り。あっしは戦うより人を驚かせて楽しむ方が好きでさぁ。パートナーが見つからんなら、それで構わんさぁ。」
カサエルはその場で座ってお手玉をやり出した。
その後、今後カサエルをどうするかの検討をするため、司令と博士は司令室に帰った。深也も今までデュラハン・ガードナーが得てきた情報を学ぶため、パークに残った。ここのところ、何時も帰りが遅かったため、今日は道人たちは家に帰る事になった。虎城の車に乗って帰る道人、愛歌、潤奈はカサエルに関して話し合っていた。
「まさか戦いたくないって言うディサイド・デュラハンが現れるなんてね…。」
「うん、意外だった。そんな事もあるんだね…。カサエルの大道芸はなかなかのもんだよ。戦わないディサイド・デュラハンってのもありなのかもね。」
「…うん、私もそう思う。」
潤奈は自分の胸に手を当てた。
「…私、お父さんはディサイド・デュラハンを本当は戦いのために作ったんじゃないと思うの。バドスン・アータスに対抗するために戦闘用として仕方なく設計図を作っただけで…。…私、カサエルの大道芸を見て感動したの。いるはずがないのに周りに楽しんでいるお客さんがたくさん見えたような気がして…。ディサイド・デュラハンはこんな生き方もできるんだ、これがお父さんが本当に望んでいたものかもしれないって。」
「うん、そうだね…。」
「あたしもありだと思うな。」
道人と愛歌は潤奈の言う事に感銘し、頷いた。
「カサエルが戦わなくても大丈夫なように僕たちで頑張ろう!」
「えぇ!」
「…うん!」
虎城の車は道人の家に着き、虎城はまた明日ねと帰っていった。潤奈もフォンフェルと共に飛び去り、愛歌も自分の家に帰る。道人も走って自分の家のドアまで走り、インターホンを鳴らした。
「あら、今日は早いのね。」
「うん、ごめんね。ここのところ、遅くて。今日は晩御飯の支度手伝えるよ。」
道人は晩御飯、風呂に普段通りの生活を久々に堪能し、自分の部屋のベッドに座った。カサエルの事を聞くため、デバイスに映るジークヴァルを見た。ハーライムも実体化させる。
「なぁ、二人はカサエルの事どう思う?」
「戦う気がない者に争いを強要はできんな。私はカサエルを尊重したい。」
ジークヴァルもカサエルの事は受け入れてくれるようだ。
「私は少し前まで実体化できない普通のデュエル・デュラハンだった。こうして実体化して、道人と一緒に会話できるようになったのも嬉しいし、道人を守れるようになったのも喜ばしいと思っている。だか、デュエル・デュラハンの中にも育成を主にして戦わせたくないというプレイヤーもいると聞く。」
「うん、デュエル・デュラハンは様々な遊びができるゲームだからね。」
「いずれ、十糸姫の糸で私以外のデュエル・デュラハンが実体化するかもしれない。その時もカサエルのように戦いたくないデュエル・デュラハンが現れるだろう。今後も続いていきそうな問題だ。」
「あぁ、ハーライムの言う通りだ。まずは司令たちがどう判断を下すかだ。それが決まり次第、今日道人たちが考えた事を伝えればいい。何、焦る事はない。こういうのはじっくり考え、皆が納得する答えを精査しなくてはな。」
「うん、そうだね。相談に乗ってくれてありがとう、ジークヴァル。ハーライム。」
話し終えた後、ハーライムは消えた。今日はバドスン・アータスの襲撃はなかった。久々にゆっくり休める日なので道人は早めに眠りについた。




