雷牙の章Side:十糸姫 後編 キャプテン、参上!
「し、式神たちよ!雷牙を捜すのじゃ!」
十糸姫は赤い大地をふらつきながら歩きながらも偵察用の紙の式神を二体飛ばした。
「借りを返すなどと…。かっこつけよってからに…。傀魔怪堕につけられてしまったのは我の不手際だと言うのに…。」
十糸姫は傷だらけの身体で戦いに向かったライガを気遣いながら、森に身を隠しながら進んでいた。
「…! 見つかったのかっ!?」
偵察用の式神が一体戻って来て、右手をくいくいと動かしていた。
十糸姫は式神に案内してもらい、歩いて行く。
「…おった!雷牙!」
雷牙は素早く動き回りながら敵が繰り出す矢の雨を避け続けていた。
「相手は三大将軍ではないようじゃが…。」
十糸姫は雷牙の戦っている相手を確認する。
槍を持った白い首無し鎧武者ニ体、弓矢を持った首無し鎧武者三体。そして、でかい背負い物をした首無し鎧武者一体の計六体だった。
「ぐっ!?」
雷牙の腹から電流が走る。雷牙は左手で腹を抑えてその場にしゃがんだ。
「雷牙!」
十糸姫は宙に糸を出現させ、すぐに編まれて大きくて長い布の式神を作り出した。
雷牙の前まで飛ばし、まるで宙を舞う竜のようにうねらせて飛んで来る矢を弾いて行く。
「…!? 姫さん!?あんた、何で来たっ!?」
「怪我人を、見捨てる訳にはいかぬ…!」
「姫さんもお疲れの身だろうがっ!ちぃっ!」
雷牙は立ち上がって見せて矢が身体に刺さるのを気にせずに突撃。両手の爪を振り回し、首無し弓兵たちをその場から散らせた。
「…しまった、我とした事が…!?考えなしに…!」
雷牙を助けに来たのに逆に雷牙に負担を掛けるような行動をしてしまい、十糸姫は自分の軽率な行動を恥じた。
「…! 何だ?」
白い首無し鎧武者たち六人は空を飛び、変形を開始する。
一人がボディを担当し、右腕・左腕・右足・左足に変形して合体した。
「なっ!?へ、兵士たちも三大将軍のように合体できるとなっ!?」
背負い物を持つ白い首無し鎧武者も変形し、大剣となって合体鎧武者は両手で持って構えた。
「武器にもなるんかい…!ったく、ジークヴァルの奴といい、合体が流行ってんのかねぇっ!」
「…! ジークヴァル…?」
十糸姫はその名前に聞き覚えがあった。
道人と初めて会った時、道人がその名前を口にしていた。
「…思い出したわ。確か、その時に雷牙という名も道人から聞いたような…?もしや、雷牙の言う好敵手とは…?」
道人とライガが傀魔怪堕にやって来た時期も恐らく同じ時期。自分の見立ては間違いないだろう、と十糸姫は考えた。
「くっ!?」
雷牙が腹から電流を発した隙を見逃さず、合体鎧武者は大剣を横一閃し、雷牙を近くの岩に叩きつけた。
「雷牙っ!」
十糸姫は倒れている雷牙の前まで走り、式神を展開した。
雷牙を守るために作った布の式神を合体鎧武者の頭に巻き付けた。
合体鎧武者は必死に取ろうとする。
合体できる鎧武者たちと言えど、所詮は意思なき兵士。これで時間は稼げると姫は思った。
「…よ、よせ!姫さん、俺に構わずにさっさと逃げろ!」
「其方の方こそ、早く逃げるのじゃ!何、我はこう見えても千年は長く生きておる!生き延びるのには自信があっての!それに我に死なれたら困る奴も憑いておる!」
十糸姫は自分の足元の影に潜んでいるだろう地球の意思を見た。
「千年だと…?姫さん、あんた…?」
今の十糸姫の発言で雷牙も何かを察したようだった。
「…せっかく会えた好敵手…ジークヴァルとやらなんじゃろう?じゃったら、こんな所で果てては駄目じゃ!互いに生き延び、我が愛しい道人に会いに、共に再会と参ろうではないか!」
「…! あんた、道人を…? …くっ、はっはっはっはっはっ…!」
雷牙は急に笑い出した。
「あ、痛てっ!?」
雷牙は笑ったせいで腹に電流が走った。
「やれやれ、道人の奴の交友関係ってのも大したもんだ。まさか、こんな異界のような場所にも知り合いがいるとはねぇ。案外、世界は狭いもんだ!」
雷牙は立ち上がり、十糸姫の前に立つ。
「俺と姫さんは生きた環境がちげぇし、考え方も違う。だが、好む相手や無鉄砲さは似通ったところがある…。面しれぇな、生き物の繋がりってやつは!この繋がりで生まれる底知れぬ強さ、それが道人とジークヴァルの強さの秘訣なのかもな!俺も欲しかったかもしれねぇっ!」
「今からでも遅くはない!其方も知ればいいのじゃ!繋がりの強さを!
何、相手の強さの秘密を理解できた其方にならできる!相手を知り、己を知れば百戦殆からず!我と其方の決心は今、一つじゃ!」
その時、十糸姫の頭上に光の玉が出現した。
「な、何じゃ?」
十糸姫は両手で光の玉を受け止めると光の玉が網目模様の機械に変化した。
「それは道人やお嬢さんが持ってた…? …うおっ!?」
雷牙の身体が白く輝き出した。
雷牙は身体が白くなり、両手の巨大な爪はそのままで帽子のような頭を新たに付ける。
電流が走ったボロボロの黒のマントを着込んだ。
「何とっ!?姿が変わりおった!?何と面妖な…。」
「…マジかよ。確か、ディサイドってやつだよな、これ?」
「ふむ、でぃさいど?」
十糸は首を傾げた。雷牙は変わった自分の身体を確認するようにその場で身体を動かした。
「…以前、スランが寝返った時にディアスに言ったっけな。戦場ってのはいつ何が起こるかわからねぇ。どっからか、情報やきっかけ、出会いが突然やって来る…ってよ。まさか俺にもこの言葉が通用する日が来ようとはな…。」
合体鎧武者はやっと頭に巻かれた布の式神を取り、雷牙と十糸姫を見た。
「おっと、随分遅かったな。おかげで俺はこの通り、元通りよりも調子が良いぜ。覚悟しな!」
雷牙は黒いマントを脱ぎ捨て、獣形態に変形した。
「なるほど、こうなる訳かい!面白ぇっ!」
雷牙は口から光弾を乱射しながら合体鎧武者に接近し、頭をかじり取った。
「わ、我も何かできんのかっ!?」
十糸姫は網目模様の機械の画面を適当に押す。すると、雷牙の足場から狼の顔がついた飛行船が出現した。
合体鎧武者は吹っ飛んで行った。
「おぉっ!?何だよ、これ?姫さん、何した?」
「えっと…わからぬ!」
「なるほど、イケてる回答だぜ、姫さん。一つわかる事は…こいつは俺の船だって事だ!」
雷牙が吠えると飛行船もそれに呼応するかのように共に吠えた。
十糸姫はまた画面をタッチすると飛行船は砲身を出現させ、地面に倒れている合体鎧武者に雷撃弾を何発も喰らわした。
「へっ、悪いが俺は意思なき拳に興味はねぇっ!さっさとくたばれぇっ!」
雷牙は宇宙船から飛び跳ね、合体鎧武者の身体を噛み付いては口から光弾を放つを繰り返す。
人型に戻り、両手の爪で何度も斬り裂いた。
「これで終いだ!」
雷牙は合体鎧武者を蹴り上げ、回し蹴りを喰らわした。
宇宙船が援護射撃で吹っ飛んでいる最中の合体鎧武者に雷撃弾を何発もお見舞いし、粉々にした。
「あばよ。」
雷牙は振り返り、十糸姫の元まで歩いた。
「…しかし、船ねぇ。乗り掛かった船ってか?」
雷牙は自分の船の全体を改めて見た。
「姫さんには借りを返すどころか、大分でけぇ借りが出来ちまったな…。よし、姫さんの戦う理由、さっき聞きそびれちまったが、改めて聞かせな!内容によっては同行して手を貸してやるよ。」
「うむ?良いのか?」
「おう、当たり前よ。」
「本当に?本当か?」
「雷牙に二言はねぇっ!姫さんの話は聞いてて面白いしよ。何より俺の命の恩人だからな。」
雷牙はその場で腕を組み、何か考え始めた。
「今日から俺はあんたの…そうだな、キャプテンだ。」
「きゃぷてん…。我には意味がわからぬが、何だ頼もしそうな響きじゃな!では、これからよろしく頼むぞ、きゃぷてん!」
「おう!」
十糸姫は傀魔怪堕ではほとんど一人で行動していたため、相方ができて嬉しかった。
「よし、それなら…!」
十糸姫は嬉しさ余って宙に糸を出現させる。
雷牙の先程脱ぎ捨てたマントの背中に『雷牙』の文字を刺繍した。
「おいおい、何やってんだ、姫さん?俺の新しい一張羅によ。」
「良いではないか、我ときゃぷてんとの魂の繋がり、友情の証じゃ!」
十糸姫は嬉しそうに雷牙のマントを広げて雷牙の文字を見た後、雷牙に手渡した。
「魂の名前か…。んじゃま、背負わせてもらうとするかねぇ。」
雷牙は十糸姫にマントを着て見せた。
「よし、俺は今日からキャプテン・雷牙だ!改めてよろしくな、姫さん!」
「うむ!頼りにしておるぞ、きゃぷてん!」
その後、キャプテン・雷牙と十糸姫は怒涛の勢いで傀魔怪堕の赤き大地を駆け巡り、極亞たちに関する情報を調べ上げて行った。




