204章Side:真輝 波動無き虎
「待ってろよ、道人と愛歌ちゃんの母さん…!」
真輝はエッジヴァハムートに抱えられながら空を飛んで道路を進んでいた。
真輝はグルーナが運転する車のおかげで道人の家までの道順を記憶していた。
「しかし…すごいな、彼女たち…。」
海音とスランは空を飛んでいるエッジヴァハムートと同速度で駆け、しかも首無し鎧武者をすれ違い様に槍や薙刀で蹴散らしながら前に進んでいる。
キャルベンの兵士たちも必死で追いかけ、市民たちを保護している。
「地面なのにまるで海の中を舞って進んでるみたいだ…。話に聞いた通り、まさに生ける伝説、って感じだな…。」
「おい、真輝。道はこっちで合ってるんだろうな?」
「大丈夫だぜ、エッジヴァハムート。この風景で間違いない。それに…。」
「それに?」
「…俺の波動に狂いはない!」
「ふん、例え優勝者であろうと、お前が波動を語るのは十年…いや、百年早いな!」
エッジヴァハムートも首無し鎧武者を見掛けたら持ち前の大きな翼で上半身と下半身を真っ二つにして進んでいた。
「おっし、見えた!道人と愛歌ちゃんの家だ!だが…やべぇっ!」
既に道人と愛歌の家の周りには首無し鎧武者が徘徊していた。
エッジヴァハムートは着地し、真輝を下ろす。
同時に海音とスランもエッジヴァハムートの隣に立つ。
「俺たちは道人の母さんを!海音ちゃんは愛歌ちゃんの母さんを頼むぜ!」
「わかりました!お気をつけて!」
真輝たちと海音たちは二手に分かれ、首無し鎧武者を吹き飛ばしながら庭まで走る。
「…!? こいつら…!」
真輝は庭から室内を見たが、もう既に首無し鎧武者が徘徊していた。
「やべえっ…!…悪ぃけど…しゃあねぇよな、エッジヴァハムート!」
「あぁ!」
エッジヴァハムートは真輝の意図を理解し、窓ガラスを壊した。
「道人の母さん、無事かっ!?」
「ふん!」
エッジヴァハムートは出会い頭に首無し鎧武者の一人を容易く持ち上げて外に投げた。
もう一体の首無し鎧武者が槍で襲い掛かって来るが、エッジヴァハムートは槍をへし折って波動を当てて壁に叩きつけた。
「…いない?どこだ、道人の母さん!?エッジヴァハムート、道人の母さんの波動は?」
エッジヴァハムートは道人の家に来たので秋子の波動の形を知っているはずなので真輝は尋ねた。
「安心しろ、もう探知した。あそこの部屋じゃないか?」
「よし!」
真輝は急いでエッジヴァハムートが示した部屋の扉を開けて入る。
「ここは…道人の父さんの部屋か?」
部屋にはブーメランやシャトルの模型や資料などが置いてあったので真輝にはそう感じられた。
真輝が泊まりに来た際、この部屋は入った事がなかった。
「…! その声は真輝君なの?」
押し入れが開き、写真立てを左手に持った秋子が姿を見せた。
「よ、良かったぁっ…!無事だったかぁ〜っ…!もし、道人の母さんに何かあったら、道人に顔向けできないぜ…!」
真輝はほっとしてその場でしゃがんだ。秋子はエッジヴァハムートを見て不思議がる。
「ん?あぁ、安心してくれ。こいつは俺の相棒。道人にとってのジークヴァルみたいなもんだよ。」
「真輝、海音とスランの波動が移動したぞ。家から外に出たようだ。」
「おっし、俺らもとっととずらかろう!立てるか、道人の母さん?すぐに道人の所に連れて行ってやるからな。」
真輝は秋子と一緒に立ち上がる際、秋子が握っていた写真が見えた。幼い道人と父母が楽しそうに写っている写真だった。
「…良い写真だ。助かったのはその写真のおかげかもしれない。ご利益のある写真だったんだな…。」
「えぇ、あなた、道人…。」
真輝とエッジヴァハムートは秋子を連れて玄関から外に出た。
家の外に投げられた首無し鎧武者が襲い掛かって来た。
「地面に潜れ!」
エッジヴァハムートは首無し鎧武者に右足で踵落としを喰らわせ、地面に倒した。
玄関前まで走ると海音とスラン、愛歌の母が警戒しながら待っていた。
「良かった、愛歌の母さんも無事だったか…!」
「はい、初対面だったので信用されるのに手間取りました…。」
「ごめんね、愛歌のおかあさん?こわがらせちゃって…。」
「い、いいのよ?ありがとうね。」
海音とスランがどうやって愛歌の母を説得できたのか気になったが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
「よし、道人たちの母さんをパークまで無事に送り届けるのが最優先!まだ逃げ遅れている人たちもいるだろうし、急ごうぜ!」
「はい!」「あいあいさー!」
真輝と秋子はエッジヴァハムートに抱えられて飛び、愛歌の母はスランに抱えられて浮遊した。
来た道を急いで戻り、首無し鎧武者たちを蹴散らしながら道路を駆ける。
「…!? 気をつけろ、何か来るぞ!?」
真輝が後ろを確認すると目にも止まらぬ速さでデュラハンが飛び跳ねて追いかけて来た。虎のような姿をしたデュラハンだった。
「こっちは相手をしてる暇はない!無視だ、無視!」
虎のデュラハンは足裏と背中のブースターを強め、加速。エッジヴァハムートに向かって右爪を伸ばして切り裂こうとして来た。
「おっと、危ない!」
エッジヴァハムートは少し上昇して、虎のデュラハンの爪攻撃を避ける。
「しょうがねぇっ、海音ちゃん!道人の母さんを頼む!俺とエッジヴァハムートがこいつの足止めをする!」
「ま、真輝さん?」
エッジヴァハムートは海音の横に移動。立ち止まった海音は秋子をおんぶした。
「さぁ、早く!大丈夫だ!デュエル・デュラハンの優勝者コンビに刃向かった事を後悔させてやるぜ!」
「わかりました、ご武運を…。しっかり捕まっていて下さいね、道人さんのお母さん!」
海音は右手に巻き貝の槍を持ち、首無し鎧武者たちを退けながら前に進む。
「知ってるか、エッジヴァハムート?人はな、あんまり待たすもんじゃないんだぜ?」
「うむ、エスコート精神というやつだな!心得よう!」
真輝はスマホを操作し、エッジヴァハムートのヘッドを選択する。
「偶然知り得た竜殺しの一刃!友の約束守るため、渾身の斬撃叩き込めぇっ!ジークロードエッジヴァハムート!」
エッジヴァハムートはジークヴァルを意識した白い騎士甲冑の頭をつけ、道人が持つメタリー・ルナブレードに似たブーメランブレードを持った。
「おぉっ、真輝!友情を感じて良いな、この頭!」
ジークロードエッジヴァハムートは嬉しそうに自分の頭を両手で触れる。
「昨晩、道人と一緒にパックを開けた成果だぜぇぃっ!行っけぇっ!」
ジークロードエッジヴァハムートは自前の剣を出現させ、ブーメランブレードとの二刀流で斬り掛かる。
「うん?」「ん…?」
ジークロードエッジヴァハムートと虎のデュラハンは何度か剣と爪をぶつけ合うが、真輝とジークロードエッジヴァハムートは違和感を感じる。
「…おい、真輝。」
「わかってるぜ、エッジヴァハムート。こいつ、仕掛けて来た割には闘気を感じない…。そりゃっ、こいつは意思がなさそうだし、ゲームで言うとNPCみたいなもんだ。だが…。」
「同感だ、真輝。NPCにもNPCなりの目の前の敵の相手をする、という波動があるものだ。だが、こいつにはない…。まるで、私たちを試しているかのようだ…。」
ジークロードエッジヴァハムートは一旦虎のデュラハンから離れ、ブーメランブレードをブーメランにして投げる。
虎のデュラハンは後ろにジャンプして避ける。
「波動!」
ジークロードエッジヴァハムートが左平手を伸ばすと波動の玉が一つ発射され、飛んでいくブーメランの軌道を無理矢理変えて虎のデュラハンの背後に激突させた。
「横一閃!」
ジークロードエッジヴァハムートは胸の竜の顔で自前の剣の刀身に青い炎を点け、逆手に持つ。
自分に向かって飛んで来る虎のデュラハンの上半身と下半身を真っ二つにした。
その際にジークロードエッジヴァハムートは虎のデュラハンのパーツの一部をキャッチした。
虎のデュラハンは重音を立てながら地面に転がる。
「…DRP各機に…データ、転送…。」
虎のデュラハンは地面に沈んでいった。
「真輝、これは…?」
ジークロードエッジヴァハムートは掴んだパーツを真輝に見せた。
「これは、博士に見せたら何かわかるかもしれねぇな…。しかし、何だか嫌な予感…いや、波動がする。煌めきもする。急いで海音ちゃんに追いつくぞ、エッジヴァハムート!」
「あぁ!」
ジークロードエッジヴァハムートは急いで真輝を抱えて空を飛んだ。




