209章Side:卒間 後編 ムエタイVSチェイサー
黄色のドラゴンデュラハンとダガー・デュラハン五機との交戦状態に入った卒間とディアス。
ディアスは攻撃を避けるために抱えた卒間を下ろした後、ビームでできた死神を二体作り出す。
ディアスは新たに出現させたビームの死神二体に鎌を持たせ、共にダガー・デュラハンたちを斬り裂こうとするが、ダガー・デュラハンたちはローラーで動き回りながらバズーカを撃って来る。
卒間も一箇所に留まらず、バリアで爆風を耐えながら動き回っていた。
「なかなかの統率力だが…甘い!」
ディアスはビームコウモリをばら撒き、ダガー・デュラハンたちのローラーによる移動を阻害しに成功し、三機のダガー・デュラハンの上半身と下半身を真っ二つにした。
「さて、部下が三人やられたぞ。どう出る?」
卒間は黄色いドラゴンデュラハンを一番に警戒していた。
黄色いドラゴンデュラハンは部下が地面に沈んでいくのを黙って見ていたが、片足を浮かせて構えを取り始めた。
「…? あの構えはムエタイか?」
「何だ、塔馬?そのムエタイというのは?」
「タイという国で国技に指定されている程、有名な格闘技だ。」
卒間が説明をするのを待たずに黄色いドラゴンデュラハンはディアスに向かって急速に間合いを詰めて来た。
「速い…!?だが!」
ディアスは咄嗟にビームコウモリをばら撒くが、黄色いドラゴンデュラハンは羽を大きく羽ばたかせて浮遊し、前進。
ディアスに膝蹴りを喰らわした。
「ぐっ…!?」
「ディアス!」
黄色いドラゴンデュラハンはその得られた隙を逃さずに縦肘打ち、横肘打ち、ハイキックと連続攻撃し、ディアスに一瞬で三撃喰らわした。
ビーム死神二体が共に鎌を振ってディアスの救援に入るが、黄色いドラゴンデュラハンは後ろに飛んでまた片足を上げて構えを取る。
生き残っている二機のダガー・デュラハンも一旦黄色いドラゴンデュラハンの近くに移動した。
「飛行能力を活用したムエタイか、厄介だな…。」
「だが、これで奴がどんな攻撃手段を用いて来るかはわかった!ヘッドチェンジだ、塔馬!」
二機のダガー・デュラハンが左右に移動した後、黄色いドラゴンデュラハンはまた正面から突撃して来た。
卒間は急いでデバイスを操作し、カードを実体化させた。
黄色いドラゴンデュラハンはディアスに向かうと見せかけて方向転換し、卒間に飛び蹴りを喰らわせようとする。
「塔馬!」
ディアスは背中のウイングユニットを飛ばした。
卒間は制服バリアで黄色いドラゴンデュラハンの蹴りを防いでいた間にジャンプし、ウイングユニットに飛び乗って黄色いドラゴンデュラハンから距離を取った。
「ヘッドチェンジ!バットチェイサー!」
『あなたはバイクで漆黒の中を駆けられますか?』
「一筋の光があるならば!」
『承認。』
ディアスは自分の頭を外し、ゴーグルがついたフルフェイスの頭がつき、ふわふわが首周りについたジャケットを着た。
異空間からコウモリ型のバイクが出現し、バットチェイサーディアスは飛び乗った。
「これが人間たちが乗るというバイクというやつか。ふっ、悪くない!」
バットチェイサーディアスは飛行能力を有するバイクで道路だけでなく、ビルの壁や電柱を縦横無尽に駆け抜けた。
黄色いドラゴンデュラハンは回し蹴りで近くにあった車を蹴り飛ばすが、バットチェイサーディアスには当たらなかった。
「人様の車だぞ、それは!足癖の悪い奴だ!」
黄色いドラゴンデュラハンは部下のダガー・デュラハンを足場代わりにして飛び、回し蹴りの構えを取る。
「挙句に部下を足場にすると来た。許せないな。」
バットチェイサーディアスは黄色いドラゴンデュラハンの繰り出す回し蹴りに対し、バイクの前輪をぶつけて防いだ。
「前輪にはギミックがある!」
回転するタイヤから刃が現れ、黄色いドラゴンデュラハンの右足は切断された。
黄色いドラゴンデュラハンは急降下し、バットチェイサーディアスから距離を取る。
「果たして、地面に帰れるかな?」
バイクが縦の開きになって変形。バットチェイサーディアスの背中に装着され、ウイングユニットとなり、タイヤから複数のレーザーを撃ちながら下降する黄色いドラゴンデュラハンを追いかけた。
ダガー・デュラハン二機がバズーカを構えるが、二体のビーム死神がバズーカを真っ二つにした。
そのまま鎌で袈裟斬りし、二体のダガー・デュラハンは爆破して地面に沈んだ。
「後はお前だけだな!」
バットチェイサーディアスは宙でバイクモードに切り替えて乗り直し、黄色いドラゴンデュラハンをバイクの下敷きにして地面に押し付けた。
「帰れたな、地面に!だが、頭と胴体をもらい受ける!」
バットチェイサーディアスは刃を出現させた前輪を回転させ、黄色いドラゴンデュラハンの頭を無理矢理削り取った。
黄色いドラゴンデュラハンは羽をバタつかせてバットチェイサーディアスに攻撃しようとするが、二体のビーム死神が鎌を振り、羽を刺して地面に押し付けた。
黄色いドラゴンデュラハンは頭と胴体に致命傷を受けたので機能停止し、地面に沈み始める。
「地面に沈む前に!」
バットチェイサーディアスはバイクをバックさせ、飛び降りた。
黄色いドラゴンデュラハンの胸に腕を突っ込み、パーツの一部を抉り取った。
黄色いドラゴンデュラハンは地面へと沈んでいった。
「よくやった、ディアス。そのパーツは博士に見せよう。」
「とても味方とは思えない程のえげつない攻撃ね…。」
「…う、うん。」
「…! 愛歌君、潤奈君!」
卒間はウイングユニットから降り、二人の前に立った。
「すまない、初乗りで怖がらせてしまったか?」
バットチェイサーディアスは愛歌たちの背後にいる人たちを気遣った。
一部の男子生徒はバットチェイサーディアスを見て目を輝かせている。
「その方は確か、愛歌君たちの担任の…。」
「あ、あなたは確か…。」
卒間は一度、道人たちの学校に行った事があるので学校の教師たちとは面識があった。
「校長先生もご無事でしたか…。愛歌君、潤奈君、それじゃあこの方たちをパークへ。」
「はい!」「…はい!」
卒間たちは急いでモノレール乗り場へと戻った。校長と教師と生徒たちは無事にスタッフに保護された。
「良かった…。司令、道人たちは?」
「まだ戻って来ていない。」
「…そうですか。愛歌、逃げ遅れた人がまだ街にいるかも…。」
「だね。よし、また行きますか!」
「あなた!」「お父さん!」
卒間の耳に聞き覚えがある声が聞こえて来た。
振り向くと妻と子供が卒間に向かって走って来た。
「…!? お前たち…!」
「あなたぁっ!」「お父さぁん…!」
卒間は二人を抱きしめた後、しゃがんだ。
「良かった…!よく、無事にここまで…!」
卒間は司令官の立場として個人の感情を優先する訳にはいかなかった。
その事もあって歯痒い思いをしていたため、より一層家族とこうやって無事に再会できたのを嬉しく思えた。
「何かよくわかんなかったけど、女の人が助けてくれたんだ。人魚みたいな人。」
「…! そうか、そうか…!」
海音とスラン、真輝とエッジヴァハムートが真っ先に街に向かったのが功を奏した。
卒間はこの場にはいないが、海音とスラン、真輝とエッジヴァハムートに大きな借りができたと思えた。
「…そうか、あれが塔馬の写真に写っていた家族なのだな…。」
「何だい、ディアス?らしくないじゃないか、しんみりしちゃって。」
ダーバラがバットチェイサーディアスの右肩に左肘を置いて絡んできた。
「いや、私は今まで写真でしかあの家族を見ていなかったのでな…。こう、何というか…。実物を見ると、胸を打つものがあるものなのだな…。私たちがバドスン・アータスの一員として滅ぼして来た惑星にもあのような家族がいたのだろうか…。」
「…そうだねぇ。そりゃっ、いただろうさ…。うん…。」
バットチェイサーディアスとダーバラはどこか寂しそうに卒間たち家族を眺めていた。




