214章Side:傀魔怪堕 地球の意思の真意
「ふむ…。これまで混沌巨玉の使用は禁じられていたとは言え、いざ封を解けばあっという間に済んでしまうものだな…。」
極亞は傀魔怪堕の城の外に用意したかなりの数の人間保管庫を見ながら椅子に座っていた。
保管庫を外に配置していても、後二日で地上と傀魔怪堕は融合するので眠り続ける全人類を置く場所には困らない。
連れ去って来た人間たちは一気には優良人種転換作業はできないため、今は一旦水晶で固められて飾られていた。
「うむ、いやはや驚きましたぞ。城の奥底にある混沌巨玉の封印を解いた途端、地上世界との融合が始まり、我が配下たちももの凄い数が生産可能となるとは。今まで混沌巨玉の模造品は使っておりましたが、まさか本体がこれ程強力なものだったとは…。」
「地球の意思、万歳。愉快。」
「まぁ、その代わり、兵も連れ去って来た人間の管理も大変じゃがな。」
烈鴉と災鐚も現状に満足している様子だった。
「地獄の釜の蓋を開けるとはまさにこの事。こんな事ならもっと早く封印を解くべきでしたな。まぁ、ただでさえ遅れていた保管作業が更に溜まって骨が折れそうではありますが。」
「うむ…。」
烈鴉の言葉を聞きながら、極亞は今作戦に思う所があり、考え込んだ。
「どうかなさいましたかな、極亞様?」
「…逆に問おう、烈鴉よ。何故、こんなに地上侵略が楽なものを今まで使わなかったと思う?」
極亞の問い掛けに対し、烈鴉と災鐚は首を傾げる。
「それはこの傀魔怪堕の前の主、魔月京師が混沌巨玉の使用を躊躇っていたからでしょう。故に京師は地球の意思に歯向かった結果、処分された…。我らを生み出した存在であるというのに何とあっけない事か…。」
「それは否定はせん。だが、我はそれ以外にも理由がある気がしてな…。我らの本来の目的は優良人種を選別して保管する事だったはずだ。だが、今や『超晴王』による全人類優良人種化に変わってしまった…。」
「何と、もしや極亞様は地球の意思の行いを疑いに?」
烈鴉は周りにガイアヘッドがいないか慌てて確認する。
「安心せい。今、地球の意思は外に出ておられる。どこに行くのかは知らされてないがな…。道人たちを追い詰めるための準備をするとは言っていたが…。」
「あの方、毎回、そう。行き場所、言わない。」
「その通りだ、災鐚。我はどうしてもあの方に良いように扱われ、思い付きに振り回されているような気がしてな…。あの方は傀魔怪堕を大事にしておられるのか…?」
極亞はそう言うと飲み物を飲んだ。
「混沌巨玉には何か我らにも知らされていない、伏せられた秘密があるような気がしてならんのだ…。念のため、兵を配置していつでも再封印できるようにはしてある。」
極亞にはどうしても混沌巨玉に対する違和感が拭えなかった。
「我は魔月京師から混沌巨玉の封印は解いてはならないという事は聞かされていた。だが、何故その理由を聞かされていない?本来、そんな危険なものなのなら、理由は聞かされているはずだ。なのに何故話す前に京師は地球の意思に処分されたのか…?
ここは死の国である傀魔怪堕。死の国で死ぬとは皮肉な話だ。しかし、前主の魂が内包されずに行方知れずとは一体どういう事なのか…?」
極亞は玉座の背もたれに深く背を当てる。
「極亞様は以前、災鐚が持ち帰ったディール・マーシャル…今はDレボリューションとやらに改良された超晴王の事も疑っておりましたな。」
超晴王とはDレボリューションに改良された大型デストロイ・デュラハン。
中に人を入れる事ができ、その者の知恵を捕らえた者に流し込む事ができる。
現在はガイアヘッドが連れて来た松島かなめがセッティングされており、優良人種製造装置として使おうとしている。
「そうだ、地球の意思が連れて来た男を元として作ったDレボリューションとやら。ヒューマン・デュラハンという技術もどこから得て来た物なのかを地球の意思に聞いてもお答えにはならなかったのだ。おかげでディール・マーシャルは我らで改良するという考えは破棄せざるを得なかった。だが…。」
「極亞様、誰か、来る。」
「…大方、あの仮面であろうよ。よし、今は地球の意思への疑念を伏せるとしよう…。」
極亞たちが静かにしているとDレボリューションが歩いて来た。
「これはこれは…。水晶で覆われた人間たちというのもなかなか悪趣味で良い光景ですな。」
「何の用だ、仮面?」
極亞はあまりDレボリューションの事をよく思っておらず、冷たく対応する。
「デュラハン・パークへの侵攻準備が間もなく整います。予定通り、パークの侵攻役はガイアヘッド様と私。三大将軍方は混沌巨玉を守護を担当するという事でよろしいので?」
「構わぬ。好きにせい。」
「しかし、Dレボリューションよ。お前が造ったダガー・デュラハンとやら、大した事はないのではないか?今日だけで何体ボロボロになって帰って来た事か。」
烈鴉はDレボリューションに対して堂々と苦言を呈した。
「確かにデュラハン・ハートとエンチャント・アクアジェネレーターとではここまで出力に差があるものかと思い知らされましたよ。ですが、今日はデータ収集の挨拶みたいなもの…。式地博士たちに真なる絶望を与える策はガイアヘッド様と共に色々と用意しました…。傀魔怪堕による完全管理世界化など、二日と掛かりません。明日がその記念日となると約束致しましょう。」
「ほう、それは強く出たものだな。できれば、道人たちが混沌巨玉に近寄れもせず、我らの手を煩わせる事がなければ楽なのだがな。」
「ご期待に添えるように致しましょう…。それでは、準備が完了次第、すぐに出陣致しますので私はこれで…。」
烈鴉に対してそう言うとDレボリューションは去ろうとした。
「…待て、Dレボリューション。聞きたい事がある。」
極亞はDレボリューションを呼び止めた。
「はて?何でしょう?」
「ヒューマン・デュラハンとやらについてだ。貴様はそれに詳しいのか?」
「確かに私はヒューマン・デュラハンではありますが、設計に関する事はまだ存じてはおりませんね。」
「…そうか。なら、良い。去るが良い。」
「では、これにて…。」
Dレボリューションは振り向き直し、去って行った。
「…行ったか。」
「行った。問題ない。」
災鐚の確認も取れた極亞は玉座に深く座った。
「極亞様、何故あのような質問を奴に投げ掛けられたので?」
烈鴉が今の極亞の行動について聞いて来た。
「何、ヒューマン・デュラハン…。それは死者の魂にも擬似的に肉体を与えられるかどうかを聞きたかっただけだ。」
「何とっ!?そんな活用法が!?」
「驚愕!?」
烈鴉と災鐚は共に極亞の考えに驚いて見せた。
「それが可能なら、これからは死者すらも我らは利用し、優良人種を保管できる事になる…。恐らくだが、地球の意思はそのために我らに生者すらも攫うように仕向けたのだ。死者たちを使えば、こんなに大勢の生者共もあっという間に保管し終えてしまうだろうて。」
「しかし、極亞様。」
災鐚が言おうとした事は察しがついたため、極亞は災鐚に対して右手を見せて口を閉ざした。
「わかっておる。地球の意思が生者すらも攫って来いと命じられたのは千年も前からの事だ。時代から考えて、そんな大昔からヒューマン・デュラハンの設計思想があったとは思えん…。…ふむ、何なら道人たちと戦う前に話をしてみるのも一興か…。意外と奴らなら我らの知らぬ情報を知っているかもしれん…。」
極亞は玉座から立ち上がり、腕を組んだ。
「…まぁ、良い。地球の意思の真意は掴み兼ねるが…この「現」「冥」融合大戦、それはそれで楽しむとするか…!こんな大規模な戦、なかなかないからな…!」
「全くですな、極亞様!」
「愉快、愉快!」
三大将軍は未来への期待を胸に保管庫を後にし、城へと帰った。




