212章 Dレボリューションの正体
「…さて、皆の者。改めて名乗るとしよう。我は十糸姫。…と言っても、本人ではない。十糸姫本人はとうの昔に亡くなっており、我は本人を真似た式神なのじゃ。」
傀魔怪堕との通信を終えた後、今後の作戦方針のためにまずは姫から今、地上世界で起こっている現象の事を詳しく聞く事になった。
道人たちは腰を落ち着けて姫の話を真剣に聞いている。
「まずは傀魔怪堕が仕出かしてしまった事を話そう…。これは我も最近知った事なんじゃが、傀魔怪堕の城のどこか。そこに封印されてあった『混沌巨玉』という巨大な水晶を奴ら三大将軍はかつての傀魔怪堕の主『魔月京師』との約束を破って解き放ってしまったのじゃ。」
「えっと…わかった。まずは混沌巨玉の事から教えて、姫。」
道人が率先して今、姫から聞かされた情報量が多い話から一部分をピックアップして説明を求めた。
「うむ。混沌巨玉とは大昔から傀魔怪堕にある巨大水晶。いつに作られたものなのかはわからぬ。じゃが、今この世界で起こっている事を見ればわかる通り、一度解放されてしまえば、この世とあの世の境が崩壊し、混ざり合ってしまうという危険な水晶じゃ。」
「おい、道人。それって…。」
深也が道人に意見を求めると、真輝と海音も道人を見た。
「うん、ガイアヘッドが似たような水晶を使ってた…。」
幽霊船と今日の御頭デパートでの戦いでガイアヘッドが持っていた水晶。それで異なる二つの存在を合体させていた。
「それは恐らく、混沌巨玉のコピー品であろうな。道人、覚えておるか?極亞と戦った時の事を。あ奴が使った月光玉と陽光玉も恐らく混沌巨玉を模して作っておったのじゃろう。」
道人がライガとの戦いの末に幽体離脱して行った傀魔怪堕。その時にハーライムと戦った極亞が玉を使って戦っていた事を思い出した。
「…いつ作られたものかわからない…。確か、レイドルクも似たような事を言ってたよ。自分の親はわからないし、気がついたら伝説の首無し竜人として崇められてた、って…。」
潤奈が実験エリアでレイドルクと闘う事になった時の話をしてくれた。
「そうか、混沌巨玉も俺たちがいるこの世界…。モチーフ・ワールドが生まれ出来た際に最初からそういう存在として配置されてあったものかもしれない…って潤奈は言いたいんだよね?」
「…うん。その通りだよ、道人。」
「ん?何じゃ?そのもちーふわーるどとは?」
道人はこの世界がデュラハンのぬいぐるみから創世された世界だという事を姫に簡単に説明してあげた。
ビーストヘッドたちが忠告してくれた、この世界に住む君たちも間違いなく生きている人間に違いはない、という心からの配慮の話ももちろん伝える。
「な、何と…!?この世界にそのような秘密が…!?」
「マジかよっ!?」
「マジ。」
真輝も初耳だったので深也に尋ねていた。
「まぁ、モチーフ・ワールドに関しては追々話すとして…。とにかく、玉は得体の知れない物だから封印以外はやめた方が良さそうだね…。」
「うむ、玉の破壊はやめた方がいいじゃろう…。何が起こるかわからん…。」
「奴らが最後の足掻きでヤケになってぶっ壊す事も考慮せんとならんぞい…。」
大樹の言う事はぞっとするが、その通りなので道人と姫は互いに頷いた。
「よし、次は魔月京師って人の事を教えて、姫。」
「う、うむ…。魔月京師とは傀魔怪堕の主の事らしい。極亞、烈鴉、災鐚を作った者じゃ。道人たちで言うところの閻魔大王に似ておるな。傀魔怪堕は元々は死者を内包する地獄みたいな場所だったのじゃ。」
姫の言う通り、傀魔怪堕の在り方はあの世の地獄、と似通っていてそう言った方がわかりやすいかもしれない。
「なるほど、姫に前に聞いたね。傀魔怪堕はある日、急に生きている者たちも内包し始めた…って。」
「そうじゃ。平安の世ではわからなかったが、傀魔怪堕はある日、主である京師を葬って約束を破り、生者までも内包し始めた訳じゃ。」
「なるほど…。そうなると、極亞たちは何で魔月京師って人を葬ってまで地球の意思…ガイアヘッドに従うようになったんだろう…?」
「それはわからぬな…。」
道人は今得られた情報で何とか考えてみたが、まだ情報が足りず、答えは導けなさそうだった。
「だけどさ、姫。俺と別れた後、よくそこまで傀魔怪堕の事を調べられたね。」
「ふふん♪良いぞ、道人。もっと褒めよ!我の胸中を燻って見せるのじゃ!」
姫は喜び勇んで左腕にしがみついて来た。その瞬間、愛歌、潤奈、ユーラの視線が一気に道人に向けられ、全身に悪寒が走る。
「わわっ!?ひ、姫、後で後で!」
「ほう、後でなら良いのかっ!?憂いのぅっ、道人は!」
「おいおい、姫さん。ちゃんと俺の存在をアピールしてもらわないと拗ねるぜ?」
「おぉっ、すまぬすまぬ!もちろん、きゃぷてんのおかげでここまで情報を調べる事が出来たんじゃ!」
「えぇ〜っ?ライガがぁっ?」
スランは疑いの目をキャプテン・雷牙に向ける。
「以前の俺と同じだと思うなよ、スラン?見違えて腰抜かすぜ、きっと。」
「やっぱライガじゃん!かたるにおちる!」
「…はて?何の事やら?」
「ごまかすのへたかっ!」
キャプテン・雷牙は口笛を吹いてスランから目を逸らす。
「と、とにかくじゃ!このままじゃとこの世界と傀魔怪堕は完全に混ざり合ってしまい、全ての生きとし生ける者は奴らが必要だと思った時にしか目を覚ます事が許されない絶対管理世界となってしまう…!何としてもそれは阻止せねばならぬ!」
「よし、わかった!早速、十糸姫から提供された情報から作戦を立てよう!我らが成すべきは混沌巨玉を再封印する事だ!」
姫から話を聞き終えた司令は椅子から立ち上がった。
「姫、傀魔怪堕の城…というか、傀魔怪堕へはどうやって行けばいいの?みんなで幽体離脱する訳にはいかないし…。」
道人は以前、幽体離脱という形で傀魔怪堕に行っているが、全員で狙ってやれるものではない。
「傀魔怪堕自体には我ときゃぷてんのでぃさいどの力で大人数を連れて行く事ができる。」
「おう、任せな!」
「へぇっ、ライガがねぇ〜っ…?」
張り切るキャプテン・雷牙の隣でスランは疑いの眼差しを向けた。
「じゃが、問題なのは奴らの城を見つける事じゃ。奴らの城は一箇所には留まらず、移動を繰り返す。混沌巨玉を狙う部外者の撃退や防衛を想定した対策装置が備わっている訳じゃ。」
「なるほど、城攻め対策をしてる訳か…。」
「奴らも馬鹿ではない。世界が完全に融合し終えた後でないと城を表には出さぬだろうな。」
「そっか…。うーん…。」
「なぁ、エッジヴァハムートなら問題なくわかると思うぜ?」
真輝の言葉を聞いて道人たちは一斉に真輝を見た。真輝は思わず驚く。
「な、なぁ、エッジヴァハムート?」
真輝のスマホから光の玉が出て来て、エッジヴァハムートが実体化した。
「本当に可能なのか、エッジヴァハムート?」
ジークヴァルがデバイスからエッジヴァハムートに尋ねる。
「もちろんだ、ジークヴァル。俺は一度会った人物や強者の波動を探知する事ができる。三大将軍とやらの波動を掴めれば問題ないだろう。」
それを聞いて道人たちは笑みを浮かべた。
「司令!」
「あぁ、道人君!まずは真輝君とエッジヴァハムートは傀魔怪堕突入組で決まりだな!よし、これより傀魔怪堕突入組とパークの結界を守る組のメンバー分けを考案する!」
「…司令、それならまたマーシャルを…。」
潤奈が立ち上がり、司令を見た。
「そうだな…。博士はパークから離れる訳にはいかないだろうから、マーシャルの科学力とワープ能力を考慮すると突入組に組み込んだ方がいいな…。よし、大神君!」
「了解です、司令!早速、実験エリアにいるマーシャルとの通信準備に取り掛かります!」
大神は急いでキーボードを素早く叩きながら、実験エリアに通信を送った。
「…司令、聞こえておるか?」
博士がスクリーンに映った。道人たちの目には博士がどこか寂しそうに見えた。
「どうした、博士?何か問題でもあったのか?」
「うむ…。君と真輝君が回収して来たダガー・デュラハンのパーツの解析が終わったんじゃが…。ダガー・デュラハンはエンチャント・アクアジェネレーターで動いておる事が判明した…。」
「えっ…?それって…?」
「エンチャント・アクアジェネレーターの開発者はこの世にただ一人…。わしの友、江端千太郎のみ…。そう、Dレボリューションの正体は江端博士かもしれんのじゃ…。」
道人はそれを聞いた瞬間、優しい笑顔の江端博士とDレボリューションが思い浮かんだ。
とても同一人物だとは思えず、すぐには博士の言う事が事実と思える事が出来なかった。




