204章Side:深也 亀と海賊と大道芸
「おらおらぁっ!」
「俺たちの通行の邪魔すんじゃねぇっ!」
ランドレイクは装飾銃を撃ちながら蹴りと殴りを、深也は鉄パイプを振り回しながら首無し鎧武者たちを退けながら商店街を進んでいた。
「あれじゃ一体どっちが悪役かわからんぞい…。」
「元気があっていいさぁ。」
大樹とカサエル、キャルベンの兵士たちは市民八人を護衛しながら暴れ走る深也とランドレイクの後を追いかけていた。
カサエルは三度傘を展開して首無し鎧武者が近寄れないようにしていた。
「よっし、商店街を突っ切ったぜ!」
「商店街にはもう人はいなさそうじゃな…。よし、次に行くぞい!兵士たち、この人たちの護衛、任せたぞい。」
「心得ました!さぁ、こちらへ!」
「あ、ありがとう…!君たちも、ありがとう…!」
市民の一人がお礼を言い、他の人々も軽くお辞儀をした。
キャルベンの兵士たちは助け出した市民八人を連れてパークへと走っていった。
深也たちはこうやって近くのキャルベンの兵士たちを掻き集めては市民たちを助け出し、パークへと送っていた。
「しかし、こっちは全然人手が足りんぞい…。」
深也たちは市民全員を助けられている訳ではなく、間に合わずに目の前で地面の中へと沈まされた人たちも見てしまい、既に苦い思いをしていた。
「…爺ちゃんたち、無事にパークに着けたじゃろうか…?」
「出撃前に連絡はできたんだろ?なら、大丈夫さ。」
「…そうじゃな。そう信じるかの!」
「おう!」
深也は大樹を励ました後、商店街を後にしようとする。
「…!?」
その時、深也の目にもうこの世にいないはずの人の姿が見えた。
芽依に似た長い青髪でもう亡くなってからかなり時が経っているが、見間違うはずがなかった。
「…母さん…?」
深也は路地裏に入っていく母・倫子をつい追いかけてしまった。
「し、深也!?どうしたんじゃ!?どこに行くんじゃっ!?そっちは…!?」
「大船長!?」
深也は必死に走り、パイプや室外機が多くある路地裏に辿り着いた。
路地裏には人気がないので首無し鎧武者軍団もいなかった。
「ここは昨日の…?誰かおるぞい…!」
「…親父…?」
深也の父親・北斗が下を向いて座っていた。
「…! 深也、か…?」
北斗が深也の存在に気づいて顔を向けた。
「親父、何で…?」
「…親父さん、芽依ちゃんの事を気にして、ここにまた来たんじゃな?」
深也は大樹の方を振り向いた後、すぐに北斗の方を向き直した。
「深也、今は…。」
「…わかってるよ、大樹。昨日お前と潤奈と約束したからな…。ほら、立てよ。親父。」
深也は約束の事もあったが、今さっき見た倫子の姿を見た事も頭に引っ掛かっていた。
倫子は北斗を助けて欲しいから、自分の前に姿を現したのかもしれない。深也にはそう思えたから、今この場では喧嘩をするのを控えた。
「…大樹、変さぁ。親父さんには監視の護衛がついていたはずさぁ。」
「…! そ、そうじゃ…!昨日の騒動で…!」
カサエルの言う通り、エイプリルが再び北斗を襲って来るかもしれない可能性を考えて護衛を付けていたはずだったが、それらしき人物は見当たらなかった。
「あぁ、護衛ならもうとっくに傀魔怪堕にご招待済みだよ?」
深也の背後から合成音声が聞こえたので急いで振り返るとドローンが飛んでいた。
「君たち、すごい勢いで進んで行くからさ。参ったよ。それでたまたま見つけた彼を釣りに使った訳さ。いやぁっ、娘さん思いのお父さんだねぇ。」
「てめぇっ…!母さんの幻影もてめぇの仕業かっ!?」
「うん?はて?何の事だか?」
合成音声しか聞こえないせいで倫子の幽霊がDレボリューションの仕業なのかどうかは深也にはわからなかった。
「君たちに是非、戦って欲しいデュラハンがいてね。」
指が鳴る音がドローンから聞こえるとドローンの後ろに巨体のデュラハンが着地した。両肩に亀の甲羅のようなでかい盾をつけている。
「彼の名は『DRP タートルダガー』。さて、お手並み拝見。」
そう言うとドローンは飛び去ろうとする。
「野郎!」
ランドレイクが装飾銃でドローンを撃ち落とそうとするが、避けられて飛び去っていった。
「深也!」
「わかってる、こんな奴を相手にしてる暇はねぇっ!人命救助が最優先だ!」
カサエルが北斗を抱え、深也たちは路地裏から走り去ろうとする。
DRP タートルダガーは両肩の甲羅から四枚刃を出し、甲羅を前に移動。猛回転させながら突進して来た。
「何じゃ、あいつ!?殺意高過ぎじゃろぉっ!?」
「危ないさぁっ!」
カサエルは三度傘を展開し、DRP タートルダガーの猛回転する甲羅を防いだ。激しい火花が辺りに散り、金属音が鳴り響く。
「ちっ、無視してぇのによ…!」
「し、深也、お前も大樹君たちと同じ…?」
「話は後だ、親父!」
深也はデバイスを操作し、この状況を打開するヘッドを探す。
「大船長、ビーストヘッドは…。」
「わかってる、あれはここで使うには火力が高過ぎる…!」
ここでヘビーアサルト=ホエールを使えば、室外機などに当たってしまって大惨事になるため、深也はビーストヘッド以外を使おうと思考する。
「よし、これでいく!」
深也はカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。
「ヘッドチェンジ、パイルバンカー!」
『あなたはどんな壁が立ち塞がろうとも己を貫けますか?』
「ったりめぇだ!」
『承認。』
ランドレイクはパイルバンカーランドレイクに姿を変え、右腕の大型パイルバンカーの杭を引っ込めた。
「カサエル!」
「わかってるさぁっ!」
カサエルは北斗を一旦下ろし、右手に傘を出現させ、逆手に持ってDRP タートルダガーの回転する甲羅の間に傘を無理矢理挟んで止めた。
「か、傘は長くは持たないさぁっ!」
カサエルがそう言うと刃を無理矢理止めている傘はもう軋み始めている。
「十分だ、少しの間止めてくれたらなぁっ!」
パイルバンカーランドレイクは左の甲羅を強く何度も蹴り、DRP タートルダガーはバランスを崩して倒れた。
「レイドルクの爺さんの防御力をも貫通したパイルバンカーなら!」
「こんな亀野郎の防御力なんて、ところてんだぜぇっ!」
パイルバンカーランドレイクはDRP タートルダガーの胸部にパイルバンカーを打ち込んだ。
「出し惜しみなしだ!全弾打ち込んでやれ、ランドレイク!」
「おう!」
パイルバンカーランドレイクは何度も杭打ちをし、DRP タートルダガーは胸部を砕かれ、身体に電流を走らせる。
「…DRP各機に…データ、転送…。」
「あん…?おっと…!?」
DRP タートルダガーは地面に沈み始めたのでパイルバンカーランドレイクは急いで離れた。
「大船長、あいつ…何かを転送しやがった…。」
「何かって何ぞい?今の戦闘をか?」
「…嫌な予感がする…。カサエルはヘッドチェンジしなかったのは正解だったかもな…。親父を避難させた後、道人たちと合流するぞ!」
パイルバンカーランドレイクは左肩に北斗を担いだ。
「し、深也、私は…。」
「話は後だって言ったろ?今から走っから、黙ってねぇと舌噛むぞ?芽依を悲しませたくねぇんだったら、大人しくしてな。」
「…あぁ、わかった…。」
「何じゃ、深也?ひょっとして照れてるんか?」
ジト目で見てきた大樹がムカついたので深也は大樹の額に軽くチョップした。
「痛いぞい!」
「手加減した手刀だ、痛くねぇだろ。ほら、行くぞ!」
深也たちは路地裏を出てパークを目指した。




