210章 気になる存在たち
「ふぅっ、とりあえずひと段落だけど…休んでる暇はないよな。」
デパート周辺で同時多発的に起きた竜鳥亀虎=四騎王とビーストヘッドの試練がやっと終わりを告げた。だが、まだ人命救助は終わっていない。
「おーい、道人ぉっ!」
「道人さんたちぃ〜っ!」
「…! 真輝さん、海音さんたち!」
エッジヴァハムートが真輝を、海音が秋子を、スランが信子を抱えて着地した。
「遅ぇぞ、真輝。」
「悪ぃな、深也。これでもダッシュだったんだぜ?ほら、道人の母さん。」
「道人…!」
「…! 母さん!」
秋子は走り、道人を抱きしめた。
「…? 道人、何?その鎧は…?」
「あぁ、そっか…。母さん、ガントレットとか見るの初めてだったっけ…。」
「とにかく、無事で良かったわ…。」
「うん、母さんも…。」
道人はきょろきょろしている信子が目に入った。
「あぁ、愛歌の母さん。愛歌は別の場所にいますから、安心して下さい。」
「そう、良かった…。道人君がそう言うなら、安心ね…。」
「ひ、姫…!?姫なのですか…!?」
海音の声が聞こえたので道人は右を向くと十糸姫と向かい合っていた。
「うむ!久しぶりだな、海音!」
「姫ぇ〜っ…!」
二人は涙を流しながら互いに走り、抱きしめ合った。
「すまぬの、海音…。再会に時間が掛かってしまったの…。」
「掛かり過ぎです!今、何年だと思ってるんですかぁ〜っ…!?あの時、私…姫が死んだなんて嘘だって…捜して…。」
「すまぬ、海音…。すまぬ…。」
姫は右手で優しく海音の頭を撫でてあげていた。道人たちはその様子を笑みを浮かべて眺めていた。
「友を目指して何千里…ってやつか。良い場面じゃねぇか、姫さん…。」
「ん?んん〜?」
スランがキャプテン・雷牙の周りを浮遊して見る。
「あなた、ライガだよねぇっ?ねぇ?」
「違う。」
キャプテン・雷牙はスランから目を逸らすが、スランは雷牙の視線の前に移動する。
「いや、まちがいなくライガだよ。」
「だから、違ぇって。」
「えぇ〜っ…?」
スランは首を傾げ、腕を組んでキャプテン・雷牙を見た。
「みんな、感動の対面のところ水を刺して悪いんじゃが、道人たちの母さんたちを早くパークに送ろうぞい。」
大樹の言う通りだった。まだ安全は確証できていないのについ喜び合ってしまった。道人たちは気を取り直す。
「とりあえず、まだ逃げ遅れた人がいるかもしれないから人命救助を続けよう。グルーナさんとルレンデスはもうヘッドチェンジを使い切っちゃいましたし、母さんたちと一緒にパークに。」
「わかったわ、道とん。」
「それから…。」
道人はその場でチーム分けを考えた。
道人、十糸姫、真輝たちがこのまま人命救助を続ける事に。
深也、大樹、海音、グルーナたちはパークまで秋子たちを護衛する事になった。
「何か急に首無し鎧武者たちが出なくなったのが気になるけど…。みんな、気をつけて!」
「おう、親父たちをパークまで届けて、また何かあったら駆けつけるからな!」
「うん、来てもらうか残ってもらうかは状況次第だけど、よろしく!頼んだよ!」
道人は去っていく深也たちに手を振って一旦別れた。
「姫、また後で!」
「うむ、気をつけるんじゃぞ!」
「道人、あなたも気をつけて!」
「うん、母さんもね!」
深也たちが完全に見えなくなったら、道人と姫は振っていた右手を下ろした。
「さて、道人。我に聞きたい事は山程あるであろうが、それはパークとやらに皆が集まった時に説明するとしよう。」
「うん、そうだね!今は人命救助が最優先だから!」
道人の言葉に姫と真輝は頷いた。
「エッジヴァハムート、逃げ遅れた市民たちの波動ってわかるか?」
「いや、強い波動の持ち主や面識ができた者なら感知できるんだが、見知らぬ一般市民たちとなると難しいな…。だが、やってみるか。」
「そんじゃま、俺がデパート内を駆け回って来てやる。すぐに追いつくから、姫さんたちは先に行ってな。」
「ありがとう、雷牙。」
「だから、人違いだって。」
キャプテン・雷牙はそう言うと獣形態になり、デパート内に入っていった。
「いや、ライガも雷牙も読み方同じじゃん…。」
「キャプテンをつけるのが大事なんじゃ、道人。さて、行くかの。」
ガイアグレート・ジークヴァルとソルワデス、エッジヴァハムートが空を飛んで逃げ遅れた市民たちの捜索に当たってくれた。
ヤジリウスとすぐに戻って来たキャプテン・雷牙が道人たちを護衛する。
しばらく道人たちは駆けたが、逃げ遅れた人たちは見当たらなかった。
今は静まり返った道路を走っている。
「…道人、もうパークに戻った方がいいかもしれねぇぞ。あれを見るんだ。」
真輝が指差した方を見るとテレビ中継で見た赤い柱が次々と生え始めていた。
「その者の言う通りかもしれぬの…。現実世界と傀魔怪堕の融合が強まっておる…。ほら、人魂も…。」
「うおっ!?」
道人たちの周辺に人魂がいくつも飛び始めた。
「ウォッ、見つけたぞぉっ、矢尻臼ぅっ…!」
「許すまじ、荒武者・矢尻臼ぅっ…!」
「えっ!?俺っ!?」
急に人魂に名前を呼ばれてヤジリウスも驚いていた。
「…? この人魂、ヤジリウスの事を知ってるのか…?」
「…まさか…こいつら、俺の生前の…。」
「えっ?」
道人はヤジリウスの言葉が気になったが、人魂がどんどん人型に変わっていく。
「おい、何かめんどくさそうだぜ、道人…!」
「はい、急いでここから離れましょう!」
道人たちは急いでパークに戻る事にした。
深也たちに急いでデバイスで連絡を取り、もうパークにいたままでいいという指示を送った。
幸い、深也たちはまだパークを出ていなかったようだ。
道人たちはガイアグレート・ジークヴァルに抱えられ、空を飛んでパークに向かう。
ヤジリウスは歯車の布に戻ってもらい、ヤジリウスのヘッドパーツは道人の右腕にしがみつく。
「…! 真輝、近くに愛歌と潤奈の波動を感じるぞ!」
「マジかよ。二人共、ひょっとしてまだ人命救助してんのか?よし!道人、俺が迎えに行ってやるぜ!」
「わかりました、頼みます!気をつけて!」
エッジヴァハムートと真輝は離れ、愛歌と潤奈たちを迎えに行く。
「そうだ、俺もデバイスで愛歌と潤奈に連絡を…。」
その時、ガイアグレート・ジークヴァルに抱えられている道人は地上で人影を見掛けた。
「ジークヴァル、ユーラ、待って!人がいる!」
「何だって?」
「一旦降りよう!」
「道人?」
「ごめん、姫!先に行ってて!」
道人とガイアグレート・ジークヴァルは着地し、すぐに周りを確認した。
「…いた!」
杖を両手で持っている白髪の、白い髭を生やした眼鏡のお爺さんが立っていた。
「お爺さん、ここは危ないですから!早く俺と逃げましょう!」
「…全く、遠くから様子を見に来たんじゃが…。ひどい事をする輩がいたものじゃのう…。」
「全くその通りですけど!とにかく、急いで!」
「うむ、ありがとう。心優しき少年よ。」
道人は老人がガイアグレート・ジークヴァルを見て驚かないのが気になったが、今はそんな場合ではない。
ガイアグレート・ジークヴァルは両脇に道人と老人を抱えて飛ぶ。
途中、愛歌たちを連れた真輝たちと合流し、パークを目指した。




